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宮崎駿新作、北米公開が決まり、タイトルを「少年とサギ」と発表。「なぜ変える!?」と不評の嵐?

斉藤博昭映画ジャーナリスト
(C)2023 Studio Ghibli

宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』が7/14に日本で公開されたタイミングで、アメリカ(北米)での公開もアナウンスされた。

北米配給を手がけるのはGKIDS。これまでもスタジオジブリ作品の北米配給を手がけてきた会社で、2017年以降は800以上の映画館で「スタジオ・ジブリ・フェスト」という特集上映も開催している。『君たちはどう生きるか』の配給も、いつもどおりの流れで、正式な公開日は発表されていないかが「今年後半」とされ、年内なのは確実。次回のアカデミー賞などへの資格も備える。

この『君たちはどう生きるか』は、これまで英語の記事でも「How Do You Live」と直訳で暫定的に紹介されていたが、公開が決まったことでGKIDSがタイトルを「THE BOY AND THE HERON」と発表。意味は「少年とサギ」。ポスターにも描かれた鳥のサギがタイトルで入った。大きな変更ではあるが、当然、スタジオジブリ側の了解もとっているはずだ。

しかし、この英題に対して海外のファンの反応は「なぜ北米だけ、わざわざタイトルを変える?」と否定的なものが圧倒的。

代表的な例を挙げると……

この新たなタイトルは痛々しいほど“普通”。どうか元に戻してほしい。「君たちはどう生きるか」はシンプルで記憶に残るし、はるかに刺激的で興味をそそる。「少年とサギ」って、まるで90年代のビデオスルー作品みたい。

その他にも「ミヤザキがタイトルに込めた思いをちゃんと伝えてほしい」という同じような意見が相次いでいる。

中には、今回のタイトルの語源になった吉野源三郎の小説を示し、深く考察する意見があったりも。

アシェット(出版社)が英訳本でこのタイトルの権利を持っているので、原作の直接の映画化ではない本作は(タイトルを同じにする)交渉に値しないのでは?

こうした反応が起こるのは、これまでのジブリ作品が英語のタイトルでも大きな変更がなされなかったから。近作を中心に過去の主なスタジオジブリ作品の北米公開時の英語タイトルを振り返ると

アーヤと魔女 → Earwig and the Witch

思い出のマーニー → When Marnie was there

かぐや姫の物語 → The Tale of the Princess Kaguya

風立ちぬ → The Wind Rises

コクリコ坂から → From Up On Poppy Hill

借りぐらしのアリエッティ → The Secret World of Arrietty

(イギリスではThe Borrower Arrietty)

崖の上のポニョ → Ponyo(または Ponyo on the Cliff by the Sea)

千と千尋の神隠し → Spirited Away

もののけ姫 → Princess Mononoke

となりのトトロ → My Neighbor Totoro

基本的にオリジナルに忠実で、わずかに英語として受け止めやすい変更がある程度。「ポニョ」など簡潔化が効果的なものも。『千と千尋の神隠し』も「Spirited Away」は「神隠し」の部分の訳となっている。

こうした“歴史”から海外のジブリファンも今回の変更に不満を募らせているのかもしれない。しかし、過去のジブリ作品のタイトルが、作品全体のイメージを体現していたり、原作をそのまま使っていたりしてきた中で、今回の『君たちはどう生きるか』は同タイトルの小説との関係、ストーリーとの一体感など、微妙な部分を秘めた内容でもあることから、こうした“わかりやすい”英語タイトルになったとも推察できる。

いずれにしても公開後の反応、今後のアカデミー賞に向けた評価など、海外での「少年とサギ」の受け取られ方は今から楽しみだ。

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、スクリーン、キネマ旬報、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。連絡先 irishgreenday@gmail.com

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