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梅雨に負けない元気をくれる「夏CM」!

碓井広義メディア文化評論家
筆者撮影

7月も半ばだというのに、梅雨はまだ明けず、ぐずついた天気が続いています。そろそろ青空が見たいところですが、もうしばらくの辛抱でしょうか。ということで、梅雨に負けない元気をくれる「夏CM」に注目です。

ANA 成田―ホノルル便「FLYING HONU Debut」篇

いまいち盛り上がりに欠けていた、NHK大河ドラマ『いだてん』の前半戦。

主人公のマラソンランナーは“いいひと”かもしれないのですが、それ以上の魅力が感じられないのが残念でした。それでも見続けていたのは、ひとえに妻役の綾瀬はるかさんがいたからです。って、オーバーか。

思えば、不思議な女優さんですよね。映画『ハッピーフライト』のお茶目なCAさんも、『海街diary』のしっかりしたお姉さんも同じ綾瀬さんなのですから。

美人なのに、気取ったりしない。親しみやすいのに、媚びたところがない。どのCMでも、綾瀬ワールドをエンジン全開で現出させながら、きちんと商品の好感度をアップさせていく。

ANAがホノルル線に就航させた、エアバスA380。広い機内を歩き回り、座席に寝そべり、機内食を楽しむ綾瀬さんは素顔のままに見えます。

「きっと、この人には嘘がないんだろうな」と、見る人に直感させてしまうのは天性の資質でしょう。その無邪気な笑顔に誘われて、亀の顔が描かれた新型機でハワイに行きたくなってきました。

明治安田生命  映画『サマーウォーズ』10周年タイアップCM

そのCMは、「拝啓、陣内栄(じんのうち さかえ)様」という呼びかけで始まり、「おばあちゃんは、私に本当のやさしさを教えてくれました」と続きます。

この「おばあちゃん」とは、公開から10年になるアニメ映画『サマーウォーズ』(細田守監督)に登場した、信州の旧家を率いるゴッドグランドマザーのこと。凛としたたたずまいが素敵でしたが、新人の「MYライフプランアドバイザー」である主人公にとっては、大切な“心の師匠”です。 

画面では、師匠から「やさしさ」を学ぼうとする彼女と、懐かしい映画のシーンが、気持ちよく交差していきます。しかし、やさしさの実践といっても、達人である師匠と同じである必要はないんですよね。

で、彼女は気づきます。「私は、私のやさしさを、がんばる」・・・それでいいのだ!

演じているのは、女性アイドルグループ「ベイビーレイズJAPAN」の元リーダー、「でんちゃん」こと傳谷英里香(でんや えりか)さんです。

現在、『世界ふしぎ発見!』(TBS系)のミステリーハンターなどで活躍していますが、この7月からは、深夜ドラマ『ランウェイ24』(朝日放送制作・テレビ朝日系)で連ドラ初出演にも挑戦しています。

でんちゃんの明るい笑顔と前向きな姿勢は、このCMの、未来へと向かうヒロインにぴったりだと思います。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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