「[en]学生の就職情報」終了のニュースから、これからの新卒採用市場を読み解く。
「【en】学生の就職情報」の終了とこれまでの新卒採用市場
新卒・就活ナビ第3位の「【en】学生の就職情報」が来年3月で終了というニュースが話題になっています。
私自身も、現在は中途の転職支援がメイン事業ではありますが、
学生時代に大学生向けSNSを友人と運営し、当時、新卒学生の集客支援・紹介事業を行なっており、
現在も時々、新卒ナビサイト事業の立ち上げについて、数社企業様からご相談をいただく機会が多いため、
今回の記事から現状の新卒採用市場について、私なりに読み解いてみたいと思います。
新卒採用市場は、採用ナビやナビサイトと呼ばれる求人広告モデルがメインで、
こちらを読まれている方の多くが就職活動時にお世話になったであろう
リクナビやマイナビが2強の存在として、長く続いてきました。
私自身、中途の人材紹介をメインとしたリクルートエージェント(現・リクルートキャリア)に新卒で入社していますが、
内定者時代に、リクルート社のリクナビ新卒の部署で、半年程、内定者アルバイトをさせてもらった経験があり、
その際に、一社で年間、億を超える予算をかけているクライアントもいると聞いて、
衝撃を受けた事を覚えています。
ただし、昨今、ソーシャルメディアやリアルイベントを活用した採用モデル、
転職市場のような人材紹介モデルが、新卒採用でも活用されるようになってきた中で、
従来のナビモデルの限界も、業界・人事関係者等から多く聞かれるようになってきました。
ただ、短絡的に「古いモデル」=「悪いモデル」、
また、「【en】学生の就職情報」の終了=「ナビモデルの終焉」
と考えるのは違うかな、と私は思います。
大手企業と一部学生にとって有効なナビモデル
中途市場もそうですが、求人業界というのは、主語が変わる事によって、
課題も大きく異なります。
主語というのは、例えばですが、具体的に、以下のようなプレイヤーです。
※わかりやすく整理するために、かなり大雑把な分け方で申し訳ございません。
例外がある事は前提で、一般論化させてもらっています。
'''企業サイド:''
'* 有名大手企業(採用力・認知度高い)
- 中小・中堅企業(採用力・認知度低い)
学生サイド:
- 自力で内定が複数とれる学生
- 自力で内定がなかなかとれない学生
有名大手企業にとっての課題は、100人以上の単位での採用目標の達成と、選考スクリーニングです。
いかに手間とコストをかけずに100名〜1000人を毎年採用し切るか、がミッションなわけです。
母集団を集める事は、自社サイトや上記ナビサイトに掲載すれば、勝手に数万人からのエントリーが集まります。
そうした膨大なエントリーから10人以下の人事組織で、いかに選考を効率的にさばくかが、課題になります。
こうした課題のために、選考プロセスのアウトソーシング市場が生まれている程です。
※企業の人事や社員が面接官を行なっているかと思うと、実は外部のアウトソーサーが選考をしている事も多いのです。
やや話が逸れましたが、選考工数に大きな課題は残るものの、
母集団を気軽に形成し、管理できるという意味で、有名大手企業にとって、ナビサイトは有用であると言えます。
イベントや人材紹介モデルでは、短期間で、数百人単位に内定を出す事は、母集団確保も難しく、
手間もかかるしで、至難の業です。
また、学生側についても、特に支援を必要とせず内定がとれる学生は、
希望の企業にエントリーして、接点さえ得られれば、自力で内定を複数取得し、
早々と入社先を選定する事ができます。
そんな学生にとって、ナビサイトは、事前に個人情報を登録しておけば、
ボタン1つで、一括エントリーができ、エントリー企業とのやりとりも、
メールボックス等で、一元管理できて便利であったりするのです。
実際、彼ら、彼女らは、ナビサイトでも、
希望する有名大手企業の個社名でキーワード検索し、
自らエントリー処理をしているでしょう。
ナビとしては、多くの学生が希望する大手・有名企業のエントリー窓口さえ、
網羅されていれば、極端に言えば、それで良いのです。
上記からも読み取れるように、ナビサイトモデルは、
大手企業と、内定を自力で複数獲得できる学生とのマッチングに適しているわけです。
そうした際に、「【en】学生の就職情報」のような【中小・中堅・ベンチャーに強み】を持つナビサイトというのは、
企業・学生の双方からナビサイトに求められている役割に、やや矛盾があったのかもしれません。
「誰(どんな課題を持った企業)」と「誰(どんな課題を持った学生)」を繋ぐのか?という点が、
先行者であるリクナビ・マイナビと比べて曖昧だったのかもしれません。
中小企業と自力で内定をとれない学生の課題
採用力・認知度の低い中小・中堅企業は、そもそも採用人数自体、
数人〜10人程度であり、既存社員数も少ないため、選考人員も割けないわけで、
ナビよりも、少人数のお見合い型イベントモデルや人材紹介モデルが向いていると言われます。
恐らく中小企業は、採用支援企業に以下の4点を期待しているためです。
- コスト:できる限りかけたくない。1人あたり採用予算は30万円以下が良い。
- 動機付け:ナビではこないような学生を直接口説いて連れてきて欲しい。
- マッチング:自社に合っている人材か精査してほしい、お見合いのようなきめ細かいマッチングをしてほしい。
- 手間:選考に人を割けないし、手間をかけたくないから任せたい。
また、学生側も、内定をなかなか自力でとれない学生や、
ナビで自力で内定を複数とれるが、ナビに掲載していない小規模で認知度の低い会社を希望する学生(多くはないと思いますが・・)
にとっては、イベント・人材紹介は、コンサルタントから就活サポートを受けられたり、ナビに掲載してない(できない)企業の紹介をしてもらえるため、メリットがあるわけです。
今後の新卒採用市場は・・
今後の新卒採用市場を占うという観点では、「【en】学生の就職情報」の終了に伴い、
中小・中堅企業の採用予算は、リクナビ・マイナビ等の大手ナビの中小向け格安プランに流れるか(そんなプランは現状ないかもしれませんが)、手間・コスト面を考え、人材紹介モデルや、イベントモデルに流れるのかもしれません。
今回のリリースでも、新卒人材紹介に強みと実績を持つ、ネオキャリアと提携を行ない、既存顧客を案内していくという発表がありましたが、実際には、やはりコスト・手間を考えると、人材紹介モデルの方が、親和性があるのかもしれません。
ただし、個人的には、これから新卒の人材紹介モデルが伸びていくにあたり、大きな可能性を感じるとともに、大きな懸念も感じています。
社会人経験や知識の少ない学生の人生を左右しかねないビジネスですので、モラル感が非常に重要になってくると思います。
多くの20代、第二新卒の転職希望者の転職・キャリア支援をさせてもらっている私としては、人材紹介モデルで、コンサルタントの言う事を鵜呑みにしてしまい、新卒の就活で失敗してしまった方も多くお会いするため、
企業の採用都合や利益だけを追求するのではなく、高いモラル感を持って事業を行なっていただける事を切に願います。
やや個人的な気持ちの話となってしまいました・・(汗)
就活生向けに、個人でボランティア的に就活支援も行なっておりますので、
興味のある方は、私までお気軽にご相談ください。
今後も定期的に、これからの転職ノウハウ・働き方・「働き方3.0」について、
情報発信・レポートをしていきたいと思いますので、よろしくお願いします!