４月８日　ニュージャージー州ニューアーク

プルデンシャルセンター

WBC世界ライト級挑戦者決定戦

シャクール・スティーブンソン（アメリカ／25歳／19-0, ９KOs）

12回戦

吉野修一郎（三迫／31歳／16-0, 12KOs）

　日本、東洋太平洋、WBOアジアパシフィックのライト級王座を保持した同級アジア最強の男、吉野修一郎がいよいよアメリカに進出する。

　本場リングで迎える挑戦者決定戦で対峙するのは生半可な相手ではない。スキル、スピード、守備力を武器にすでにフェザー、スーパーフェザー級の２階級を制覇したシャクール・スティーブンソン。無敗のサウスポーは、“近未来のパウンド・フォー・パウンド（PFP）キング”とまで目されるようになった強豪だ。

　これほどの難敵からの対戦オファーを吉野はなぜ承諾したのか。そして、大一番にどう臨み、難攻不落の技巧派をどう攻略しようとしているのか。決戦が間近に迫った４月６日、単独インタビューでその本音に迫った。

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KOかTKO。やはり倒して勝ちたい

――今回の対戦相手であるシャクールは、以前から未来の相手として意識していた選手だったんでしょうか？　

吉野修一郎（以下、SY） : いや、実はそんなことなかったんです。ただ、ずっと海外で試合したいなとは思っていました。中谷（正義）戦が終わってから、シャクールからオファーがあったときに、もう即決で「やりたい」と答えました。シャクールを意識し始めたのはそこからです。

――現役でも最高級に勝つのが難しいとされている相手ですが、迷いはなかったんでしょうか？

SY : 今のライト級はみんな強いですし、化け物揃いじゃないですか。そんな中、ここがチャンスだなと思ったんです。こんな機会はまたあることではないなと思いましたし、勝てば僕の方が得るものは大きいですよね。失うものはないので、そう考えてすぐにオファーを受けました。

――４団体統一王者のデビン・ヘイニー（アメリカ）はライト級では減量が苦しく、５月20日のワシル・ロマチェンコ（ウクライナ）戦後に上の階級に上げる可能性があります。そこで来るチャンスを待とうとは考えなかったんですね。

SY : 考えなかったです。

――シャクールの能力の中ですごいなと思う部分は？

SY : やはりスピードだったり、やりづらさ。サウスポーのやりづらさなどは試合を見てすごいなと思いました。（相手にやりづらいと感じさせるものを）持っていると思います。

――これまで似たタイプのアウトボクサーと対戦経験は？

SY : （2020年2月に対戦した）富岡樹くんですね。リーチがあって、足を使う選手に、ずっとアウトボクシングをされました。１ラウンドにダウンして、そこからポイントはずるずるいって、途中までは負けてました。でも最終的には（８回に）倒して勝ちました。

――シャクールに付け入る隙があるとすれば？

SY : やはり中間距離、接近戦かなと感じています。それに持ち込むことですね。

――相手が嫌なことをやると話していましたが、その答えは具体的には距離をつめて戦うことでしょうか？

SY : そうですね、あとは内緒でお願いします（笑）

――シャクールの過去の試合で参考にできる映像は

SY : オスカル・バルデス（メキシコ）戦とロブソン・コンセイソン（ブラジル）戦は見ました。（バルデスは）タイプ的にも似ているところがあると思うので。

――判定勝ちを目指すよりも、やはり勝つならKOでしょうか？

SY : KOかTKOですね。相手の地元で判定で勝つのは厳しいかなと思っているので、やはり倒して勝ちたいです。

“サムライ魂”を見て欲しい

――アメリカでも実績があった中谷選手に勝ったことで、吉野選手はアメリカでも名前が知られました。中谷戦は戦前からかなり自信はあったんでしょうか？

SY : それはありました。やる前から負けだろうと思っていたらボクサーとしては終わりですし、僕の中では周りに不利予想をされても、見てろ、勝つからなという気持ちがあったんです。僕は勝つと思ってやっていました。

――そう思えたのは、気持ちだけでなく、戦術的な基盤があったからですよね？

SY : あの試合では椎野さん（椎野大輝トレーナー）と一緒に考えた作戦がはまったんです。重要だったのは右（をもらう）のポジションにいないということと、あとは中谷さんの距離にいないこと。中谷さんは手が長いので、中途半端な距離にいるとパンチが飛んできます。もらったことはがなかったからわからなかったですが、やはりパンチ力はあったと思いますし。だから頭を振り、身体の移動だったりとか、ポジションチェンジとかをしながら攻撃をするという感じでした。結果、ああやって倒して勝てたんでよかったです。

――吉野選手はそうやって日本で実績を積み重ねて来られましたが、今回、会場のプルデンシャルセンターにはおそらく１万人以上のファンが集まると見られていて、その観客のほぼすべてがシャクールの応援でしょう。そういう雰囲気の中での戦いになることをどう感じていますか？

SY : そういったファンを自分の味方にするような試合がしたいですね。僕が良い攻防をして、攻めたりすれば、「おお、吉野すごいじゃん」と思ってもらえる可能性もあります。そうやって少しでも観客を味方につけられればいいなと思います。

――ところでホテルでシャクールと顔を合わせた印象は？

SY : 何だか紳士的な印象でしたね。もうちょっとオラついているというか、闘志むき出しで来るかなと思ったんですけど（笑）。２人で「おー！」みたいな感じで会って、ニコッと笑って、写真撮影もしました。

――海外で活躍するボクサーで好きだった選手は？

SY : テレンス・クロフォードです。（タイプ的には自分と）全然似てないですけど。

――勝ったら5月のヘイニー対ロマチェンコ戦の勝者と戦いたいというお話ですが、この試合ではどちらが勝つと思いますか？

SY : わからないですけど・・・・・・ヘイニーじゃないですかね、今の感じですと。

――４月22日に行われるジャーボンテイ・デービス（アメリカ）対ライアン・ガルシア（アメリカ）戦はいかがでしょう？

SY : うーん、ガルシアの感じがしますけどね。でもわからないです、こればっかりは。

――今回の試合に勝てば、そういったトップ選手たちの仲間入りができます。特に今戦はESPNで全米中継され、オンデマンドまで含めてかなり多くのファンが見るはずですが、本場のファンに吉野選手の何を見てもらいたいでしょうか？

SY : 日本人なんで、“サムライ魂”を見て欲しいですね。野球のWBCで日本が優勝しましたけど、ボクシングでも勝てばWBCのタイトル戦ができるので、盛り上げて、頑張りたいなと思っています。