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【平昌オリンピック出席を表明】 安倍首相は韓国に負けたのか。

安積明子政治ジャーナリスト
日韓が本当に手をつなげる日は来るのだろうか……(写真:ロイター/アフロ)

安倍首相が平昌オリンピック出席を表明

 安倍晋三首相が2月9日の平昌オリンピック開会式に出席することが明らかになった。時事通信などによると首相は1月24日午前、記者団に対し「2020年に東京五輪がある。同じアジアで開催される平昌五輪の開幕式に行き、選手団を激励したい。同時に(文在寅韓国大統領と)首脳会談を行い、日韓の慰安婦合意について日本の立場をしっかりと伝えていきたい」と話したという。慰安婦合意の履行を文大統領に求めるとともに、北朝鮮情勢も考慮し、南北対話を五輪と切り離すべきだと文大統領に伝えるようだ。しかし日本側の真意は韓国側に通じるだろうか。

反故にされつつある慰安婦合意

 安倍首相は当初、平昌オリンピックへの出席に消極的だった。巧妙に慰安婦合意の事実上破棄を宣言するなど、これまでの韓国のやり方は日韓両国の信頼関係を崩すに等しいものだったためだ。すでに日本は10億円を拠出し、韓国はその一部を費消した。これで後戻りするのは通常の契約関係では非常に困難な上、残りの債務を背負うのは韓国のみ。それを一方的に「なし」にするのは信義に反する。

 それでも韓国は着々と“事実上の撤回”をやり続けている。そのひとつが同合意に基づいて設立された「和解・癒し財団」の年内解散決定だ。8人の理事のうち5人が辞任したため、事実上機能できなくなったというのがその理由だが、ならば新たに任命すればよい。それを怠っているのは、“合意破棄ありき”で動いているためだろう。

出席を決意した背景に……

 このたび安倍首相が平昌オリンピックに出席を決意した背景には、17日の与党幹部会会議も影響していると思われる。自民党の二階俊博幹事長と公明党の井上義久幹事長が安倍首相はオリンピック出席すべきということで一致した。

 もちろん党には党利があり、それを求めるのは当然だ。一方で政府はより大きな国益を守らなければならない義務がある。かつての政権がそれを軽視した結果が今に至っている。慰安婦問題についての1993年の河野談話を思い出せばよい。あれは政府がいくら調査しても証拠が見つからなかったが、「認めてくれれば二度と持ちださない」という韓国側の言い分を信じたために、いまだに日本が背負わされている十字架だ。騙した方が悪いのか、騙された方が悪いのか。倫理はともかく国際社会では、騙された方がわりをくい騙した側の悪が流布されて、それが“歴史の事実”として固定化していく。これが現実であることは明らかだ。

誤りを繰り返すな

 このような過去の誤りは繰り返さないでいただきたい。慰安婦合意についての何の確約もないままの安倍首相の平昌オリンピック出席では、日本外交は韓国に負けたというに等しくなる。その影響は慰安婦問題だけにとどまらないはずだ。将来に残るツケは大きい。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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