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Jリーグ運命の後半戦へ!うなる真夏の補強セブン

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

東京五輪が終わり、いよいよJリーグが再開します。電撃加入、意外な放出・・・いろいろな移籍が話題になっていますが、後半戦で間違いなくハマりそうな7人の補強を筆者の独断で選びました。

中村駿(アビスパ福岡 ←湘南ベルマーレ)

山形からの加入で即戦力として期待された湘南ではハマりきらなかったところもあるが、正確な組み立てからの攻撃参加は十分にJ1で通用する。福岡は長谷部茂利監督が攻守に高い強度を求める割に、中盤の層が薄い問題を抱えており、特にこの夏場から秋にかけての戦いを考えると、活躍しないことの方が考えにくい。

期待したいのは湘南ではポジションの事情もあり、鳴りを潜めていたミドルシュートで、セットプレーのキッカーとしても本領を発揮するチャンスがあるのではないか。

金井貢史(FC琉球 ←ヴァンフォーレ甲府)

DFながら攻撃センスに優れた選手であり、ステルス性の高い攻め上がりは「NSK(なぜそこに金井)」の異名もとるほど。琉球はパスワークと個人のアイデアを駆使した攻撃をカラーとしているが、二巡目で対戦相手に対策されてくる中で、もう1アクセント欲しかったのも事実だ。

樋口靖洋の教え子でもある金井に関して指揮官はサッカーを知っていることに信頼を置いている。浦和レッズから育成型期限付き移籍で武田英寿も面白いが、ディフェンスラインにけが人が出ていることもあり、即効性としては間違いない。また性格が明るく、沖縄の風土も合っているはず。昇格争いに生き残って行く中でムードメーカーになっていきそうだ。

平野佑一(浦和レッズ ←水戸ホーリーホック)

夏のJ2からJ1の移籍はフィットが難しいところもあるが、この選手に関してはあまり心配がない。浦和は酒井宏樹や江坂任、ショルツと言った、いわゆるビッグネームの補強が目立つ中で、見るべきところを見ていることが分かる。中盤の底から常にルックアップして組み立てられるプレーメーカーだ。

前めの選手たちがポジションを動かしながらスペースを作り、使っていくスタイルを推し進めるのに的確なタレント。本来はボランチではない小泉佳穂を攻撃的なポジションに専念させられるメリットもある。ビジョンと技術に疑いの余地はなく、あとはJ1ならではの攻守の強度にどれだけ早く順応するかにかかっている。

樺山諒乃介(モンテディオ山形 ←横浜F・マリノス)

J2発パリ行き!後半戦でブレイク期待の8人+」の記事でも紹介したが、山形とすれば本格的に昇格をしていくための”ラストピース”になりうるサイドアタッカーだ。4ー4ー2をベースにしながら可変性の高いパスワークで相手を崩していくチームにあって、やや足りなかったのは個人でディフェンスを剥がすプレーだった。

サイドは局面で1対1が生じるシーンも多い。そこで高卒ルーキーながら、ドリブルにかけてはJ1でも通用していた樺山の加入は大きな武器になる。逆に樺山にとってはオフのポジショニングや切り替え時の守備に課題があり、横浜F・マリノスのコーチだったクラモフスキー監督のもとで学べれば、マリノスに復帰してもそのまま発揮できる。

まあしくウィンウィンの関係だ。育成型なので、マリノスがわに何か緊急事態が生じたら予定より早く返す事態になりうるが、パリ五輪で主翼を担いうるタレントでもあるので、実りある半年間にしてもらいたい。

福森直也(ベガルタ仙台 ←清水エスパルス)

大分、清水となかなか出番に恵まれなかったが、仙台では主力のセンターバックとして残留に導く存在になる期待はかなりある。守備での強さもさることながら、後ろから攻撃を組み立てられることが大きい。

またベガルタは手倉森誠監督がやってきた当初、守備のテコ入れが必要だったこともあり、攻撃時間は短い中で前輪駆動になりがちだった。相手の攻撃を一度受け止めても、いざ攻撃というところでファーストパスが相手の守備にかかり、いわゆるカウンターのカウンターを受けてしまうケースも見られる。

「フック」の愛称通り、攻撃のフックになりうる存在。左利きのセンターバックである福森が加わることで、ビルドアップに幅を付けることができ、中途半端なボールロストを減らし、高い位置に起点を作りやすくなるはず。左サイドバックも可能な選手だが、特性を考えればセンターバックでの起用がメインになるのが理想だ。

椿直起(ギラヴァンツ北九州 ←横浜F・マリノス)

チャンスメークとフィニッシュの両面で違いを生み出せる気鋭のサイドアタッカー。いわゆる”出戻り”移籍になるが、最も計算できる補強とも言える。マリノスからの期限付き移籍で2シーズン在籍し、J2昇格、さらに周囲を驚かせる躍進に貢献した。そこからマリノスの兄弟クラブでもあるオーストラリアのメルボルン・シティで15試合に出場。貴重な経験をして帰国した。

ジョーカーのような起用法であれば、現在のマリノスでも十分戦力になると考えられるが、前半戦に成績が伸びず、J2の残留争いに巻き込まれている北九州からすれば、まさしく”救世主”だ。椿としては活躍して当たり前、やはり前回の在籍時より数字でも内容でも圧倒的な存在になっていくことが期待される。

和田昌士(いわてグルージャ盛岡 ←SC相模原)

首位から勝ち点7差に9クラブがひしめく、ある意味でJ1とJ2より上位戦線が混沌としているJ3。なかなかチームをガラッと好転させるタレントの補強は難しいリーグにあって、現在6位の岩手が決定的なチャンスメーカーを加えたことはライバルにとって大きな脅威だ。

中盤からアイデアを出して絡めるタイプの選手であり、相模原でもその才能は随所に発揮されていたが、岩手ではさらに攻撃のタクトを握る存在としての活躍が期待される。おそらく3ー4ー2ー1のシャドーに入るが、前線のブレンネルや左サイドの中村太亮を生かしながら、機を見てシュートを狙っていく基本イメージか。非凡な業師の加入で、モレラトなどのフィニッシュワークもさらに引き出されるかもしれない。

そのほか、首位のカターレ富山はJ2の甲府と長崎からMF中山陸、DF鹿山拓真が加入、イスマイラをJ2首位の京都に引き抜かれた2位の福島ユナイテッドはJ1札幌からガブリエルが入り、”穴埋め”以上の補強を成功させた。3位の岐阜には金沢から窪田稜、水戸から得点センスのあるFW深堀隼平が加入している。

J3の再開は8月28日とJ1・J2より少し遅いが、各クラブの補強がどう結果に出るのか注目だ。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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