商品名を叫ぶことでCMをスキップできるソニーの発明について
”15 Terrifying Technology Patents That Gave Us Knots In Our Stomachs”(胃が痛くなるような恐怖の特許15件)という記事を読みました。立ったまま眠れる仮眠ボックスを超えるディストピア感のある特許を集めたネタ記事です(ネタ記事とは言え紹介されている特許は大手企業によるまともなものです)。記事は先日のものですが、紹介されている特許は大部昔に登録されたものが多いです。昔の特許とは言え、新たなアイデアを生み出すための素材となる可能性もありますので、何件か紹介していこうと思います。
1件目は、SCE(当時)による2009年に特許登録されたUS8246454です。発明の名称は”System for converting television commercials into interactive networked video games”(テレビCMをネットワークビデオゲームに変換するシステム)です。米国および欧州特許庁で特許化されています。権利は2030年まで存続する予定です。
タイトルが示すように、この特許のポイントは、テレビ番組のコマーシャル部分に、対話型のコンテンツ(たとえば、ミニゲーム)を挿入することにあります。ここで、ミニゲームをクリアーすることでCMをスキップできるようにすることができます。ミニゲームを行うことで画面を凝視することになりますので、CMの効果を上げると共に、CMをスキップすることでユーザーの体験も向上できるというのが狙いだと思いますが、実際にやるとかなりウザく、CMとして逆効果なのではと思います。
この特許が冒頭の記事にピックアップされた理由は、明細書に記載された実施例の1つにあります。タイトル画像を見るとわかりやすいですが、テレビ番組視聴中のCMで「CMをスキップしたければ”マクドナルド”と言ってください」との指示が出され、視聴者が「マクドナルド!」と叫んだことを音声認識で検知してCMをスキップします。相当ウザそうです。今、実際にこれをやったら大炎上必至でしょう。ところで、通常、こういう場合は架空のブランド名を使った方が良いのではないでしょうか(何となく、こういうのをやるとしたらマクドナルドなんだろうなあという印象が明細書作成者にあったのだと思いますが)。
さて、特許としての権利範囲は、この実施例よりかなり広く上位概念化されたものになっています(この実施例が最終的な特許権の範囲に入るかどうかは微妙なところです)。構成次第ですが、非対話型の映像コンテンツ(テレビ番組だけでなくストリーミングも含む)に対話型のコンテンツを挿入するようなシステムだと抵触する可能性が出てきます。
クレーム1の内容は以下のとおりです。
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