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立ったまま眠れる「仮眠ボックス」の特許出願について

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:特開2020-99444号公開公報

「職場で立ったまま一休み ”仮眠ボックス”北海道旭川の企業商品化へ」というニュースがありました。「仕事に疲れたら、繭のような”仮眠ボックス”で立ったまま一休み――。そんな商品が近くお目見えする。(中略)イトーキが出願中の”仮眠ボックス”の開放特許を活用するライセンス契約を14日に結んだ。」ということです。

そのイトーキの特許出願について調べてみました。公開番号は特開2020-99444、出願日は2018年12月10日です。発明の名称は「人体収納用構造体及び睡眠用筐体」とちょっと物々しいです。まだ、権利化はされていません(訂正:最初「出願審査請求すらされていません」と書いてましたが私の勘違いで、出願審査請求は昨年の12月にされています)。開放特許データベースに登録されており、積極的にライセンス許諾を行う旨の意思表示がされています。

特許の内容ですが、請求項1の記載は以下のとおりです(この内容で権利化されるか、もう少し限定がかかって権利化されるか、あるいは、拒絶になってしまうのかはまだわかりません)。なお、「人体収納用構造体」という言い回しが出てくる特許出願はこれ以外にはありません。

【請求項1】

人体を収納する収納空間を備え、前記収納空間に収納した前記人体を立位状態で支持するように構成されている人体収納用構造体であって、

前記収納空間に収納された前記人体の重量の少なくとも一部を下方から支持するように前記人体の臀部を支持する第一支持部と、

前記収納空間に収納された前記人体の上半身の水平方向における移動を阻止するように前記上半身を支持する第二支持部と、

前記収納空間に収納された前記人体の膝部が前方に移動することを阻止するように前記膝部を支持する第三支持部と、

を備える、人体収納用構造体。

ポイントは3つの支持部があることです。第一支持部(10)が臀部を、第二支持部(20)が上体を、第三支持部(30)が膝を支えます(図番はタイトル画像参照)。実際の製品ではもっとクッション部が用意されているものと思います。

発明の目的は「水平方向に広いスペースを必要とすることなく、人体を立位状態で支持することができる」ところにあります。横になって寝る場合と比較して仮眠効果がどうなのかについては、特許明細書には記載がありません。ただ、一般常識として、完全に横になって仮眠を取ると眠りが深くなり過ぎて逆効果になることは知られています(個人的経験からも明らか)ので、立って寝る方が意外と効果的なのかもしれません。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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