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【皮膚と脳の意外な関係】マラセチア菌がアルツハイマーのカギを握る?

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【マラセチア菌とは?皮膚との関わりを知ろう】

みなさんは、マラセチア菌をご存知でしょうか。マラセチア菌は、人間の皮膚に常在する真菌(カビの一種)です。健康な皮膚では、マラセチア菌は他の微生物とバランスを保ちながら存在しています。しかし、何らかの原因でこのバランスが崩れると、マラセチア菌が異常に増殖し、皮膚トラブルを引き起こすことがあります。

代表的な皮膚疾患に、脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎、マラセチア毛包炎などがあります。これらの疾患では、マラセチア菌が炎症を引き起こし、かゆみや赤み、フケの増加などの症状を引き起こします。マラセチア菌は皮膚だけでなく、腸内にも存在することが分かっています。腸内環境の乱れが、皮膚疾患の悪化につながる可能性も指摘されており、皮膚と腸の健康は密接に関係していると言えるでしょう。

【マラセチア菌と脳疾患の関係に迫る】

近年、マラセチア菌と脳疾患の関連性が注目されています。アルツハイマー病やパーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患の患者の脳組織から、マラセチア菌のDNAが検出されたのです。マラセチア菌が脳に侵入するメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、血液脳関門を通過し、脳内で炎症を引き起こしている可能性が示唆されています。

また、マラセチア菌は、腸内環境にも影響を与えることが分かっています。腸内のマラセチア菌が増加すると、炎症性サイトカインの産生が促進され、腸管バリア機能が低下します。これにより、病原体や有害物質が体内に侵入しやすくなり、脳の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。日本でも、高齢化に伴って神経変性疾患の患者数が増加しており、マラセチア菌との関連性を解明することは必要でしょう。

【皮膚と脳の健康を守るために】

マラセチア菌は、皮膚だけでなく脳の健康にも影響を与える可能性があります。皮膚と脳の健康を守るためには、マラセチア菌を適切にコントロールすることが重要です。具体的には、皮膚の清潔を保ち、過剰な皮脂を取り除くことが有効です。また、腸内環境を整えることも大切です。食生活の改善や、プロバイオティクスの摂取などが推奨されています。

マラセチア菌と脳疾患の関連性については、まだ研究の途上段階ですが、今後の更なる解明が期待されています。皮膚と脳の健康は、私たちの生活の質に直結する重要なテーマです。マラセチア菌をはじめとする皮膚常在菌と上手に付き合う方法を見つけていく必要があります。

参考文献:

Mol Neurobiol. 2024 Jun 14. doi: 10.1007/s12035-024-04270-w.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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