松戸が「千葉の武蔵小杉」になる理由
東京23区内よりも都心から遠い郊外都市のほうが人気で、分譲価格も高額化……そんな現象が最初に起こったのは、神奈川県川崎市の武蔵小杉駅周辺。23区内の大田区から多摩川を越えた先なのに人気が高く、マンション分譲価格が23区内よりも高くなってしまった場所だ。
もうひとつ、東武東上線和光市駅(埼玉県)は、隣接する板橋区の成増駅よりも人気が高い。理由は、東武東上線に乗り入れている東京メトロ有楽町線と副都心線の始発電車が利用でき、座って通勤がしやすいから。隣駅の板橋区・成増駅よりもむしろ便利というわけだ。
新たな“下克上タウン”は千葉県の松戸
武蔵小杉にしろ、和光市にしろ、都心ではない。23区内でも、東京都内でもない。神奈川県と埼玉県に入った場所で、郊外都市と位置づけられる。いわば、外様(とざま)の街……それが、23区よりも高い評価を勝ち得てしまう様子は「下克上」を思わせる。
そんなこと、20世紀の間にはなかった。なんといっても、土地の評価が高いのは東京都内。そのなかでも23区内だった。川崎市や和光市が23区よりも上位につくことなどあり得なかった。だからこそ、武蔵小杉と和光市の人気ぶりは衝撃的だった。
そして、今、新たな“下克上タウン”の候補が出てきた。それは、東京を取り巻くもうひとつの県、千葉県の松戸だ。
平成27年、上野東京ラインの開通以降、人口が増加
「松戸」と聞いて「えっ」と思う人が少なくないだろう。「上野駅から常磐線に乗って、ずいぶん遠い場所でしょ」と。同じ千葉県の柏より松戸のほうが都心から遠いのでは……等々いろいろな誤解が生じやすい場所だ。
松戸は今も常磐線の駅だが、住人の意識は「上野東京ラインの駅」に変わっている。「終点は上野」の駅ではなく、東京駅、品川駅に直接通じている駅だ。そして、柏よりもだいぶ都心寄り。葛飾区から江戸川を越えたら、すぐの場所だ。
23区に寄り添い、虎視眈々と「上」を狙うポジションは、武蔵小杉、和光市、そして川口と同様。“下克上タウン”になりやすい位置関係だ。
松戸市の人口は、平成27年から増加に転じ、以後、毎年約2000人〜3000人ずつ増加している。平成27年は、JRの上野東京ラインが開通した年。上野東京ラインが松戸市の中心である松戸駅のイメージを変えたことは間違いない。
上野東京ラインの品川駅は、リニア中央新幹線の始発駅になることが決まっている。さらに、昨年夏に動き出したJR羽田空港アクセス線の建設計画で、JR上野東京ラインは将来羽田空港に直結する路線となる。前途洋々なのである。
通勤便利で、生まれ変わる街の勢いもある
未来の夢、ばかりではない。松戸駅ではJRに乗り入れている東京メトロ千代田線を利用することができ、通勤時間帯に千代田線始発電車で座って通勤も可能になっている。千代田線は大手町、日比谷、霞ヶ関、表参道を通る路線で、使い勝手がよい。それも、松戸の評価を上げている。
松戸市は都市再生緊急整備地域の候補地になっており、新たな開発が始まろうとしている。そして、昨年3月に閉店した伊勢丹松戸店の跡地では、今年4月に新しい商業施設「Kite Mite Matsudo(キテミテマツド)」がオープンする予定。さらに、新松戸駅の南東側で「テラスモール松戸(仮称)」の建設が行われており、今年秋に開業する予定など、街の勢いを感じさせる計画が多い。
その松戸駅周辺では、3000万円台で3LDKを購入できる新築マンションがまだ残っている。それなら、毎年人口が2000人ずつ増えているのも無理はない。
松戸が「千葉の武蔵小杉」になる日は近い。そういうと、笑われそうだが、案外、これ、ホントになりそうなのである。