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エンジェルスに加わった「もう一人の二刀流」は大谷翔平とローテーションに並ぶ!? それとも…

宇根夏樹ベースボール・ライター
マイケル・ロレンゼン Aug 22, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今オフ、シンシナティ・レッズからFAになったマイケル・ロレンゼンは、ロサンゼルス・エンジェルスと1年675万ドルの契約を交わした。

 ロレンゼンは、投手と外野手の二刀流選手だ。例えば、2019年の出場105試合は、投手と野手の両方としての出場が11試合、投手出場が62試合(打席に立った試合を含む)、野手出場は32試合だった。

 メジャーリーグ2年目の2016年以降は、ほとんどの登板時にブルペンから出てきたが、シンシナティ・エンクワイアラーのボビー・ナイテンゲールによると、ロレンゼンは先発復帰を望んでいるという。2015年は21先発で105.2イニングを投げ、防御率5.45(他にリリーフ6登板)ながら、大学時代の評価は高く、2013年のドラフトでレッズから1巡目・全体38位指名を受けた。

 一方、野手としては、5人目の外野手といったところだろう。エンジェルスは、ロレンゼンの他に4人の外野手、マイク・トラウトブランドン・マーシュジョー・アデルジャスティン・アップトンを擁する。

 来シーズン、ロレンゼンは「先発投手と控え野手」もしくは「リリーフ投手と控え野手」として、開幕を迎えることになりそうだ。

 前者の「先発投手と控え野手」は、2つのパターンが考えられる。ロレンゼンがスプリング・トレーニングで好投した場合と、そうではないものの、他の候補が脱落した場合だ。それに対し、ロレンゼン以外の6人がローテーションに並ぶ場合は、後者の「リリーフ投手と控え野手」となる。エンジェルスはノア・シンダーガードとも契約しているが、ロックアウトが終わってからも、さらに先発投手を加えようとするはずだ。

 ロレンゼンがローテーションに入れず、ブルペンに回ると、エンジェルスにとっては、やや高めの買い物になる。ちなみに、2年1700万ドルで入手したエアロン・ループの年俸は、2022年も2023年も750万ドルだ(2024年は同額の球団オプション。解約金は200万ドルなので、総額は750万ドル+750万ドル+200万ドル)。けれども、そうなったとしても、ロレンゼンの気持ちはともかく、エンジェルスにはプラスの面がある。

 まず、ローテーションには、ロレンゼンを凌ぐ投手が6人揃うということだ。また、ブルペンが向上する。リリーバーとして、ロレンゼンは悪くない成績を残してきた。今シーズンは故障もあり、29.0イニングで防御率5.59に終わったが、2016~20年はわずかな先発登板を含め、計331.0イニングで防御率3.48を記録している。ロレンゼンは、ロング・リリーフができるのに加え、先発投手が故障した際のスポット・スターターも務められる。

 大谷翔平の登板試合でDHを解除した際に生じる、大谷が降板した後の問題点も、ロレンゼンがいることで解消できる。投手に打順が回ってきても、それがロレンゼンであれば、代打を送らなくて済む。他の投手だと、続投させるには、その打席を無駄にする覚悟で打たせる必要がある。ロレンゼンの打撃成績は、通算147打席で打率.233と出塁率.282、7本塁打、OPS.710だ。野手として考えると、そう打っているわけではないが、2018年は54打席に立ち、打率.290を記録した。4本のホームランと1本の二塁打を打ち、シーズン9安打の過半数を長打が占めた。2019年には、5盗塁も記録している。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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