レアルはなぜジダンを続投させるのか?刻一刻と近づく審判の日と変化を望むマドリディスタ。
起伏が、激しい。レアル・マドリーが浮上と沈下を繰り返している。
スペイン・スーパーカップ準決勝でアスレティック・ビルバオに敗れた。コパ・デル・レイ3回戦で2部Bのアルコジャーノに屈した。6日間で2タイトル獲得の機会を棒に振ったジネディーヌ・ジダン監督に、厳しい視線が注がれた。
そのジダン監督が新型コロナウィルスで陽性反応が出てベンチ入りできなかったリーガエスパニョーラ第20節のアラベス戦で、マドリーは快勝した。
ジダン監督が窮地に立たされているのは確かだろう。ただ、カッとなっては冷静な判断はできない。2部B(実質3部)に属するチームに屈してのベスト32敗退は大きな失態だ。一方で、リーガエスパニョーラでは首位アトレティコ・マドリーに次いでマドリーは2位につけている。
チャンピオンズリーグでも、苦しみながらベスト16進出を果たした。決勝トーナメント一回戦ではアタランタと対戦する。マドリーに、現時点でジダン監督を解任するつもりはな。リーガとチャンピオンズリーグの成績を見てから判断する考えだとされる。
対して、スペイン『マルカ』のアンケートでは、大半のマドリディスタが変化を望んでいる。「この敗戦はジダン監督の時代の終わりを意味するか?」の問いに、10万票以上が集まり、70%が「イエス」と答えている。
「2部Bのチームと対戦したら、勝たなければいけない。しかし、これは恥ではない。責任は負わなければならない。働き続けることだ。心の痛い日だ。当然だよ。我々は決して負けるのが好きではない。だが気を狂わせるような真似はできない」
「試合に負ければ、(解任の)話題が出る。私は敗戦のすべての責任を受け入れる。それから、起きるべきことが起こるだろう。私は落ち着いているよ。今後、数日、どうなるか見てみよう」
"アルコジャナッソ"を喰らった後のジダン監督の言葉だ。
指揮官は平静を保っている。マドリーでの2度の指揮で、数多のタイトルを勝ち取ってきた。チャンピオンズリーグ(3回)、リーガ(2回)、クラブ・ワールドカップ(2回)、UEFAスーパーカップ(2回)、スペイン・スーパーカップ(2回)と合計11個のタイトルを獲得している。
その実績がジダン監督を支えている。かつて、フロレンティーノ・ペレス会長は彼を「天からの贈り物だ」と評していた。ペレス会長の信頼は依然として厚い。選手としても、監督としても、ジズーの存在は必要不可欠なものなのだ。
■フリーの監督の状況
また、現時点でフリーの監督は少ない。
筆頭はマウリシオ・ポチェッティーノ監督であったが、先にパリ・サンジェルマンの指揮官就任が決定している。
『マルカ』のアンケートでは、現在Bチーム相当のカスティージャを率いるラウール・ゴンサレス監督(44%)、マッシミリアーノ・アッレグリ監督(20%)、その他(36%)と7万831票が分かれている。
「その他」といっても、選択肢は多くない。トーマス・トゥヘル、エルネスト・バルベルデ、マウロ・サッリ、キケ・セティエン...。パリを追われたばかりのトゥヘル、バルセロナを率いていたバルベルデとセティエン、ビッグクラブでの選手マネジメントに難があるサッリと、いずれもマドリーに適した人材ではないようにみえる。
■欧州の頂に立っていた頃
2017-18シーズン、ジダン・マドリーはチャンピオンズリーグ3連覇を達成した。
ケイロール・ナバス、マルセロ、セルヒオ・ラモス、ラファエル・ヴァラン、ダニ・カルバハル、カゼミーロ、ルカ・モドリッチ、トニ・クロース、カリム・ベンゼマ、ガレス・ベイル、クリスティアーノ・ロナウド。その時の主力メンバーだ。
ベイルとイスコのポジション争いがあったものの、基本的にジダン監督はスタメンを固めていた。とりわけ「BBC」の得点力は大きかった。2015−16シーズン(89得点)、2016−17シーズン(66得点)、2017−18シーズン(77得点)と攻撃陣を牽引。そこにルーカス・バスケスやマルコ・アセンシオを加え、ローテーションとセカンドユニットを機能させていた。
だが先日、ルカ・ヨヴィッチがフランクフルトにレンタル移籍を決めたように、セカンドユニットの機能性はいまや失われつつある。
ヨヴィッチ、マルコス・ジョレンテ、セルヒオ・レギロン、テオ・エルナンデス、ダニ・セバジョス、ブラヒム・ディアス、マテオ・コバチッチ、アルバロ・モラタ、ジダン監督の信頼を勝ち取りきれなかった選手たちだ。今冬の移籍市場でマルティン・ウーデゴールが移籍に傾いており、このリストに加えられようとしている。
サイクルの終焉ーー。密かに囁かれていた説は、アルコジャナッソで突如現実味を帯びてきた。ひとまず、ジダン監督は続投する。だが審判の日は刻々と近づいているように思う。