韓国人の6割が「法は力のある人のためにある」と回答
韓国の大統領選挙は与党「共に民主党」候補の李在明(イ・ジェミョン)前京畿道知事と保守野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソッキョル)前検察総長の2強対決の様相となっているが、二人の共通点は法学部を出ていること、弁護士の経験があること、国会議員を経験していないことだ。
中央大学法学部を卒業した李候補は人口100万人の城南市の市長から2018年に首都・ソウルよりも人口の多い京畿道の知事となったが、2010年に城南市長になるまでは弁護士、それも人権弁護士として活躍していた。
一方、ソウル大学法学部出の尹候補は検察官の道を歩み、ソウル中央地検特殊1部長、ウル中央地検長を経て2019年に検察総長となったが、尹候補もまた2002年に一時検事を辞めて弁護士稼業に転じたことがあった。
経歴が物語っているように二人とも本来ならば遵法精神の持ち主であることは言うまでもない。法の順守、法の正義、法の公平・平等については他の誰よりも厳格な立場にいなければならない。尹候補に至っては大統領候補になるまでには検察のトップ、即ち法の番人の立場にあった。
どちらが当選しても法曹・司法出身大統領の誕生ということになるが、では、韓国の国民は一般的に法をどのように受け止めているのであろうか?最近、興味深い世論調査があった。
国民の法意識に関する調査は法制研究院が1991年から実施しているが、同研究院が今月初旬に発表した「2021年国民法意識調査研究報告書」によると、「法律は国民のため、弱者を救うためにあるべき」と韓国の国民が受け止めていると思いきや、実際は異なり「法は力のある人のためにある」と捉えていた。国民の10人のうち6人までが「法は弱者ではなく、強者のためにある」とみていた。
「法が公正に執行されている」との回答は53.8%、「法は国民の利益を代弁している」は51.6%と、半分に過ぎなかった。
この質問との関連で「法治主義が具現されない理由は何か」との設問もあったが、最も多かったのは「社会の指導層の法順守の不十分」(32.8%)で、続いて「不適切な法執行」(27.9%)、「権威主義」(20.6%)、「国民の法意識の不足」(18.4%)だった。
社会的地位が高い層が法律を守らないのはそのとおりで、例えば、「ナッツ事件」にみられる「大韓航空」の一族を始め財界人の多くに「前科記録」がある。財閥の総帥らが違反した法律の種類は様々で、贈賄罪から都市計画法違反など全部で19種類もある。
また、現在収監されている李明博(イ・ミョンパク)元大統領、朴槿恵(パク・クネ)前大統領を例に取るまでもなく歴代大統領はほぼ全員収賄など前科があり、現在、大統領選に出馬している李在明候補の場合も公選法違反や飲酒運転など前科4犯の持ち主である。
韓国人の「法」のイメージについては「秩序・安全」が54%と最も多かったが、次に挙げていたのが「権威・権力」(48.3%)であった。
韓流ドラマや映画では裁判官や検察官、警察官は常に権力、権威の象徴として描かれることが多いが、決して作り話でないことがこの調査からも窺い知ることができる。ちなみに「法イコール正義」との回答は相対的に低かった。