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山崎賢人主演『グッド・ドクター』、韓国の評論家も賞賛。その違いと共通点とは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
『グッド・ドクター』公式サイトより

山崎賢人が主演を務めるドラマ『グッド・ドクター』(フジテレビ系)が、好調だ。

8月2日に放送された第4話は、平均視聴率10.6%を記録。初回11.5%、第2話10.6%、第3話11.6%と4話連続2ケタを維持したのは、フジテレビの同枠において約4年ぶりの快挙だと報じられている。

数多いリメイク作品の中でも異例

視聴率もさることながら、視聴者の感想も印象的だ。山崎賢人や上野樹里の演技力に対する絶賛はもちろんのこと、ストーリーについても「毎回泣けるし感動する」「多くの人に見てほしい」といった反響が寄せられているという。

このドラマが韓国ドラマ『グッド・ドクター』(KBS)のリメイク作で、韓国からも関心が寄せられていることは以前紹介した通りだが、韓国メディアも日本版『グッド・ドクター』のことが気になるようで、各話の視聴率および公式SNSで紹介される撮影現場の様子なども詳しく伝えている。

これまでも多くの韓国ドラマが日本でリメイクされてきたが、こうした報道が増えることは珍しい。

(参考記事:【最新版】韓国でリメイクされた日本のドラマを一挙紹介。えっ、あのドラマまで!?)

日本版『グッド・ドクター』の放送前から「キャストは日本版のほうが良い」など、好意的な反応を示した韓国のドラマ・ファンも、今のところ高く評価しているようだ。

「湊の純粋さがいい」「上野樹里の演技もいい」

例えばSNSなどでは、「山崎賢人演じる湊は純粋な少年らしさが魅力的で、原作より気に入っている」といったコメントが見受けられる。

「山崎賢人の演技もいいが、特に上野樹里の演技が素晴らしい。原作や米国版よりもキャラクターを際立たせている」というコメントもあった。韓国では以前にも日本の女優たちがネットで話題になったが、上野樹里もその仲間入りを果たした格好だ。

(参考記事:「美しすぎる!」とネットで話題に。韓国で活躍する日本芸能界の美女たち)

また、とあるブログには、「アメリカ版よりも原作の情緒と意図に充実しつつ、日本ドラマ特有の雰囲気が感じられて良い」との意見もあった。

『グッド・ドクター』は日本に先駆けてアメリカでもリメイクされており、アメリカ版『The Good Doctor』は全米視聴ランキングで毎週トップ10入りを記録している。

アメリカ版の場合、韓国オリジナル版よりもスケールが大きく、さまざまな要素がアップグレードされたとの評価を受けるが、日本版は設定やストーリー展開において韓国版との共通点が多く見られるため、韓国の視聴者もより親近感を抱きやすいのかもしれない。

韓国ファンも親近感を抱く要素

例えば韓国版も日本版も、ともに小児外科を舞台としたところや、主人公の好物が“おにぎり”であるところもそうだ(ただし、原作はビビンバ味限定)。

ちなみにアメリカ版は、総合病院の一般外科が舞台で、主人公の好物はシロップをたっぷりかけたパンケーキ。こういう細かい部分で日韓の文化がそれほど違わないことを改めて気づかされる。

ジャンルは異なるが、韓国で松重豊主演の『孤独のグルメ』が爆発的人気を呼んだのも、そうした文化面での類似性があるからだろう。

その一方で日本版『グッド・ドクター』がオリジナルの世界観を生かしつつ、独自の選択を図っていることが、韓国ドラマ・ファンたちの間で評価されている。

TV評論家のキム・ソニョン氏も、『ハンギョレ』に掲載された寄稿文の中で『グッド・ドクター』についてこう論じている。

「(日本版『グッド・ドクター』は)脚色も印象的だ。全20話の原作を10話に書き直すことで、主要人物の個人史や恋愛関係などは大胆に縮小し、原作の核となるテーマに集中している」

韓国もリメイク版を高く評価する理由

同じく韓国ドラマのリメイクだった『シグナル 長期未解決事件捜査班』もオリジナルへのリスペクトを感じさせたが、『グッド・ドクター』はオリジナルを生かしつつ、効果的な“選択と集中”で見事なローカライズに成功したというわけだ。

韓国でも5月に日本ドラマがリメイクされたが、それも肝となったのは“選択と集中”を意識したローカライズだった。

(参考記事:小栗旬と石原さとみ主演ドラマが韓国でリメイク放映。その企画意図にあるものとは?)

また、キム・ソニョン氏は韓国版と日本版の『グッド・ドクター』が視聴者から支持されている理由をこう述べている。

「登場人物たちがそれぞれ医者の役割について熾烈に悩む中、“患者を助けたい”という湊の単純明快な言葉が人々を感化させる」

オリジナルであれリメイクであれ、『グッド・ドクター』という作品が大きな支持を得られている理由は、「良い医者とは何か」という根本的な問いを描こうとしているからではないだろうか。

この問いに対する考えを巡らせながら、「すべての子どもたちを大人にしてあげたい」というキャラクターたちの奮闘と成長を、今日もしっかりと見守りたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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