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そんなに急いでどこへ行こうとしているのか、教育機会確保法案

前屋毅フリージャーナリスト

教育機会確保法案・・・簡単に言えば、不登校の児童生徒の学校外での学びを支援するための法案である。これだけみれば、「良い法案じゃないか」とおもう。しかし、そう単純なものではない。

この単純ではない法案を、どうみても無理矢理に成立させようとしている。法案が衆議院に提出されたのは5月10日のことだった。13日には衆議院の文教科学委員会に提示され、5月18日に審議されることになっている。

問題は、この日、1日だけの質疑応答で裁決までもっていこうとしていることだ。そして採択し、翌日の衆院本会議にかけ、これまた当日中に採択してしまう予定が固まっている。

参議院でも委員会での審議は1日で済ませ、本会議でも5月25日ごろに1日裁決・採択までもっていき、成立をはかることになっている。つまり、6月1日の今国会会期末までに、どうしても成立させてしまおうとしているわけだ。

なぜ、そんなに急ぐのか。いろいろなところから疑問の声がおきている。

教育機会確保法案は議員立法で、「超党派フリースクール等議員連盟」が法案を提出した。議員連盟の設立は2014年6月3日で、初代の幹事長に就任したのは、その後に文部科学大臣に就任した馳浩である。

議員連盟が当初に作成した法案は、一定の条件を満たせばフリースクールなどを義務教育の場として認めるという案が主体になっていた。その法案作成に中心的役割を果たしたのが、幹事長だった馳だった。

当初、この法案を昨年の国会に提出する予定だったが、いろいろなところから疑問が呈された。フリースクールなどを義務教育の場として認めることは、子どもにとってメリットがありそうだが、裏を返せば義務教育の押しつけでしかない。なにより、不登校を助長することにもなるし、不登校の子どもたちをフリースクールに押しつけて学校とは無関係の存在にしてしまうことになる。さらには、不登校のレッテルを貼り付けることにもなる。問題は山ほどあるのだ。

反対の声が大きくなったため、結局、昨年は法案の提出は見送られた。にもかかわらず、今国会の会期末が近づくなかで、急に提出されたのだ。

今回の法案では、フリースクールなどを義務教育として認めるという案は削除されているが、不登校の子どもへの支援が柱になっている。不登校というくくりを、どうしてもはっきりさせたいらしい。

不登校の子どもたちに対する支援は、当然、必要である。しかし、そのためには議論すべきことがたくさんある。学校から切り離すような支援なら、支援ではなく、切り捨てにしかならない。

とても拙速に法律化できるような問題ではないのだ。議論もつくさず、衆院でも参院でも審議は1日だけという乱暴きわまりないやり方の意味が、さっぱり分からない。

理解しがたい急ぎようで成立させようとしている「教育機会確保法案」の正体を注視しないわけにはいかない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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