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このバインダーは、やばいんだー!クオバディスジャパン発表会で見つけた2つのシステム手帳がやばかった件

舘神龍彦デジアナリスト・手帳評論家・歌手

 「ヤバい!」「いやこれヤバいですねぇ、Mさん」

 毎年、5月の終わりから6月ぐらいまでにかけて、手帳・文具のメーカーは来年のダイアリーを発表。プレス向けに発表会が行われます。

 さる5月25日にうかがったのは、東急田園都市線駒澤大学駅にあるクオバディスジャパンのオフィス。

 手帳で有名な「クオバディス」ブランドを始め、メモ帳のブランドとして知られる「RHODIA」、インクと万年筆のブランド「エルバン」「ジャック・エルバン」、トラのキャラクターがかわいい「パピエルティグレ」など、フランス発を中心とする各種文具ブランドが並ぶ発表会におじゃましました。

 冒頭の台詞は、この展示会で見つけたバインダーを見たときに私が発したものです。

 感想がほとんどヤバいという単語に終始していて、そりゃ仮にも手帳評論家を名乗る身としてはどうなんだ。そんな自問自答を今ならばするところです。

 というわけで、手帳評論家・舘神龍彦です。 

 今回は、このクオバディス・ジャパンの展示会で見つけた2つの“やばい”バインダーを紹介します。

ミニョンのクロコ革バインダー

ミニョンのシステム手帳バインダー。正方形に近いプロポーションのオリジナル
ミニョンのシステム手帳バインダー。正方形に近いプロポーションのオリジナル

 まずはこのバインダー。クロコダイルのシステム手帳。いっけんよくある高級革バインダーという風情です。
 これは、エフザコンタ・クレールフォンテーヌ傘下の高級ブランド「ミニョン」のアイテム。
 エグザコンタ・クレールフォンテーヌは、フランスの一大文具メーカーです。手帳のクオバディスをはじめメモ帳で有名なロディアや万年筆・インクのエルバン、ジャックエルバンもこのメーカーの傘下のブランドです。

 で、実はこれは規格がちょっと特殊です。正方形に近いプロポーションで、日本の新鋭規格に近い感じなのです。これがヤバかった。

 正方形に近いプロポーションのバインダーと言えば最近人気のHB×WA5が思い出されます。
 システム手帳のバインダーといえば、定番たるバイブル、A5が中心です。小型の物だとミニ6穴や、M5と呼ばれる最小サイズ(※)がありますが、主流はこの2つ。そして最近では、HB×WA5が登場しました。HB×WA5は日本のメーカー「アシュフォード」が2010年に開発したシステム手帳の新しい規格。その開発の経緯はこの記事にあります。つまり、HB×WA5は、日本で生まれた規格なのです。そして対応するバインダーやリフィルも、アッシュフォード以外では、マークスなど日本でもまだ数が多くありません。

 そしてこのミニョンのバインダーは、このHB×WA5サイズに近いのだそうです。

 だからこそまずこのプロポーションに驚きました。ひょっとして最近の製品で、日本発の規格にあわせたのかとも思われたからです。

 ところがよくうかがうと、この製品、実は1983年にはすでにカタログに掲載されており、バインダーもリフィル(オリジナル)も存在していたとのこと。また、一昨年の伊東屋のシステム手帳フェアに出品したのが公式な日本初登場だとのこと。

ミニョンのリフィルは、オリジナル。パリの工場で作られている。フォーマットはクオバディスのバーチカル式のそれに似ている
ミニョンのリフィルは、オリジナル。パリの工場で作られている。フォーマットはクオバディスのバーチカル式のそれに似ている

 こんなプロポーションのバインダー(とリフィル)がかの国ではすでに'80年代には登場していたとは、なんとも驚きです。
 当時の日本はバイブルサイズのシステム手帳がとても新しいアイテムとして熱狂的なブームでした。それはシステム手帳人気が盛り返してきたと言われる現在の比ではなく、文字通り猫も杓子ももっていたのです。その当時のファイロファクスの価格は3万6千円。消費税もない'80年代においてこの数字はとてつもなく高級だったはずです。

