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一味違った新星

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Photo:山口裕朗

 拓殖大学3年次に全日本王者となった横山葵海(あおい)。2024年3月に大学を卒業し、プロに転向。7月7日に行われたWBA/IBF統一スーパーフライ級タイトルマッチの前座でデビュー戦を迎え、2回KO勝ちを飾った。

 「緊張感はあんまり無かったんですが、アマチュアのグローブは10オンス。プロは8オンスですよね。この小さなグローブでパンチをもらったらどうしよう? みたいな気持ち、不安を覚えました。怖さがありましたよ。なので、喰わないように注意して戦いました」

Photo:山口裕朗
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 メインイベントは別として、この日、両国国技館で催された試合は、ファンを満足させるものが少なかった。そんななかで横山は、差を見せ付けた。スピード感も度胸もパンチのキレも、一味違った。

 試合開始直後から、対戦相手の中国人ファイターに鋭いジャブを上下に見舞い、ペースを握る。

 「デビュー戦でしたが、固くもなく、リラックスして動けていたと思います。練習通りだなぁという感じでやっていました。ウォーミングアップの時から調子が良く、テーマである“もらわずに打つ”が出来たんじゃないかと。

 最初は出過ぎずに、冷静に相手の動きを見ました。ファーストラウンドの終盤に、左ボディアッパーを入れたあたりで、『いける!』という実感がありました。KOは時間の問題だなと」

Photo:山口裕朗
Photo:山口裕朗

 ボディが効いた相手の動きが鈍ったところに、横山は何度かワンツーを放つ。そして、第1ラウンド残り11秒に右ストレートを叩き込んでダウンを奪う。

 「こんなに簡単に倒れるんだなと、ちょっとビックリしました」

 ゴングに救われたチャイニーズだが、第2ラウンドに入ると横山は仕留めにかかる。それも深追いはせずに右ストレートでさらにダメージを与え、最後はジャブ3連発でキャンバスに沈めた。

 「楽しかったですね。世界戦の前座でしたし、色んな人が僕を見てくれました。ただ、映像や写真を見ると、ガードが甘かった点が目に付きます。ディフェンス面も向上させながら、倒せるボクシングをしていきたいです。お客さんを楽しませながら、真っ直ぐだけじゃなく、サイドにも動いて、フェイントも使って、とにかくパンチをもらわないことを心掛けます」

Photo:山口裕朗
Photo:山口裕朗

 横山は客席から、メインイベントである井岡一翔vs.フェルナンド・マルティネス戦を目にした。

 「井岡さんのボディブローは良かったんですが、あの距離で打ち合わずに、離れるとかサイドに動いたらいいのにと思いながら見ていました。マルティネスとやるなら、やはりボディが有効かもしれませんね。ああいうトップ選手に追いつくためにも、海外キャンプで腕を磨きたいです」

 期待の新星、横山葵海はプロでの一歩を踏み出した。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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