【皮膚科医が解説】最新研究から見る"本当に効果のある"アンチエイジング化粧品成分
【ビタミンCとレチノール:エビデンスの高いアンチエイジング成分の王道】
加齢とともに現れるシワやたるみ、シミなどの肌の変化。これらのエイジングサインを改善するため、多くのアンチエイジング化粧品が開発されています。中でも注目されているのが、ビタミンCとレチノールです。
ビタミンCは水溶性ビタミンの一種で、強力な抗酸化作用を持っています。コラーゲンの生成を促進し、シミやくすみを改善する効果が知られています。ビタミンCの誘導体であるテトライソパルミトイルアスコルビン酸(VCIP)を使ったランダム化比較試験(RCT)では、目尻のシワが有意に改善したと報告されています。
ビタミンCは酸化されやすく、安定性に課題がありました。そこで開発されたのが、リン酸アスコルビルマグネシウム(MAP)やVCIPなどの誘導体です。これらは皮膚への浸透性が高く、従来のビタミンCよりも高い効果が期待できます。
レチノールは、ビタミンAの一種であるレチノイドに分類される成分です。真皮のコラーゲン産生を促進し、シワやたるみを改善する働きがあります。7つのRCTにおいて、0.1%~0.5%の濃度のレチノールが、シワ、小じわ、肌のハリなどの項目で有意な改善効果を示しました。
ただし、レチノールには刺激性があるため、使い始めは低濃度から始め、徐々に濃度を上げていくのがおすすめです。また、レチノールは光に不安定なため、夜のスキンケアに取り入れるのが一般的です。敏感肌の人は、刺激の少ないレチノールの誘導体であるレチナルデヒドやヒドロキシピナコロンレチノールを選ぶのもよいでしょう。
【次世代のアンチエイジング成分に注目】
近年、メチルエストラジオールプロパノエート(MEP)やバクチオールなど、新しいアンチエイジング成分が注目を集めています。
MEPは、エストロゲン受容体を活性化する非ホルモン性の物質です。閉経後の女性の肌は、エストロゲンの減少により乾燥やシワが目立ちやすくなります。MEPは、エストロゲン様の作用で肌の状態を改善すると考えられています。RCTでは、MEPを14週間使用した結果、肌の乾燥、たるみ、くすみなどが有意に改善しました。
バクチオールは、インドナツメ(学名: Psoralea corylifolia)という植物由来の成分です。レチノール様の作用機序を持ち、コラーゲンの生成を促進します。レチノールとの比較試験では、シワと色素沈着の改善効果に有意差はありませんでしたが、バクチオールのほうが副作用が少なかったと報告されています(4)。バクチオールは、レチノールのような刺激が苦手な人におすすめの成分と言えるでしょう。
このほか、ヒアルロン酸(保湿)、ナイアシンアミド(シミ・くすみ改善)、ペプチド(コラーゲン生成促進)など、エイジングケアに効果的な成分は数多くあります。自分の肌の悩みに合わせて、成分を選ぶことが大切です。
【化粧品選びのポイントは"エビデンス"と"安全性"】
アンチエイジング化粧品を選ぶ際は、信頼できるエビデンスがあるかどうかがポイントです。効果が科学的に検証された成分が、十分な濃度で配合されているかを確認しましょう。目安としては、ビタミンCなら10~20%、レチノールなら0.1~1%程度の濃度が理想的とされています。
ただし、濃度が高いほど刺激が強くなるため、特に敏感肌の人は低濃度から始めるのがおすすめです。使用感や肌の状態を見ながら、徐々にステップアップしていくとよいでしょう。
最新の研究では、ビタミンCとレチノールの相乗効果も注目されています。この2つの成分を組み合わせることで、より高いアンチエイジング効果が期待できるのだとか。今後の研究の進展にも期待が高まります。
加齢に伴う肌の悩みは、誰もが避けて通れない問題です。しかし、適切なスキンケアと生活習慣を心がけることで、年齢に負けない美しい肌を手に入れることができるはずです。エビデンスのある化粧品を賢く取り入れながら、自分らしい輝く肌を目指しましょう。
参考文献:
Arch Dermatol Res. 2024 May 17;316(5):173.