菅「官房長官」が珍しく笑顔 最後の定例会見で語った”危機管理の心構え”とは
菅氏は9月14日午前、官房長官として最後の定例記者会見を行いました。その中では危機管理力について多くの質問があり、珍しく笑顔で回答。最後ということもあったのでしょうか、記者からのストレートな質問に不機嫌な様子はありませんでした。危機管理の心構えとしても参考になる内容でした。
記者の誘導に乗らず、自分の土俵に持ってくる
菅氏のコメントの特徴は、とにかく短いこと。そして常に記者の誘導に乗らず、自分の土俵で切り返す力がありました。さらに、その場にふさわしくない質問は、徹底的に嫌な表情で睨み返す。今回の記者会見でもそれは徹底していました。唯一違ったのは笑顔が多かったことでしょうか。新しいステージに立てることの気持ちの高揚が出ていたようです。記者側もお祝い気分があり、全体的に雰囲気のよい記者会見であったと思います。見ていて心地がよいと感じました。記者とのやりとりを観察してみましょう。
印象に残る会見をどれか1つだけを取り上げてない点に着目です。1つだけ取り上げるとそこが見出しになってしまい、思わぬ方向へ影響が及んでしまうことがあります。守りの回答でした。
これは記者の質問に答えていません。回答するわけにはいかない内容だからです。ここは切り返して、自分の信念を述べる方向転換を図っています。自分の土俵に乗せている典型例といえるでしょう。
これは質問がうまい。「印象に残る会見」ではなく「最大の危機と感じた時」となると、答えないわけにはいきません。それでも1つだけでなく、いくつか挙げています。のちの回答とも一致しています。安全保障、災害、在外邦人の安全。「先頭に立って」と添えることで自分がリーダーにふさわしいこともさりげなくアピールしています。
危機管理においては、「何を守るのか」が最も重要な判断基準となります。その意味で「国民の生命」「平和な暮らし」を最初にストレートに持ってきたことで、何を守るのかがわかっていることを表現しています。
失言リスク回避のポイントは全てを言わないこと
次のやり取りは、危機管理広報の視点から私が最も注目した点です。
説明しすぎると失言リスクは高まりますが、かといって説明しなさすぎると不信感となります。そのバランスが難しいのです。この回答を意外だと思う人はいるかもしれません。説明責任とは、全てを説明すること、と誤解している人がいるのではないでしょうか。「何を守るのか」を中心に、説明しないという選択肢もあるのは事実です。危機管理広報の視点からも、何を守るのか、何を言わないかを明確にしないで記者会見をすると失敗してしまうリスクは高まります。
トップになれば、政府見解というよりもリーダーとしての見解を述べることができるようになります。その意味でトップとセカンドでは会見のコメントが変わってくるといえます。
官房長官としての菅氏は、質問する記者を見ない、表情が乏しいといった表現力に課題はあったものの、質問さばきは正直「うまい」と思っていました。これからは政府の見解、守りのコメントだけではなく、国のリーダーとしてのメッセージ発信となります。コメント力だけでなく、雰囲気づくりも含めた演出力はどう変化するのでよしょうか。これからの表現力を引き続き注視したいと思います。
<参考サイト>
9月14日 午前 官房長官定例記者会見