弓弦羽神社にだんじり8基が大集結!大泣きした「人生最高の日」、涙の裏にあった継承の誓い【神戸市】
神戸の街を、だんじりが練り歩く季節が到来。灘近辺では走る電車内やホームなどからその姿を見かけることもあり、3日は御影クラッセ前で大盛り上がりの様子でした。
5月4日には、弓弦羽(ゆずるは)神社の五月大祭「地車祭」が開催。200年近くの歴史があるというお祭りですが、コロナ禍で3年間途切れて今年、念願の復活です。
この日は地車が8基集結して神社内で練り廻しをするということで、境内は多くの観客や関係者であふれていました。皆、祭りが始まるのを今か今かと待っている様子、高揚感がこちらまで伝わってくるようです。
さぁ、いよいよ各だんじり宮入(みやいり)の始まりです!
「とばせ、とばせー!」の掛け声で勢いよく走る地車。
動きが止まり緊迫した中、必死の想いが伝わってきます。
途切れることなく、次々と姿をあらわす地車たち。
この日の最後は弓場のだんじり、紙吹雪が会場を包みます。
それぞれに見事なだんじりの練り廻しが行われました。終わってから皆さん晴々とした表情、中には泣いている人の姿もあります。それだけ大事に受け継いできただんじり…想いがあふれて止まらないようです。
長年かけて温めてきたものがようやく形になり、それを仲間たちと分かち合えたことは、言葉にできないくらいの喜びだったのでしょう。見ていて感慨深いものがありました。
この地域では「だんじり」という文化を通して、さまざまな繋がりがつくられてきたのだそうです。地域と繋がり、世代を超えて一緒に打ち込めるものがある素晴らしさ。
宮入の最後を飾った、弓場の濱田さんがこのたび総括を終えるそうです。8年間という長い間のお役目。住人が少ない弓場地区において、だんじりを継続させるために数々の問題を乗り越えなければならなかったと濵田さんは語ります。
「これは継承やからね。自分の代で絶やすわけにはいかへんし。もう、なり手がおらんからね。今、子供たちを精一杯集めてるよ。そうしたら大人たちもついてきてくれるし」
「子供も、大人になったら役職やりたいとか総括なりたいとか。昔は男しかだんじり触ることができんかった。ここ10年くらいかな、女の子も乗れるようになったんは。もちろんその当時は大変やった。これはもう大きい決断やぞ、ホンマにええのかと。そやけど運行できへんかったらあかんやろ。伝統守れと言われても (なり手がいなければ) 衰退していくばっかりやしね。時代の流れもあるし、ええとか悪いとかは後になってから分かることや。存続せんとね」
「だんじりがあるからこうして集まってる。だんじりでコミュニティーが豊かになる、だから宝物やね。今はみんなでワイワイやって、最高やと思ってる。親御さんやおじいちゃんおばあちゃんもいてね」
この日は、夜になってからお祝いが開かれました。灘五郷酒所では鏡開きなども行われ、とても華やかに濵田さんを祝います。そんな中、先ほど聞いた話を思い出しました。
「(お宮で終わってから)大泣きしたんよ。みんな感動しましたって言うてくれてね。今日は正直、上手くいくと思ってなかったとこもあったからね、(人数も少ないし)難しいやろうと。だけど上手くいった、ホンマこんな嬉しいことないね」
「今日は最高の日や」と、濵田さん。長い人生の中で、はっきりとそう言い切れる日があるのって本当に素敵ですね。宝物だと思える、そんな存在がいつも身近にあることを羨ましくも思えます。
満月がだんじりを照らしていました。継承が途絶えない限りいつまでも、今夜の月のように、だんじりがこの街の光となって皆を導いてくれることでしょう。
宮入情報
5月21日に「東明八幡神社」にて東明のだんじり宮入、28日に「網敷天満神社」にて上石屋・浜石屋のだんじり宮入があるそうです。詳しくは東灘だんじり会サイト(外部リンク)、もしくは各神社まで。
東明八幡神社 TEL:078-857-7562
綱敷天満神社 TEL:078-841-1150