日本のキャッシュレス 普及の鍵は「デビットカード」?
クレジットカードとデビットカードはどちらが多く使われているのか、Visaによれば2021年にその比率は逆転し、デビットカードのほうが多く使われているといいます。日本におけるキャッシュレス普及の鍵になるのでしょうか。
ビザ・ワールドワイド・ジャパンによれば、2021年には世界の「Visa取扱高」の52%をデビットカードが占めたとのことです。2019年にはクレジットカードが55%と過半数を占めていましたが、比率が逆転しています。取引件数ではデビットが66%と、さらに多く使われているといいます。
日本のデビットカードとしては「J-Debit」が先行したものの、一部の加盟店でしか使えないなど不便なものでした。しかし最近ではVisaなどの国際ブランドがついた「ブランドデビット」を採用する銀行が増えており、デビット一体型のキャッシュカードをよく見かけます。
とはいえ日本におけるVisaデビットカードの発行枚数は1770万枚と少なく、Visa以外の国際ブランドを考慮しても、クレジットカードの2.5億枚と比べて大きな差があります。国内で実施した調査では、利用頻度が高い決済手段としてクレジットカードを挙げた人は42.9%に対し、デビットカードは4.3%にとどまっています。
こうした発行枚数の違いについて、Visaによればクレジットカードは1人が2〜3枚を使い分ける傾向があるのに対し、デビットカードは給与振込のメイン口座に紐付けた1枚を使う傾向にあるとのこと。日本でのVisaデビットの取扱高はここ10年で20倍に伸びているものの、絶対額としてはまだ小さいとみられます。
その背景についてVisaは、「日本のブランドデビットは2000年後半に始まり、米国とは20年以上の違いがある。法的な理由もあるが、このスタートの差が普及に大きく関わっている」(ビザ・ワールドワイド・ジャパン コンシューマーソリューションズ部長 寺尾林人氏)と説明しています。
筆者も銀行のキャッシュカードを兼ねたVisaデビットカードを何枚か持っているものの、クレジットカードとまったく同じように使えるわけではなく、一部に非対応の店舗やサービスがあります。銀行のメンテナンス時間中は使えないなど、デビットだけでは不安な場面は残っている印象です。
キャッシュレス普及の鍵はデビットカード?
日本のキャッシュレス決済の比率は2020年時点で約3割とされています。その内訳として、クレジットカードや電子マネー決済は十分に普及しており、諸外国と比べて遅れているのはデビットカードである、との見方があります。
一方で、日本のクレジットカード決済は「翌月一括払い」が多く、リボ払いは少ないという特徴があります。このことから、日本のクレジットカードは海外のデビットカードに近い使われ方をしているとの見方もあります。
Visaは、後者のような見方を認めつつも、「まだキャッシュレス比率は3割程度であり、クレカが全て代替できているとは言えないのではないか。日本には現金主義、安全主義なところがあり、そうした方々に選択肢を提供していきたい」(寺尾氏)と語っています。
クレジットとデビットを両方推進する千葉銀行では、「現金払いや即時払いを好む方々は多い。デビットがまだ浸透しない間に、現金派の方々でプリペイドのQRコードや電子マネー決済の利用が伸びている」(執行役員 カード事業部長の俣木洋一氏)との見方を示しています。