報われない“世界一のファン”。サンウルブズが大敗&反則多発で3勝目遠く。
辛抱強く、熱心で、統率されている。
2016年にサンウルブズを率いたNZ出身のマーク・ハメットは、7月の国内最終戦で、サンウルブズファンを「世界一のファン」と称賛した。
その日の狼ファンは12-57の大敗にもかかわらず、最後まで声援を送り続けていた。
指揮官だけではない。2017年度の共同主将を務めた初代メンバーのエドワード・カークら、歴代のスキッパーたちは、事あるごとに規律正しく熱心なサンウルブズファンを「世界一」「最高」と称えてきた。
しかし直近2試合を見る限り、スーパーラグビー(SR)に参戦4年目のサンウルブズ(日本)が、そんな世界一のファンにふさわしいチームだとは思えない。
5月3日(金)の第12節レッズ戦は5枚のカード(レッド1枚、イエロー4枚)で自滅し、地力で上回る相手に6点差(26-32)で敗れた。
サンウルブズは第4節ブルーズ戦(20●28)で、2枚のイエローカードが響いて競り負けている。不要な反則が今季の課題だったはずなのだが。
そして先々週の4月26日(金)、第11節のハイランダーズ(NZ)戦では、本拠地・秩父宮で0―52という完封負け。
ファンに今季ホーム初勝利を届けるどころか、リーグ参入4年目で初となる零封負けを喫したのだった。
■北九州市から上京のラグビーファン・ヒロシさん「残念」
この52失点の完敗を80分間見届けたサンウルブズファンの一人に、福岡・北九州市からやってきたラグビーファン歴15年以上のヒロシさん(30歳)がいた。
「金曜日から連休でした。(サンウルブズの現地観戦は)2016年のフォース戦以来です」(ヒロシさん)
高校でラグビーを始め、現在も仕事のかたわら地元クラブで楕円球に触れるプレイヤー。
熱心なファンであるヒロシさんだが、北九州から往復約4万の交通費をかけて目撃したのは「今季ワースト」(ヒロシさん)の惨敗。さすがにこたえた。
「正直、怒りの方があります。前半は良い感じという展開ならまだしも、始まって5分くらいで(トライを)取られて。やっぱり、残念ですよね」
今後の観戦予定を尋ねると「仕事もあるので…」と消極的だった。
■ラグビーファンの技術を見る目。
マナーを心得た良心的な観戦態度はラグビーファン全体の特長だろう。
ここで筆者のファン評を加えることを許してもらえるなら、ラグビーファンは技術を見る目も確かだ。
2017年6月、この時すでにアンストラクチャー(陣形の乱れた状態)に活路を見出すキック戦術を用いていた日本代表は、熊本でルーマニア(33○21)、静岡・東京でアイルランドと2連戦(22●50/13●35)した。
まだ精度が低かったこともあり、キックを多用するアタック戦術は賛否両論。
ただ試合で連続攻撃から田村優らが効果的なキックを披露すると、スタジアムの四方から驚くほど大きな拍手が起こるのだった。
それは日本代表のキック戦術を理解した上で行われる、礼儀作法に近い整然とした拍手だった。
3試合を現地取材した本稿筆者は少なくともそう確信すると同時に、ファンの技術を見る目に驚かされた。
ジャンルは違うが、“400戦無敗”と謳われた伝説の格闘家ヒクソン・グレイシーが、日本の格闘技ファンをこう評したことがある。
「日本人は本当に細かいところまで見ている。細かいところに気づいて評価してくれることに関しては、本当に素晴らしい観客、文化だと思っています」
■小雨のなか80分間を見届けたファン。
日本のファンは良心的で質が高い。ではチームはどうか。
ナイトゲームだった4月26日のハイランダーズ戦は、小雨が降りしきり、身震いのする寒さだった。
しかしファンの忍耐は報われず、惨敗劇が展開された。
称賛されるべきは、屋根付きのスタジアム(フォーサイスバー・スタジアム/NZダニーデン)を本拠地としながら、雨のアウェーゲームでハンドリングミスも少なく52得点を奪い、守ってはプロらしく全力を尽くし、見事な完封劇を披露したハイランダーズだったろう。
いま、サンウルブズのファンに残されている希望とは、一体なにか。
サンウルブズは2020年シーズン限りでのリーグ除外が決定している。「いつかはSRで優勝争いを」と願うこともできないのだ。
いずれ途絶える道を進んでいる。せめて一戦必勝の覇気を見せ、全国のファンの期待に応えたい。