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責任能力認めて死刑判決の京アニ事件 改めてあらわになった刑事司法を巡る諸問題

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:ロイター/アフロ)

 京都アニメーションにおける放火殺人の容疑で起訴された男に対し、京都地裁は死刑判決を言い渡した。あらかじめ大量のガソリンなどを用意し、現場にまいて火をつけるといった犯行態様などから殺意や計画性は明らかだ。36人死亡、33人重軽傷という重大な結果を踏まえると、男の責任能力に問題がなかったということであれば、さすがに量刑は死刑以外にあり得ない。わが国に死刑制度が存在している以上、当然の判決と言えるだろう。一方で、捜査や裁判を通じ、改めて刑事司法を巡る様々な問題もあらわになった。

「防御権の侵害」か?

 この事件では、当初から男の責任能力の有無や程度が最大の争点になるとみられており、実際に公判でも真正面から争われた。ただ、捜査段階である2020年6月に京都地裁で勾留理由開示の手続が行われており、その際の法廷における男の受け答えの限りでは、少なくとも裁判を受ける能力はあるものと思われた。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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