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【親子で楽しく学ぶ夏休み耐震実験6】小麦粉とココアで断層実験をして、クッキーを楽しむ

福和伸夫名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長
日本損害保険協会のホームページより

小麦粉とココアで地盤を作り、横から押す

 小麦粉とココアを用意してください。そして、適当な透明な容器を見つけてください。容器の中に、小麦粉を平らに入れ、次にココア、さらに小麦粉、ココアと重ねてください。すると、いかにも、地盤の中のような地層ができます。そこに、カードのようなものをさし入れて、横からこの地層を押してみてください。

 日本列島では、フィリピン海プレートと太平洋プレートという2つの海のプレートと、ユーラシアプレートと北米プレートという2つの陸のプレートが図のように押し合っています。その結果、日本列島は東西から圧縮されています。これを再現した実験動画を見てください。

 動画のように、横から力を押していくと、平行に堆積した地層にひび割れが生じ、片側が盛り上がりながら、見事に断層ができます。これが、1995年阪神・淡路大震災や2016年熊本地震などを引き起こした活断層です。そして、もう一度、押してみてください。そうすると同じ場所の断層がさらにずれて、盛り上がりがどんどん大きくなります。こうやってできたのが六甲山地や養老山地のような平地に隣接する山です。断層がずれでできた山は壁のように切り立っています。山の麓に町があると、真下の町の夜景がキラキラと見えます。これが、六甲から楽しめる神戸の素晴らしい夜景を生み出してくれました。

 さて、実験が終わったら、ココアと小麦粉に砂糖を混ぜて、お母さんと一緒にクッキーを作ってみてください。良く勉強した後のおやつはとても美味しいと思います。

ホームページからPDFをダウンロードして色々作ってみよう

 さて、これまで6回にわたって、「親子で楽しく学ぶ耐震実験」を、動画を交えて紹介してきました。最後に、皆さんが自宅で色々な耐震実験ができるように、いくつかの教材をPDFの形でホームページに用意しました。いずれも厚紙に印刷すると、写真のような面白い模型を作ることができます。

日本損害保険協会より
日本損害保険協会より

トリップぶるる

ボックスぶるる

まるばつ棒

紙ぶるる

ボックスぶるるを使って揺れ実験

 これらの中で一番作るのが難しいのがボックスぶるるです。少し時間がかかりますが、一度、作ってみてください。四角の中に×印のブレースを入れるかどうかで、揺れ方が全く違うこと、四角のボックスを2つ積み上げて、その上に倒立振り子を乗せて揺すってみると、ブレースのないボックスの上の倒立振り子が大きく揺すぶられることがわかります。一度、動画を見ながら試してみてください。ブレースのあるボックスが固い地盤、ブレースのないボックスが軟弱な地盤、倒立振り子が建物を意味します。家を作るときには、軟弱な地盤は避けた方が良いことが一目瞭然です。

 トリップぶるるは、高さの異なる3つの倒立振り子です。揺すり方によって特定の倒立振り子だけが揺れることが分かります。

内閣府より
内閣府より

 ○×棒は前回の実験で利用したので、思い出せますよね。そして、紙ぶるるを使うと、ブレースの有無や屋根の重さによる建物の揺れ方の違いを学ぶことができます。14年前、小泉元首相と安倍首相(当時は官房長官)のお二人が、紙ぶるるをユサユサ揺すって、住宅の耐震化の大切さを体感してくれました。楽しく分かりやすければ、こんなに偉い人も一緒に勉強してくれます。

 これからの夏休み、三密を避けるため家にいることが多くなるかもしれません。今回紹介した教材を使って、楽しみながら勉強してみてください。

名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長

建築耐震工学や地震工学を専門にし、防災・減災の実践にも携わる。民間建設会社で勤務した後、名古屋大学に異動し、工学部、先端技術共同研究センター、大学院環境学研究科、減災連携研究センターで教鞭をとり、2022年3月に定年退職。行政の防災・減災活動に協力しつつ、防災教材の開発や出前講座を行い、災害被害軽減のための国民運動作りに勤しむ。減災を通して克災し地域ルネッサンスにつなげたいとの思いで、減災のためのシンクタンク・減災連携研究センターを設立し、アゴラ・減災館を建設した。著書に、「次の震災について本当のことを話してみよう。」(時事通信社)、「必ずくる震災で日本を終わらせないために。」(時事通信社)。

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