米国(グアムやハワイ)に向かう弾道ミサイルは日本上空を通過する
現在、集団的自衛権を巡る論議で「北朝鮮からアメリカ本土へ向かう弾道ミサイルは北極圏を通過するので日本からは迎撃不可能、政府の説明はおかしい」という主張があります。具体的には野党の民主党や与党の自民党内の集団的自衛権反対派が行っているものです。しかしそもそも政府は、安倍首相は「アメリカ本土」とは説明しておりません。「グアムあるいはハワイ」です。
また日本共産党は上記答弁を指して「そもそも自衛隊にはグアムあるいはハワイに向かっていくミサイルを撃ち落とす能力がない」と批判していますが、数年後の2018年には日米共同開発の新型迎撃ミサイル「スタンダードSM3ブロック2A」が実戦配備される予定です。SM3ブロック2Aは日本近海からグアム行き弾道ミサイルを撃墜できる十分な能力を備えています(現状の装備であるSM3ブロック1Aはグアム近海で待ち構えていたら迎撃可能)。
弾道ミサイル防衛システムSM3の迎撃能力(2013年2月14日) - Y!ニュース
安倍首相の答弁はもうすぐ実用化する予定であるSM3ブロック2Aを念頭に置いたものです。現状の装備であるSM3ブロック1Aですら既にグアム攻撃を想定した中距離弾道ミサイル標的を大気圏外で迎撃する事に成功済みです(2011年、FTM-15実験)。ハワイ行き弾道ミサイル迎撃に付いてはSM3ブロック2B以降の開発次第ですが、ブロック2Bはまだ机上プランの段階です。
そしてアメリカ軍は韓国の基地に弾道ミサイル防衛システム「THAAD」を置く計画です。THAADは在韓米軍の基地を防衛する為のものですが、THAADが用いるXバンドレーダー「AN/TPY-2」は上昇中の北朝鮮の弾道ミサイルを早期に探知し、弾道を計算して何処に向かうかを直ぐに割り出し、そのデータを米本土のシステムセンターを経由してイージス艦に送る事が出来ます。THAADやPAC3は弾道ミサイルが落ちて来る終末段階の防御用であり、弾道ミサイルが大気圏外を飛行している中間コースの迎撃にはSM3が用いられます。SM3はグアム行き弾道ミサイルを撃墜する能力が実証されています。