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若手に「使えない!」と一度でも口にしたことがあるミドルシニアの方へ。あなたこそ、活躍していますか?

佐藤裕はたらクリエイティブディレクター
人生100年時代、ミドルシニアに向けての法政大学 田中 研之輔 教授からの提言。(写真:アフロ)

人生100年時代と言われバブル崩壊から約30年が経過した今、年功序列の給与形態、終身雇用制度など、日本型雇用システムが崩壊し始めている。これから社会に出る新卒者はもちろんだが、“逃げ切り世代”と言われる50代にも絶対的な安定保証されなくなる時代がやってくる。

私たちの働き方はどう変わっていくのか。前回に続き、法政大学キャリアデザイン学部の田中研之輔教授をゲストに迎えキャリアデザインの観点から話を伺った。

法政大学キャリアデザイン学部 田中 研之輔教授(撮影:干田 哲平)
法政大学キャリアデザイン学部 田中 研之輔教授(撮影:干田 哲平)

組織にしがみつくのか、自らキャリアを形成するのか。あなたは、どちら?

佐藤裕:ひと括りに「キャリアデザイン」と言っても、その認識や取り組みは、世代間で大きく異なっていますね。この世代間での食い違いが、現代における“働き方”にまつわる問題を引き起こしている1つの要因だと感じています。

田中:きっと、学生の頃から「キャリアデザイン」「キャリア教育」といった言葉を耳にしてきたか、またそうでないかで、大きな違いが出てるんですよね。

佐藤裕:確かに、ミドルシニアより若手世代の方が確実に、「キャリアデザイン」を重要だと捉え、積極的に取り組んでいますね。

田中:歴史的に見ても、〈キャリア教育に関する総合的調査研究者会議〉が文部科学省に設置されたのが、2002年のこと。現在、40歳以上のビジネスパーソンが、キャリアを考える機会は、今の若手世代と比較して圧倒的に少なかったため、ミドルシニア層キャリア意識はこれまでは低かったのです。

佐藤裕:ある企業の方と話していて、バブル入社組の中には、「個人のことを考えてキャリアを築くことが会社にとってマイナスを生む」という古典的な考えが抜け切っていない人もいると聞き、とても驚きました。

田中裕:そんな考えを持つ人が、人事や採用担当、企業や組織の上層部にいる企業も少なくないので、問題は深刻です。

佐藤裕:「会社を繁栄させるために個人のパフォーマンスを最大限発揮する」ために行うのが「キャリアデザイン」という本来の意義をきちんと理解して、次の世代を担う人材の育成に取り組めるかが、未来の企業経営を左右するというのに…。

法政大学 キャリアデザイン学部 田中 研之輔 教授 ×はたらクリエイティブディレクター 佐藤 裕(写真撮影:干田 哲平)
法政大学 キャリアデザイン学部 田中 研之輔 教授 ×はたらクリエイティブディレクター 佐藤 裕(写真撮影:干田 哲平)

社員のキャリア開発支援が、企業の生き残りの鍵を握る

田中:この先、新時代の「キャリアデザイン」を取り入れられなかった企業はどうなっていくんでしょうね。

佐藤裕:おそらく、うまく取り入れることができなった企業が、淘汰されていくのでしょうね。いわゆる大手ブランド企業も例外ではありません。実態としても、「キャリアデザイン」に取り組んだ気になっているだけで、実際の成果を得られていない企業がたくさんある。それも、世代間の意識のズレが影響していると感じています。

田中:私も同感です。企業が推進する「キャリアデザイン」が、学生や若手社員が考える「キャリアデザイン2.0」にアップデートされていないのが、その要因なんじゃないかな。「キャリアデザイン=自己分析(自分探し)」という旧来の考えは、もう捨てましょう。「キャリアデザイン」は、時代や働き方、個人の価値観によっても変化するものと捉える柔軟性こそ、「キャリアデザイン2.0」を理解する上で必要なことです。

佐藤裕:本当に、この世代間での「キャリアデザイン」に対する意識に大きなズレがあるという問題は根深いですね。この問題を解決するための道としては、世代交代を待つか、若手世代がミドルシニア世代の変化を促すか、の二択でしょう。

田中:これが解消されないと、日本経済の未来を左右する次世代育成にもメスが入らないでしょ!? 大学教授と複数企業の顧問を兼任する立場から感じるのは、今の大学生はかなり感度が高い。ただ、実地としてのトレーニングを積まなければビジネスパーソンとして輝けない。しかし、大学はビジネストレーニングを積む練習機関ではありません。だから、決定的に、トレーニング不足なんです。こうした問題を打開する1つのアイデアとしては、選考過程も含めて育成プログラムと捉えて、採用と新人研修のあり方を“次世代育成”と位置付けることを企業側に求めていきたいですね。もし、「今の若手世代は使えない」と思うミドルシニア世代がいるなら、その考えを持つ自分こそが、企業において使えない人材になってないか、と自問する必要がありますね。 

佐藤裕:その通りですね。自分の会社にフィットする人材だけを探す従来の選考方法では、有能な原石を取り逃し、この先、生き残れない、と危機感を持つべきです。若手世代とミドルシニア世代が持つ「キャリアデザイン」に対する意識のズレを埋めて、新たな時代の働き方を提示することが企業に求められていますね。

田中:少し、裕さんに付け加えると、組織(企業)と個人の円滑な関係により、生産性を高めるのも「キャリアデザイン」の目的です。裏を返せば、個人と組織がより良い関係を築くための環境整備が、企業側ができるキャリアデザインへの取り組みとも言えます。

佐藤裕:はたらクリエイティブディレクター (写真撮影:干田 哲平)
佐藤裕:はたらクリエイティブディレクター (写真撮影:干田 哲平)

生産性のブレーキにならないために、ミドルシニアの意識・行動変革が必要

佐藤裕:ビジネスパーソンとして、これから長い時間を費やす若手世代はもちろんですが、定年まで残り僅かなミドルシニア世代は「キャリアデザイン2.0」とどのように向き合えばいいのでしょうか?

