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ブロックチェーンで音楽著作権を変える(はずだった)Ujo Musicの現在について

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:UjoMusic

イーサリアムのブロックチェーン・ベースで音楽コンテンツを販売するサービスUjo Musicについては何回か書いています(関連過去記事1関連過去記事2)。NFT関連で新たな展開とかはないのかなと久しぶりにアクセスしてみたら、何と、サイト(ujomusic.com)は丸ごとなくなっていて、開発元だったConsensys(イーサリアム創設者ジョセフルービンの会社)のサイトに飛ばされるようになってました。

ConsensysのサイトではUjo Music閉鎖に関する言及は一切なく、いつ閉鎖されたのかすらもわかりません。Archive.orgで調べると2021年5月から7月の間になくなったようです。公式ブログは2019年3月以降更新なし、Facebookページは2019年2月以降更新なし、公式ツイッター・アカウントは2019年10月以来しばらくツイートがなく、2021年5月に「みんな元気?」という感じの意味深なツイートがされてそこで終りです(おそらくこの直後に閉鎖されたものと思われます)。閉鎖されても誰も気に留めず、ニュースにすらならなかったという点でこのサービスの位置づけの想像がつくと思います。

一応、金銭が動くサービスなので、閉鎖するならするで何らかの説明があっても良さそうなものです。楽曲を提供しているアーティストやウォレットに仮想通貨を預けているユーザーもいたと思うのですが、これらの人々には直接連絡が行ったのでしょうか?

Ujo Musicはイーサリアムのスマートコントラクトを使ってInterPlanetary File System上の音楽コンテンツをダウンロード販売するという仕組みでした。アーティストが、レコード会社やストリーミング・サービス企業等の中抜きなしで直接ユーザーにコンテンツを販売できるというのがポイントでした。

しかし、結局のところ、1)レコード会社やストリーミング・サービス企業に中抜きされなくても、イーサリアムのマイニング業者のGAS代で結局手数料はかかる、2)ユーザー視点で見ると「仮想通貨で支払える(使いにくい)音楽ダウンロードサイト」に過ぎない、3)ダウンロードした後はコピー防止できない(DRMはまた別)、4)アーティストが一度アップロードしたコンテンツは削除できない(それがブロックチェーンなのでしょうがありません)、5)他人のコンテンツを勝手にアップロードするヤカラが出てきても対処が困難(”decenterized”で「運営」がいないのでしょうがありません)ということで、ブロックチェーン・ベースで音楽配信サービスを行う上での様々な課題を明らかにし(それを解決することなく)終わってしまったという感があります。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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