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「おじー、おばーを守らなければ」竹富島や小浜島など八重山諸島、コロナから島民を守る為フェリー全便運休

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
竹富島の観光の名物である水牛車(2018年、筆者撮影)

 沖縄の石垣島からフェリーで訪れることができる竹富島、小浜島、西表島、波照間島などの八重山諸島。5月1日から5月6日までのゴールデンウィーク期間中、唯一の移動手段であるフェリーの全便運休とした。

 全便運休の大きな理由は、石垣島で新型コロナウイルスが発生しているなかで、医療機関が整っていない八重山諸島の島(沖縄県八重山郡竹富町)で絶対に新型コロナウイルスの感染者を出さないために今回のような決断となった。竹富町内の島の多くが、診療所が1つのみであり(西表島は2つ)、基本的には医師と看護師各1名で診療しているそうだ。

波照間ブルーとも言われている波照間島のビーチ(2015年、筆者撮影)
波照間ブルーとも言われている波照間島のビーチ(2015年、筆者撮影)

3月はコロナ疎開で都会から多くの人が石垣島や竹富島などへ

 3月、新型コロナウイルスの国内感染者が増え始めた頃に、「コロナ疎開」を目的に東京や大阪の人が八重山諸島の玄関口となる石垣島に多く来島し、石垣島内ではレンタカーが満車になった。また、竹富島や小浜島などにも観光客が訪れるなど、都会の人が増えることで、これらの人が新型コロナウイルスを運んで来ないか島民は不安でいっぱいだったそうだ。

八重山諸島唯一で日本最南端のゴルフ場が小浜島にあり、普段は観光客も多く訪れている(小浜島カントリークラブ、筆者撮影)
八重山諸島唯一で日本最南端のゴルフ場が小浜島にあり、普段は観光客も多く訪れている(小浜島カントリークラブ、筆者撮影)

石垣島では4月13日に初めて感染者が出た

 緊急事態宣言が出る4月6日に石垣市の中山義隆市長は沖縄県外から石垣島を訪れないように強く要請した。しかしながら、4月13日に石垣島で初めてとなる新型コロナウイルスの感染者が確認された。

 やはり地元が危惧していた通り、都心で無症状で感染していた人が石垣島を訪れ、飲食店で食事したことにより石垣市で感染者が出てしまったのだ。

 石垣島がある石垣市は、県立八重山病院が唯一の新型コロナウイルス感染者に対応した病院となっているが、八重山諸島では石垣島以外にはコロナに対応する病院がなく、万が一感染した場合、大きな問題となってしまう。

東京や大阪などからの直行便はGW期間中、全便運休

 本来であれば多くの人が訪れる予定だったゴールデンウィーク、羽田、成田、関西、中部、福岡からの石垣島への直行便は全て運休となり、那覇からの便も一日数便程度に限られている。それでも都会から訪れる人を完全にシャットアウトすることはできず、これらの飛行機に乗ってきた人が竹富島や西表島などへ観光で訪れる可能性を完全に否定できないことから、ゴールデンウィーク期間中、竹富町は石垣港から出航するフェリーの全便欠航となった。

繁忙期においては、ANAは羽田~石垣線に405人乗りのボーイング777-2000型機を投入し、2019年夏もほぼ満席の状況が続いていた(2018年8月、石垣空港にて筆者撮影)
繁忙期においては、ANAは羽田~石垣線に405人乗りのボーイング777-2000型機を投入し、2019年夏もほぼ満席の状況が続いていた(2018年8月、石垣空港にて筆者撮影)

島民は臨時チャーター船で往来可能

 島民の移動は、「竹富町臨時チャーター便」のフェリーを運航することで確保している。島民(竹富町在住者)が所持する「町民離島割引カード」を提示するか、 竹富町内で働いていたり、介護等で乗船する必要がある場合に竹富町が発行する「乗船許可証」を所持する場合に限り利用できる。石垣港~竹富島、石垣港~小浜島などでは1日2往復、石垣港~波照間島などでは1日1往復が運航されている。

八重山諸島へのフェリーが発着する石垣港離島ターミナル(2018年7月、筆者撮影)
八重山諸島へのフェリーが発着する石垣港離島ターミナル(2018年7月、筆者撮影)

島民からは「おじー、おばーをコロナから守らなければ」

 取材した竹富島で生活する男性は「島民からは東京や大阪などから観光客が来ることを強く拒否している」と話す。万が一、新型コロナウイルスの感染者が出てしまうと医療崩壊になってしまうので、絶対に避けたいという声が強く、若い島民からは「おじー、おばーを(新型コロナウイルスから)守らなければならない」という高齢者を守ろうという一体感が今、生まれているとこの男性は話す。

島民の買い物などについては

 竹富島で生活するこの男性は、週に1回のペースで石垣島へ買い物に出かけているとのことだが、竹富島では現在、売店が2店と一部の食堂がテイクアウトで営業しており、島民の生活を支えている。しかし、フェリーの本数が大幅に減少していることで今までのように自由に買い物ができないことから、竹富町では石垣島のお店と連携し、「町民買い物支援サービス事業」をスタートさせた。事前に対象となるお店に電話かFAXすることで船に搭載してもらえ、到着する港で受取り、その後お店の口座に代金を振り込みという流れになっている。

 その他にも島民が石垣島で買い物する場合に船の減便で日帰りができない場合において、石垣島での宿泊代を7500円を上限に竹富町が負担するなどの取り組みをしている。

船しかない離島では都会からの流入を遮断できる

 空港がある石垣島では、完全に都心からの人をシャットアウトすることは、飛行機の便が運航されている限り難しい。しかしながら、船しか交通手段がない離島においては、フェリーの定期便を全便運休にして、住民のためだけの臨時船を運航することで、外部からの流入を遮断することが可能となる。

 現在のところ、石垣島を除く八重山諸島の島での感染者は幸いにも出ていない。医療体制が整っていない島などにおいては今回の方法が感染者を生まない最適な方法だったと言ってもいいだろう。

石垣島へ戻る観光客で混雑していた竹富港。近年はクルーズ船などで石垣島を訪れる外国人観光客も竹富島に多く訪れるようになっていた(2018年7月、筆者撮影)
石垣島へ戻る観光客で混雑していた竹富港。近年はクルーズ船などで石垣島を訪れる外国人観光客も竹富島に多く訪れるようになっていた(2018年7月、筆者撮影)

コロナ収束後には訪れて欲しいと竹富町は発信

 竹富町では町民以外へ向けて「この事態が収拾し、皆様を笑顔で迎え入れる準備が整いましたら、ぜひまた豊かな自然、芸能文化を満喫できる竹富町の島々へお越しください」というメッセージを発信している。

 昨年(2019年)の竹富町の観光客数は102万人を数える。特に竹富島は51万人が訪れており、次いで西表島が29万人、小浜島が15万人となっている。また日本最南端の波照間島も3万8000人が来島している。コロナが収束後、自然豊かで、綺麗なビーチ、そして星空も綺麗な八重山諸島に来て欲しいと呼びかけている。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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