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また一誌休刊へ…女性向けコミック誌の部数動向をさぐる

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 入荷した新刊の連載をチェック中。女性向けコミック誌の動向は。(写真:アフロ)

・女性向けコミック誌の印刷証明付き部数(※)のトップは「BE・LOVE」。直近の2018年4月~6月期では8.3万部。「プチコミック」「Kiss」が続く。

・前期比では女性向けコミック誌においてはプラス誌は「フラワーズ」のみ。5%を超える下げ幅を示したのは3誌。

・前年同期比では女性向けコミック誌すべてがマイナス。5%を超えた下げ幅は8誌、10%以上の下げは6誌。

女性向けコミック誌のトップは「BE・LOVE」

日々進歩を見せる技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀無くされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は少年・男性向けコミック誌ばかりで無く、少女・女性向けのものにも及んでいる。今回はその雑誌のうち、女性向けコミック誌(少女向けのコンセプトで発刊されている雑誌群よりも対象年齢は上。大よそ大学生以上が対象)について、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数から、実情をさぐる。

まずは女性向けコミック誌の現状。最新データは2018年第2四半期(4月~6月)のもの。

↑ 印刷証明付き部数(女性向けコミック誌、万部)(2018年1月~3月期と2018年4月~6月期)
↑ 印刷証明付き部数(女性向けコミック誌、万部)(2018年1月~3月期と2018年4月~6月期)

トップの「BE・LOVE」(主に30代から40代向けレディースコミック誌)がやや突出、「プチコミック」「Kiss」が続く。トップ以外の部数は各誌でそれぞれ類似順位他誌と一定の差異があり、並べるときれいな傾斜ができていた。ただし第2位と第3位の雑誌はここしばらく激しいつばぜり合い、さらには順位の入れ替わりの動きを続けている。

今期では「YOU」が部数公開から脱落。すでに2018年10月15日発売の11月号で休刊することを発表している。今期でも発売は継続しているが、休刊が決定した以上部数公開の意義は無いとの判断によるものだろう。

↑ 印刷証明付き部数(YOU、部)
↑ 印刷証明付き部数(YOU、部)

報道によれば休刊の理由として「女性読者のコミックス志向、デジタル志向が進み、漫画雑誌離れに歯止めをかけることができませんでした」とある。時代の流れに乗ることができなかったということか。

他方、部数順位では下の方ではあるが「フラワーズ」が前期から大きく伸びているのが確認できる。これについては次の項目で解説する。

プラスは1誌…四半期変移から見た直近動向

次に前期と直近期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前期比)(2018年4月~6月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前期比)(2018年4月~6月期)

唯一のプラス計上誌「フラワーズ」だが、2018年5月発売の7月号から「ポーの一族」の新シリーズ「ポーの一族 ユニコーン」が始まり、その号では表紙も飾ったこともあり、大きな部数飛躍を果たしている。また8月号では「海街diary」が最終回を迎えており、こちらも部数けん引に一躍買ったものと思われる。

↑ 印刷証明付き部数(フラワーズ、部)
↑ 印刷証明付き部数(フラワーズ、部)

「フラワーズ」はここ数年の間においては部数を3万3000部でほぼ固定した状態となっており、「ポーの一族 春の夢」の登場による特需での部数上昇(読み切りと短期集中連載)がきれいな形で表れている。今期の部数は通常部数から7000部ほど上乗せした形。前回の特需と比べるとやや弱い動きなのが気になるところ。

季節変動を考慮しなくて済む前年同月比では

続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変移を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前年同期比)(2018年4月~6月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前年同期比)(2018年4月~6月期)

「フラワーズ」は前期比では大幅なプラスだったが、前年同期比では誤差領域を超えた下げ。「ポーの一族 春の夢」特需発生時の部数と比べると、今回の「ポーの一族 ユニコーン」の特需はやや弱めであることが改めて分かる。一方で1割以上の下げ幅は6誌、2割超えの下げ幅も「Cookie」が計上してしまっている。あまりよい状態とは言い難い。

「進撃の巨人」や「おそ松さん」のような盛り上がりを複数タイトルで意図的に起こせるようになれば、それこそ全盛期の週刊少年ジャンプのような活性化も不可能では無い。最近ならば「ポーの一族」の新連載が好例。そのためには幅広い層へ訴えかける、購入動機をかきたてる作品との連動、あるいは発掘、さらには創生が欠かせまい。

他方、他ジャンルの記事でも言及しているが、多くの雑誌で電子化が行われており、電子版に読者の一部を奪われ、結果として紙媒体としての印刷部数が減退している可能性は否定できない。

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※印刷証明付き部数

該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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