『持続化給付金』不正防止のカギはブロックチェーン技術とマイナンバー活用
KNNポール神田です。
『持続化給付金』不正受給の手口や組織的な犯罪が明るみになってきた…。
これには、『電子申請』や『SNS』、『グループチャット』、『暗号資産』、『海外逃亡』、『確定申告修正』などのIT技術の要因も深く関わってきている。
かつて若者のネットワーク詐欺といえば、マルチ商法などのネットワークビジネスが横行していた。しかし、コロナ禍の2年間、対面による活動が難しくなったことにより、新たなネットワーク詐欺として、『持続化給付金』の不正受給というスキームが登場した。
■SNSに暗号資産(仮想通貨)LINEグループ活用
今回のスキームで活用されたのが『個人事業主』だ。それもSNSで募集がかけられ、LINEグループで指南されたという。
むしろ、住所や氏名、写真付きIDやマインバーによる本人確認があれば、代理人であっても開業届けを簡単に提出できてしまう。
また、LINEグループで大量に登録したり、セミナー形式での応募となると、集団心理も働き、詐欺行為という意識が希薄となったことだろう。また、これは、詐欺ではないという詐欺の常套句が繰り返されたはずだ。
マイナンバーカードがあれど、現在だと本人確認のやりやすいカードとしてしか機能しない。マイナンバーカードを通じて、振り込み先を限定することもできず。個人間送金も不可能な単なる国民IDでしかない。
■『確定申告』という抜け道スキームの悪用!
まず、サラリーマンで、雑所得などが年間20万円以下であれば、『確定申告』はまったく関わりのない作業であるが、個人事業主などにとっては還付金もふくめて重要な毎年2~3月の申告業務である。コロナ禍で延長も認められている。
『確定申告』の一番の大きな抜け道は過去にさかのぼって修正申告ができるところだだ。コロナの影響で売上が減少したことを後から、売上があったことを申告すると、延滞税がかかる場合でも最大14.6%の延滞税となる。すると14.6%の納税してでも給付金が多い場合は、過去にのぼって修正できてしまうのだ。
また、『確定申告』するために、『個人事業主』の登録は、『開業届け』や『青色申告申請書』を提出するが、これも事後受付が可能である。さらに、年齢も18歳以下でも申請可能なので、年間所得が38万円以下(1ヶ月3.1万円)ならば所得税も住民税も扶養家族のままであり、生まれた直後の赤ちゃんですら開業届けで開業できてしまうところがザル法でもある。おこずかい分を毎月子供に家事として外注し、青色申告特別控除の還付も合法的に可能になってしまうからだ。
また『開業届け』の広告にもよくあるようにたった5分で会計アプリサービス経由で、税務署に一切、行かずに、自宅からでも開業できてしまうスキームなので、それらが未成年のニセ開業や、後から売上申告をしてでも、持続化給付金を可能にしてしまっている。
書類にサインや押印しないと罪の意識も軽くなってしまうデメリットも存在している。
デジタルにDXの進化が悪用しようとすればいくらでもできてしまう…。逆にデジタルのメリットを活かしきれていない政策そのものが、政府側の怠慢と無策として筆者には見えて仕方がない…。
■税務署は徴税機能はあれど、税を分配する機能を保持していない
このような『給付金』のスキームは、市町村の各自治体や中小企業庁が担当するケースが多いが、税務署の掌握している売上や納税データと個人情報がまったくリンクされていないのが現状である。
政府機関、市町村のシームレスなデジタル活用がなされていないのだ。
また、常に市町村や税務署は徴税がメインで、広く公平に正しく分配するという機能を持ちあわせてはいない。銀行口座すら掌握していない時点で、片道分しか機能していないというべきだ。
また、決められた申請ベースで不備がなければ、認めざるをえないという性格を持っている。
…ましてやこのコロナ禍の中での緊急対策ともなればなるほど、緊急対応が難しいので、巨額の不正に対して対応が後手となる。
…であれば、何をすべきか? まずは正しく正確なエビデンスがあるユーザーから率先して給付をおこなえるうようにすべきではないだろうか?
■不正受給金額はデジタル庁予算の1/365日分
このような不正受給で公表されている金額は12億2,557万円(中小企業庁2022年5月26日時点)
この不正を徹底的に追求するのは、とても重要ではある。しかし、縦割り行政ではなく、デジタル化による水平化をもっと進めておけば、今回だけではなく今後の、そして未来の不正防止に役立つのではなかっただろうか?
デジタル庁の令和4年度2022年度年間予算は、4,720億円である。※1日あたり、12.9億円だ。
今回の不正受給金額はデジタル庁の1日分の予算である。
マイナポイント事業の年間予算は1兆8,134億円だ。
※1日あたり、49.6億円だ。
不正受給金額12.2億円の4年間に値する予算だ。
今回の現在までの不正受給金額は、デジタル庁やマイナンバー普及促進のたった1日/365日分や1日/4年間でしかないのだ。
■すべての決め手は、『マイナンバー』と『ブロックチェーン技術』
まずは、ここまで普及してきた『マイナンバー』に報奨金をつけるのは即刻にやめるべきであろう。普及率100%を目指すのはわかるが、後からマイナンバーを登録したほうが得をするというスキームに転じてしまっている。
初期にマイナンバー登録に協力した人には何のメリットもない。
また、マイナンバーで税の一本化、銀行、保険証、運転免許、パスポート、勤務先の連携が確認できる人から優先的に給付をすすめるべきなのだ。
現在のマイナンバー連携で、保険証のように割高になる仕組みは是正すべきだ。
そして、『マイナンバーカード』を、政府や総務省、デジタル庁の中央管理ではなく、『ブロックチェーン化』し、国もそのサービスを利用してベネフィットを提供する方向に高めていくべきだろう。
中国のような中央がすべてを管理するのではなく、マイナンバー保持者が自ら進んで情報を開示すれば申請がスムーズにおこなわれるような方針に変えるべきではないだろうか?
パスポートもマイナンバーカード連携必須にすることで、国外逃亡の際も日本のマインバーカードに『J』のJAPANの国番号をいれるだけで、国外でのパスポートにJの符号のあるマイナンバー保持者が通過したことをトラッキングできるようになる。
筆者はマイナンバーの自分の履歴を見ている人をいつでも申請して確かめているが誰が自分のマイナンバーの履歴を参照しているのかがよくわかる。
筆者のマイナンバーには、頻繁に『年金事務所』がアクセスしていることがわかる。
これはエストニアのe-Residencyに搭載されている機能だったが、マイナンバーがこの機能を搭載したことによって、透明性が担保されている。マイナンバーは、情報をすべて掌握されるものではなく、自分のマイナンバーに興味を持つ組織を掌握することができるのだ。
『プライバシー』とは、情報を秘密にできる権利ではなく、自分の情報を自分で管理できる権利のことだ。そういう意味では、マイナンバーは、非常にプライバシーが守られている設計といえる。
ただ、『マイナンバーカード』の運用が不透明に見えて仕方がない。メリットとデメリットを明確にすべきだ。現在はマイナンバーにすることによってデメリットが多い。
いつの時代にも、悪意をもったユーザーは必ず存在するが、すべてのマイナンバーで運転免許証の『ゴールド免許』であれば、給付率があがるなどの手間がかからない分をベネフィットとして還元率をあげる発想にかえるべきだろう。