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シリア:フール・キャンプにおけるイスラーム国の「最重要指導者」と目されるイラク人が拘束される

青山弘之東京外国語大学 教授
ANHA、2021年4月5日

クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)に近いハーワール・ネット(ANHA)によると、シリア民主軍に所属するテロ撲滅部隊(Yekîneyên Antî Teror‏、YAT)は4月5日、ハサカ県東北部にあるフール・キャンプ(「アルホール難民キャンプ」とも呼ばれる)で、イスラーム国の「最重要指導者」と目される男性1人を拘束した。

フール・キャンプでは3月28日、北・東シリア自治局内務治安部隊(アサーイシュ)が、シリア民主軍所属組織とともに、イスラーム国のセル摘発と治安回復を目的とした「人道と治安」作戦を開始し、4月2日までにセル責任者、キャンプ内での殺人事件の首謀者ら20人を含む容疑者125人を拘束し、作戦の第1段階を完了していた(「シリアのクルド民族主義組織がイスラーム国メンバーの家族を収容するフール・キャンプで治安回復作戦を開始」を参照)。

シリア民主軍は、PYDが創設した民兵組織、人民防衛隊(Yekîneyên Parastina Gel、YPG)を主体とする武装組織。米国が主導する有志連合の支援を受けて、2014年半ば以降、イスラーム国の支配下にあったユーフラテス川東岸地域(ジャズィーラ地域)のほとんどを手中に収めた。シリア民主軍の制圧地の自治を担うのが、北・東シリア自治局である。

4月5日に拘束された「最重要指導者」の名は、アフマド・ハーシア(通称アブー・ハーリド)。ハーシア氏は1992年生まれで、イラクのアンバール県出身。YATは「人道と治安」作戦によって拘束した容疑者に対する聴取から得た情報をもとに、キャンプ内の居場所を突き止め、拘束に至った。

フール・キャンプの概況

フール・キャンプは現在、北・東シリア自治局傘下のキャンプ管理局によって管理・運営されており、60,351人(16,404世帯)を収容している。

その内訳は、イラク難民30,738人(8,256世帯)、シリア人国内避難民(IDPs)21,058人(5,619世帯)、イスラーム国の外国人メンバーの家族(女性、子供)8,555人(2,529世帯)。

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリアの友ネットワーク@Japan(シリとも、旧サダーカ・イニシアチブ https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』など。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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