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「石川祐希や柳田将洋もよく知っている」韓国男子バレーがアジア大会に切実な理由

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
男子バレーボール日韓戦は日本の2連勝だった。(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

先週末の7月28・29日に千葉県の船橋アリーナで行われた『2018男子バレーボール国際親善試合 日本×韓国』。中垣内祐一監督率いる“龍神NIPPON”こと男子日本代表の国際試合としては今年最後の2連戦ということもあって、会場には多くの観客が詰めかけていた。筆者も初戦を記者席で取材したが、その熱気には驚かされたくらいだ。

韓国でも知られている石川祐希と柳田将洋

特にキャプテン柳田将洋と約10カ月ぶりの代表戦となった石川祐希の人気は絶大。グッズ・コーナーにはふたりのオリジナル・グッズを求めようと列が出来ていたし、コートでふたりが躍動する度に歓声が沸いた。

試合後、日本バレーボール協会の計らいで男子バレーボール韓国代表のキム・ホチョル監督に話を聞く機会があったが、「日本の選手たちの長所や特長などはよく知っているし、彼らが人気があることも知っていますよ」と語っていたほどだった。

(参考記事:「憧れの選手」「全部うまい」石川祐希と柳田将洋を韓国はどう見ているか)

もっとも、韓国にも柳田や石川に負けないスター選手はいる。その代表格はムン・ソンミンだろう。

大学在学中から韓国代表として活躍し、ドイツのVfBフリードリヒハーフェン(2008年-2009年)、トルコのハルクバンク・アンカラなど欧州での選手生活を経て、2010年から韓国のプロ・バレーボールリーグであるVリーグの現代キャピタル・スカイウォーカーズに所属。数多くの個人賞を手にし、近年は2年連続でVリーグのMVPに輝いている。

日本の俳優・玉木宏を彷彿させるその甘いマスクとモデルを彷彿させるルックスから雑誌モデルを務めたり、テレビのバラエティ番組にも登場する人気者だ。

韓国Vリーグの“顔”と言える選手たち

今回の親善試合のために来日した男子バレーボール韓国代表は、このムン・ソンミンをはじめ韓国Vリーグのスター選手が多く名を連ねていた。

それこそ実力と人気を兼ね備えた韓国Vリーグの“顔”ばかりで、韓国はこのメンバーで8月からインドネシアで行なわれるジャカルタ・アジア大会に臨むのだが、このチームには大きな特徴がある。

(参考記事:実力もルックスも傑出!! 韓国男子バレー界の“イケメン選手”TOP7一挙紹介)

それは“未了者”であるということ。来日した14名中11名がまだ兵役を終えていないのだ。

韓国では成人男子に約2年の兵役義務があるが、スポーツ選手の場合、オリンピックで金・銀・銅、アジア大会で金メダルを手にすれば兵役免除の恩恵に授かれるが、ジャカルタ・アジア大会に挑む男子バレーボール韓国代表は金メダルを狙って編成されたチームとも言えるのだ。

また、個人の兵役問題解決だけではない使命感も背負っている。ほかでもない韓国における男子バレーボール人気だ。

女子バレー人気に押されている状況

韓国では近年、バレーボールと言えば女子のほうが人気が高い。それはスーパーエースであるキム・ヨンギョンに牽引されて国際大会で結果を残している女子バレーボール韓国代表の躍進も無関係ではないだろう。

女子バレーボール韓国代表は2012年ロンドン五輪ではベスト4進出を果たし、2016年リオデジャネイロ五輪にも出場。今年9月に日本で行なわれる世界バレーにも出場する。

こうした国際舞台での躍進もあってバレーボールは女子のほうが人気なのだ。

韓国Vリーグは男子部と女子部が同日に行わせることが多く、午後5時から女子、午後7時から男子の試合が行われてきたが、最近は順序を逆にしたほうが良いのではないかという声もあるほどで、Vリーグ女子選手たちの中にはアイドル並みの人気を誇るスターもいる。

(参考記事:【画像】アイドル並みのかわいさ!? 韓国美女バレー選手“ベスト6”が美しすぎる!!)

「アジア大会にVリーグの運命がかかっている」

対して男子バレーボール代表のほうは国際舞台で苦戦が続いている。2000年シドニー大会以降、オリンピックからは遠ざかっており、最近はオリンピック世界最終予選にすら駒を進められない。

アジア大会で金メダルを手にしたのも、2006年のドーハ・アジア大会で金メダルを手にしたのが最後(前出のムン・ソンミンはこのとき金メダルを手にし、兵役免除となっている)。今年のネーションズリーグでも1勝14敗の最下位だった。

そんな状態の中で、国民の務めとはいえ兵役のために人気選手が抜けてしまえばVリーグ男子部の存在感はさらに薄らいでしまう。

だからこそ韓国メディアも、「2018年アジア大会、Vリーグの運命がかかっている」(『ノーカットニュース』)、「兵役未了者多数、アジア大会男子バレーの成績にVリーグの興行がかかっている」(『スポーツ東亜』)と危機感を募らせている状況なのだ。

案の定、韓国男子バレーのチーム状況をチェックしようと日韓戦の試合会場に足を運んだが、韓国は2連敗。日本にまったく歯が立たなかった。

試合後に話を聞いたキム・ホチョル監督は、「チームは体力面を強化している段階で、技術面や戦術面はこれから磨いていく。本番のアジア大会では良いコンディションで臨めるだろう」と語っていたが、果たして……。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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