田中:変化の歯止めにならないようにして欲しいですね。ひとつの組織(企業)でキャリアを形成した場合、その弊害として、50歳を過ぎると個人のパフォーマンスが落ちてくる傾向があるといいます。その多くのケースが、体力や能力の衰え以上に、目の前の仕事だけをこなせばいいという意識になり、モチベーションが低下したことが原因となっている。実際に、「働かない50代」が会社の大きな負担になっているという例もあります。ただ、 自ら主体的にキャリア形成をするための「キャリアデザイン」に取り組む意欲があれば、年齢問わず、常に自らをバージョンアップして社会価値を高め、結果として会社にも貢献できると思います。

佐藤裕:定年後、複数の顧問を務める方はたくさんいますし、社会で必要とされる人材になれるかは、働く意欲の差が大きいですね。終身雇用の恩恵を最後に受ける“逃げ切り世代”と言われる50代ですが、先の約35年〜40年の安心は、決して、保証されているとは言い切れません。人生100年時代と言われる今、意識を改革しなければ、思い描く安定した人生を歩んでいくことは、困難な道のりとなるかもしれません。

田中:このままでは、今のミドルシニア世代がこの先、企業の成長や生産性向上のブレーキになるのではないでしょうか?ミドル世代の一人として、私自身も生産性を高めていけるよう取り組んでいきます。

社会で働く大人の責任は「はたらくを楽しむこと」

日本の大学生の多くは就活を敬遠します。その要因の大半が「働く大人達の元気がない/希望を持てる社会ではない」という声です。

変化の激しい社会の中でまずは働く大人たちが組織にぶら下がって逃げ切ることを考えるのではなく、自分なりのはたらく意義や大義の中で、日々工夫をして仕事に向き合うことなのではないでしょうか。

一方で、若者は「ホントに今の社会は希望が持てないのか?」「誰かの解釈で社会をイメージしていないか?」まずはファクトを自分で手にするために社会、ビジネスに出来る限り早くから触れてみて欲しい。そこで「はたらくを楽しめている大人たち」の価値観やはたらく意義、夢や目標、人生観に出会うことで視野は拡がりこれまで持っていた社会のネガティブなイメージは変わるはずです。

はたらくを楽しもう。

法政大学 田中 研之輔 教授とのスペシャル対談(写真撮影:干田 哲平)
法政大学 田中 研之輔 教授とのスペシャル対談(写真撮影:干田 哲平)

田中 研之輔

法政大学キャリアデザイン学部教授

専門:キャリア論 一橋大学大学院社会学研究科博士課程を経て、メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員をつとめる。博士(社会学)。大学と企業をつなぐ連携プロジェクトを数多く手がける。著書25冊。『辞める研修 辞めない研修』、『先生は教えてくれない就活のトリセツ』、『覚醒せよ、わが身体。』、『丼家の経営』等。企業の取締役、社外顧問を17社歴任。(連載/特集)日経ビジネス・日経STYLE U22・日経doors・日本の人事部・プレジデントオンライン・NewsPicks 他多数。新刊『プロティアン:70歳まで第一線働き続ける最強のキャリア資本術』、最新刊『ビジトレ:今日から始めるミドルシニアのキャリア開発』

佐藤裕

はたらクリエイティブディレクター

若者の“はたらく”に対するワクワクや期待を創造する活動を行う。これまで15万人以上の学生と接点を持ち、年間200本の講演・講義を実施。現在活動はアジア各国での外国人学生の日本就職支援にまで広がり、文部科学省の留学支援プログラム「CAMPUS Asia Program」の外部評価委員に選出され、グローバルでも多くの活動を行っている。2019年2月にはハーバード大学の特別講師を務めた経験を持つ。また、パーソルホールディングス株式会社ではグループ新卒採用統括責任者、パーソルキャリア株式会社 エバンジェリスト、株式会社ベネッセi-キャリア特任研究員、株式会社パーソル総合研究所客員研究員、関西学院大学フェロー、デジタルハリウッド大学の非常勤講としての肩書きも持つ。新刊『新しい就活

はたらクリエイティブディレクター

パーソルホールディングス株式会社グループ新卒採用統括責任者、キャリア教育支援プロジェクト責任者、株式会社ベネッセi-キャリア特任研究員、株式会社パーソル総合研究所客員研究員、関西学院大学フェロー、名城大学「Bridge」スーパーバイザー等を歴任。現在は株式会社SVOLTA代表取締役社長、成城大学外部評価委員、iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授、デジタルハリウッド大学非常勤講師、国際教育プログラムCAMPUS Asia Program外部評価委員などを務める。※2019年にはハーバード大学にて特別講義を実施している。新刊「新しい就活」(河出書房新社)

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