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ノート(42) 陸山会事件で起訴相当の議決 検察を敵に回すと怖いということ

前田恒彦元特捜部主任検事
(ペイレスイメージズ/アフロ)

~解脱編(14)

勾留14日目

接禁の解除

 朝、自殺防止房で刑務官から書類を手渡された。前日である10月4日の午前中に限り、妻との面会を認める、という裁判所の決定書の謄本であり、1日付けのものだった。

 実際、4日の午前中には、妻との間で勾留後初めての面会が実現していた。既に終わった面会に関する書類にほかならなかった。

 この決定書には、「その余の弁護人の申請については職権を発動しない」と記載されていた。「その余」とは、妻との間で日時を限定しない包括的な接禁の解除を求める、ということを意味していた。

 ところが、既に同じ4日の夕刻には、以後、妻との間で包括的に接禁を解除する、という裁判所の決定書のファックスを刑務官から見せられ、確認の指印を押していた。

 要するに、1日付けの決定の後、弁護人が再び4日付けで包括的な接禁の解除申請を出し、裁判所がこれを認めた、という流れだった。

人質司法と裁判所

 最初の申請で面会の日時を限定した裁判所が、なぜ2回目の申請で包括的な解除を認めたのか、到底理解できなかった。初回と2回目の申請には、その前提となる事情に何ら変化がなかったからだ。靴の上から足の裏を掻いているようで、じれったい思いだった。

 こうして、妻との間に限り、面会や手紙のやりとりが可能となった。最高検の取調べで元上司らの関与を認め、供述調書に次々とサインしたことに対する一種の見返りにほかならなかった。それでも、子どもたちや末期ガンで闘病中だった父を含め、妻以外の者との接禁はなおも続いた。

 人質司法の問題については、捜査当局が槍玉に挙げられており、確かに正鵠を射ている。しかし、他方でこれに加担し、漫然と勾留や接禁を付ける裁判官の姿勢も、糾弾され、改められてしかるべきではなかろうか。

陸山会事件で起訴相当

 いつもどおり、この日の昼休みにも、朝方に放送されたNHKラジオのニュース録音が流された。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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