NHKのインターネット放送『NHKプラス』は受信料負担?
KNNポール神田です。
https://www.nhk.or.jp/pr/keiei/internet/pdf/net_004.pdf
2020年01月15日、公共放送の『NHK』によるインターネットを活用した『常時同時配信・見逃し番組配信サービス』の『NHKプラス』の概要が発表された。
□2020年03月01日から試行的に実施 午前7時から翌日午前0時まで1日17時間程度開始。
□2020年04月01日(水)午前6時から翌日午前0時まで1日18時間程度開始
□地上2波(総合テレビ、教育テレビ)が対象
□権利関係のある映像は『ふたかぶせ』 番組単位、ニュースはニュース単位
□配信ビットレートは最大1.5Mbps(SD画質相当)
□音声2ch(二か国語、解説放送等あり)・字幕あり
□日本国内
□受信契約と照合してサービスを提供
つまり、最大の特徴は、現在、受信料を負担している世帯のみが、アプリや番組ページへアクセスし、IDとパスワードを登録し、契約住所に『確認コード』が流れてきて、スクランブルが解除されるという仕組みだ。
つまり、確認コードを打ち込むまでは、従来のBS放送などと同様に『受信契約のご確認』のメッセージが表示されるということになる。
■テレビを見ていなくてもインターネット上でNHKの受信料が請求されるということはない?…
昨今、テレビを見なくなっている人が多いが、インターネットでNHKが流れると受信料が請求されるのでは?と不安に感じていた人たちも多いだろうが、ひとまずその心配はなくなった。今回のNHKの『常時同時配信』はあくまでも、テレビ受像機を持つ、受信料負担世帯へのサービスの『プラス』という建て付けになっているからだ。もちろん、アプリや番組ページへアクセスし、IDとパスワードを登録した時点でインターネットで視聴は可能になるが、『受信契約のご確認のメッセージ』をずっと見せられるという状況になる(災害時などをのぞく)。そして、そのメッセージを解除するためには、契約住所の確認コードが必要とされる。
当然、いろんな輩もいるので、IDパスワードの漏洩から確認コードの不正な利用なども当然考えられるが、今回のNHKによるインターネット『常時同時配信』は、公共放送としてのテレビの前にいない時でもNHKを視聴できる環境を提供するというスタンスは一応の評価できると思う。受信料負担者にとっては少なくとも公共放送としてのサービス向上につながっているからだ。
■『NHKプラス』のコンセプトと費用
『NHKプラス』の特徴は、今までの放送に『新しいプラスの価値』をという表現がなされている。
□テレビの前にいなくても、いつでもどこでも何度でも 日々の生活をより豊かにわくわく
□いざという時にいつでもどこでも災害情報 日々の生活が より安心に
□ネット空間においても「情報の社会的基盤」 信頼できる、より深い情報に 触れる
□NHKの番組を通して新たな世界や、多様な考え方に出会える
受信料収入の最大3.8%を実施費用と見込んでいたが、最終的に、最大2.5%としての予算で総務省の認可を受けた。
2.5%といっても、最大174.3億円の費用が計上されている。また東京五輪の費用はこれ以外に20億円計上されている。
2020年だけでも合計194.3億円と約200億円の予算が認可されている。実際にこの金額をどう評価するかというと、民間の放送業者のテレビ事業を圧迫しないというところだ。在京の『テレビ東京』の企業価値である、時価総額は現在681億円であるので、テレビ東京の1/3(29.3%)の価値が1年間の同じものをネットに流すだけで費やされていると考えることができる。
しかも『NHKオンデマンド』は変更され、1週間以上は別料金(まるごと見放題パック990円/月)となる。テレビ東京の『ビジネスオンデマンド』では、毎月550円で24時間、何年も前の番組までさかのぼったり関連動画で視聴できている。
■なぜ?公共放送なのに『ふたかぶせ』という著作権処理が必要なのか?
筆者は、今回の同時再送信『NHKプラス』にあらかた賛成ではあるが、2点の問題点があると指摘しておきたい。
1点目は、なぜ、受信料負担率97%もの国民が負担しているにもかかわらず、NHKの『見放題パック』に新たに追加費用が必要なのか?ネット上でのサブスクチャンネルが多様化する中で、公共放送が追加費用を負担しなければ過去の放送を視聴できないことに大いに疑問を感じる。YouTubeやNetflixのドキュメンタリーでも『公共放送番組』としての価値のある番組だって増えているにもかかわらずだ。ましてや、一度制作し、放送したものの機会損失をふせぐ意味でも、インターネットでの再利用は公共放送として価値がある。12年前に開始された英国の公共放送『BBC』の『iPlayer』をなぜ見習わないのだろうか?
一ヶ月間にさかのぼりオンデマンド視聴できるBBC iPlayer
そして、2点目には、『ふたかぶせ』という著作権処理が必要になるという。インターネットでテレビと同様の番組を再送信するのだが、テレビ番組をベースに契約しているタレントなどは、著作権処理が必要となり『ふたかぶせ』というような静止画でのぼかしやスクランブルをいれるというのだ。
まず、この時点で、『公共放送』に出演するタレントやキャラクターは著作権を主張しない契約を取り決めれば良いし、その契約が履行できないタレントやキャラクターを『公共放送』で使う必要はないと思う。
いや、すべて、局の職員や委託で対応しても良いくらいだ。NHKほどの規模と予算があれば、芸能部門やエンタメ部門を自局で持つことさえ可能だ。民放でやっているような番組を高い予算をかけて同じものを製作する必要がどれだけあるのだろうか?『ガッテン』なども視聴者回答者を出演させればよいと思う。ひとつひとつの番組制作費を国民に報告する義務も果たされていない(義務化もされていないのが不思議だ…)。せめて民放並の制作費に押さえれば、もっと受信料負担もすくなくなるだろう。職員の給与平均が高いのであればBBCのようにリストラを断行する覚悟も必要だ。BBC iPlayerで『ふたかぶせ』のある番組を筆者は英国でも見たことがない。
■本当の公共放送となるか国営放送となるのかNHK?
せっかくの『NHKプラス』が受信料負担者のプラスに動いているのだから、もっと公共放送として愛される形態に変わる必要があると思える。NHK経営委員会も内閣総理大臣が任命するのも、NHKが『国営放送』ならばわかるが、公共放送であるならば、NHK経営委員会は、選挙で国民に選ばせるべきだと思う。政治からは完全自立しなければ、『公共放送』とはいえない。むしろ、中途半端な名ばかりの『公共放送』であるならば、すべて国税負担で『国営放送』としてもらったほうがよっぽどわかりやすいと筆者は思う。