「あおり運転」で続出する逮捕者。万一のとき我が身を守るには?
東名高速で家族4人が死傷したあおり運転裁判。
2018年12月14日、横浜地裁は危険運転致死傷罪などに問われていた石橋和歩被告に懲役18年の実刑判決を言い渡しました。
危険運転致死傷罪の適用に関しては、法律家の間でも意見が分かれているようです。
今後、弁護側がどのような対応に出るのか、引き続き注目していきたいと思います。
さて、2017年にこの事件が発生してからというもの、メディアではあおり運転や悪質運転の問題がたびたび取り上げられ、全国各地でドライブレコーダーに録画された危険な映像が繰り返し放映されてきました。
しかし、性懲りもなく、こうした行為を行う悪質ドライバーはいるのですね。今年に入ってからも逮捕者が相次いでいます。
2018年3月に起こったあおり事件には驚かされました。
ポルシェに乗る25歳の男性がバイクを何キロも執拗に追い回し、幅寄せした挙句、接触、転倒させ、被害者のライダーは足を骨折するなどの重傷を負ったというのです。
自動車運転処罰法違反などの疑いで4月に逮捕された犯人は、なんと医師でした。
同年11月には、阪神高速で無免許の男性医師がポルシェでトラックに追突し、炎上。トラックの運転手(70)が死亡する事故が発生しました。
ポルシェを運転していたこの医師は、制限速度が時速60キロだったにもかかわらず、200キロ出していたとのことで、自動車運転死傷行為処罰法違反容疑で逮捕されました。
140キロオーバーで横を走られた周囲の車はどれほど恐怖を感じたことでしょう。
この事件は、まもなく危険運転致死傷罪でも追送検されるそうです。
また、11月13日、14日にも、驚くようなニュースが連続しています。
警察官を羽交い絞めにしたり、車を壊したり……、もうここまでくると、「あおり運転」だけでは済まず、道路上で暴行事件に近いことが起こっていると言えるでしょう。
車のハンドルをストレスのはけ口にされてはたまったものではありませんが、こうしたドライバーが、私たちのすぐ隣を走行しているかもしれないのだということを肝に銘じる必要があります。
■もしもバイク乗車中、他車にあおられたら……バイク乗りの私が思うこと
私はクルマもよく運転しますが、バイク乗りでもあります。ビッグバイクに乗っているときには、高速道路を使ってツーリングにもよく行きました。
バイクに乗っていると、命の危険を感じるようなシーンにたびたび遭遇します。こちらは真面目に走っているつもりでも、バイクというだけで邪魔者扱いし、敵対視してくるドライバーも少なくないのです。
冒頭で紹介したポルシェによる幅寄せ接触事件の報道を見たときは、我がことのように背筋が寒くなりました。
バイクの場合は車と違って身体がむき出しの生身ですから、他車による幅寄せや目前での車線変更、また、車の窓からのゴミの投げ捨てなどは命に関わります。
車を運転する方は、バイクへのそうした行為は、絶対にやめてください。
実際に、私の夫はツーリング中にあおってきた車を追いかけて並走しながら注意し、その車を停止させたところ、降りてきたドライバーに、バイク(1100刀)にまたがったままの状態でいきなり蹴られて転倒させられたことがありました。
すぐに警察を呼び、相手に謝罪させ、バイクの修理代も支払わせましたが、一歩間違えば大きな事故につながったかもしれません。
こうしたことが身近に起こっているだけに、私自身は、あおり運転の対処法に関して、ずっと前から大きな関心を持っていました。
今思えば、夫がビッグバイクでその車を追いかけたことも火に油を注ぐ結果になったのかもしれません。
悔しいことですが、やはり、あおられたからと言って、まともに相手にしてはいけないのです。
■とにかくあおりをする悪質運転車は、前に行かせる
万一、バイク乗車中、他車にあおられた場合は、小回りの利く2輪車の特性を生かして、細い道や、マンション、コンビニなどの駐車場に逃げ込んだり、Uターンしたりして、その車が追ってこられないよう、進行方向をすみやかに変えるべきです。
もし、高速道路で挙動のおかしな車に遭遇した場合は、とにかく車間を開けること、そして、左端に緊急退避をしてでも、そのクルマを前に行かせることです。
高速道路ではバックやUターンは不可能なので、前に行かせてしまえばとりあえず安心です。
もし出口があれば、目的地でなくてもいったん降りてしまいましょう。
近くにパーキングエリアがある場合は、できるだけすみやかにそこへ移動します。 駐車場には防犯カメラが設置されていることが多く、また、他人の目があれば相手の行動にも抑止力が働くはずです。
とはいえ、正直言って、こちらが750 ccクラス以上の大排気量バイクに乗っているときは、加速や速度では車に負けないので、一瞬、「追いかけて、ズバーッと抜き去ってやりたい!」という衝動に駆られることも……(苦笑)。
でも、これをやってしまうと、自分も「あおり運転」の仲間入りをしてしまいます。
繰り返しになりますが、とにかくあおられても無視をして、離れることが鉄則です。
■あおり運転をされても「無視」をして離れること
自分が車に乗っている場合も、基本的にはバイクと同じで、あおってくる車は無視するのが一番です。
相手が飲酒や薬物の影響で正常な思考ができなくなっている可能性もあります。
とにかく違法な行為を繰り返しながらあおってくるような車は、決してあおり返したりしないことです。
また、急激な減速で前方をふさがれたからと言って追い抜いたりせず、ハザードを点けながら車間を開け、後続車に危険を知らせつつ左車線に移動し、その車からすみやかに離れるべきです。
それでも万が一、タイミング悪く無理やり停止させられた場合は、内側からロックをかけましょう。絶対に挑発に乗ってドアや窓を開けてはいけません。
そして、危険行為が目に余り、車内で携帯電話が使用できる場合は、早めに警察に通報しましょう。
■あおり運転の真犯人が、何食わぬ顔で逃げている
私はこれまで、数多くの交通事故を取材してきました。被害者が死亡、または重傷を負うと、事故の瞬間を自分の言葉で語ることができません。その結果、真実が曲げられたまま事故処理されてしまう理不尽なケースが実際に起こっています。
今回の東名高速での死傷事故も、まさに、紙一重だったのではないでしょうか。
もし、追突したトラックにドライブレコーダーがついていなかったら、そして、もし、あおり運転に至るまでの一部始終を目撃していた、2人の娘さんが同乗していなければ……。
この事件の当事者の中に、石橋被告自体が存在していなかったかもしれません。
これは想像にすぎませんが、あおり運転が引き金で死亡事故が起きても、犯人が現場から何食わぬ顔で立ち去り、結果的に単独事故で処理されたケースが全国的に少なくないと見ています。
順法精神のないドライバーは、違反行為を繰り返す傾向があります。
本来は免許を与える段階で適性を厳しくチェックしてもらいたいものですが、こうしたドライバーは居住地域でも違法行為が目撃されている場合があるので、地域としての対策も大切です。
もし、危険行為や違反行為を発見したら、相手のナンバーを記憶するほか、ドライブレコーダーやビデオ、カメラなどで記録し、その証拠を添えて警察へ通報してください。
事故が発生する前の対策も今後は考えていく必要があるでしょう。