 で、こういうクロコ型押しのバインダーが数万円の価格がついていても、それはそれで頷けます。

 ともあれ、それが、正方形に近いプロポーションを持ち、それなりのプライスタグ(写真のモデルAK17は4万9500円税込み)がつけられている。それで、文頭の台詞を発してしまったわけです。
 広報M氏によれば一昨年の伊東屋システム手帳フェアで少量出したところとてもよく売れたそうです。

ロディアの三穴バインダー

ロディアの3穴バインダー
ロディアの3穴バインダー

 もう一つは、ロディアの3穴バインダーです。
 これは、バイブルサイズやA5のバインダーと併用すると効果を発揮するアイテムです。

 予定やタスクメモなどをバインダー本体に集約するのがシステム手帳の考え方です。
 ただ、ちょっとしたメモや一時的な記録にはこれはやや大袈裟でもあります。
 バイブルサイズやA5のバインダーで、分厚かったり開くのが面倒だったりする感じは、システム手帳ユーザーなら誰でも覚えがあるでしょう。
 そしてそれを補完するメモ的なアイテムがあると助かります。それが3穴のメモです。
 本体のバインダーとは別に、メモ用のシステムを用意する。そのひとつの方法が3穴のバインダーなのです。穴の間隔はバイブルサイズやA5サイズのそれと同じです。記入したリフィルは、保存するためにメインのバインダーにも綴じることができます。

 この種の3穴のリフィルやバインダーは、古くは、ファイロファクスにも存在していました。最近では、デザインフィルのPLOTTERブランドでも、3穴のバインダーが登場しています。

この動画でも紹介しました。

 その3穴のバインダーが、ロディアブランドから登場したのです。参考出品とのことですが、秋に発売予定だそうです。

 ロディアブランドは、天ノリ綴じで、やや濃いめの紫色の方眼罫線のメモ帳が有名です。
 そのロディアのロゴをまとった3穴のバインダーは、これまたヤバいです。
 イメージのストーリーとしては、ロディアのメモ帳が3穴規格でシステム手帳に対応し、より親和性が高まったという感じでしょうか。

 用意される予定のリフィルはオリジナル。その横幅は、バイブルサイズのリフィルと同じだそうです。

 色バリエーションは、3色。黒や白などもありました。ここはやはりロディアのブランドアイデンティティたる、オレンジ色をチョイスしたいところです。
 また、表紙の裏側にはスリットがあり、記入済みのリフィルの一時保管に利用できるそうです。

まだまだシステム手帳は面白いぞ!

 日本のシステム手帳はもともと、'80年代にイギリスのファイロファクスが銀座・伊東屋で販売されるようになったのが始まりです。そして、日本をはじめとする世界各国でも独自のバインダーや各種アイテムが売られているようです。

 今回のミニョンやロディアのそれぞれのバインダーは、その一例でもあるわけです。

 そして、そういう新しいアイテムを自分の既存のシステム手帳と組み合わせて新しい使い方を考えて実践する。これもまたシステム手帳の楽しみであり、便利さなのだと思います。

デジアナリスト・手帳評論家・歌手

デジアナリスト・手帳評論家・歌手。著書『手帳と日本人』(NHK出版新書)は週刊誌の書評欄総ナメ。日経新聞「あとがきのあと」登場ほか大学受験の問題に2回出題。『凄いiPhone手帳術』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)等著書多数。「マツコの知らない世界」(TBSテレビ)「HelloWorld」(J-WAVE)はじめテレビ・ラジオ出演多数。講演等も。手帳ユーザーを集めた「手帳オフ」を2007年から開催する等トレンドセッター的存在。手帳活用の基本をまとめた「手帳音頭」をYouTubeで公開中。認知症対策プロダクト「おぼえている手帳」は経産省オレンジイノベーションプロジェクト事業採択。

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