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雪国新潟の現状 高齢者世帯では人手が足りない家庭も 命にかかわる問題なので来るなら家族でよく相談して

斎藤秀俊水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授
積雪と降雪のホワイトアウトで道路が見えない(9日9時11分差し替え、筆者撮影)

 流石の雪国の人もつらくなってきています。天気予報によると、この3連休は新潟県の上越・中越地方、福井県などの降雪が多いようです。新潟県長岡市では1月8日朝からの降り始めで9日朝現在80 cmくらいの積雪が車の屋根に見られます。今年は新型コロナの影響で、東京などで生活している家族の手を借りにくい状況です。でも、大雪の除雪には命を懸けなければなりません。特に今シーズンは多くのお年寄りがすでに犠牲になっています。雪国に実家があるなら、よく相談して除雪救援が不要不急に当たるかどうか各家ごとの状況で判断されるのも一考かと思います。(1月9日朝現在、さらにひどくなっているので記事の一部を修正しました。)

新潟県中越地方の現状

 1月8日午後の中越地方の現状を写真でお知らせします。かなりの大雪であちこち出ることができないので、出張帰りの新幹線やバスの車内から撮影しました。

 図1は上越新幹線浦佐駅周辺です。新潟県内でも豪雪地帯に入ります。かなりの積雪量であることがわかります。雪をかぶった屋根はたぶん1月6日までに一度雪を下ろしているはずなので、70 cmくらいの積雪が昨日と今日とであったと思われます。ただ、屋根に雪がない住宅もだいぶあります。これらは落雪式住宅で、降った雪がある程度積雪すると地面に自然落下します。詳細については、筆者記事「普及が進んだ落雪式住宅 雪の人的被害から身を守るには」をご覧ください。

図1 上越新幹線浦佐駅周辺の住宅の様子。屋根に雪がない家が目立つ(筆者撮影)
図1 上越新幹線浦佐駅周辺の住宅の様子。屋根に雪がない家が目立つ(筆者撮影)

 図2は上の写真の約15分後の上越新幹線長岡駅周辺です。屋根に積もった雪の量は浦佐駅周辺よりは少なめですが、50 cmほど積もっています。こちらでは左の1軒の住宅だけが落雪式のようです。実際に、同じ中越地方でも長岡市内ではあまり落雪式住宅をみることがありませんが、長岡市よりも南の方向、つまり山沿いになるほど落雪式住宅が目立つようになります。当然、山沿いの方が降る雪の量が多くなるからです。

図2 上越新幹線長岡駅周辺の住宅の様子。落雪式は左の1軒だけ(筆者撮影)
図2 上越新幹線長岡駅周辺の住宅の様子。落雪式は左の1軒だけ(筆者撮影)

 今回の天気予報では、長岡市付近のやや平野部から上越地方にかけての降雪予想が多いようです。そうなると、この3連休、心配なのは除雪中の事故です。今年は、特に高齢者世帯での人手不足が深刻で、守れる命が守れていません。

すでに7人が犠牲に

 新潟県が令和3年1月8日17時に発表した雪による被害状況によれば、今シーズンはすでに除雪中の事故を中心に7人が命を落としています。そのうち5人が65歳以上の高齢者です。特徴を次に簡単にまとめました。落雪式住宅の普及している地域、つまり十日町市、魚沼市、南魚沼市などの県内有数の豪雪地帯で、今年の特徴が表れています。

 3人の方は車庫の屋根の下の雪に埋もれていた状態で発見されています。どういうことかというと、車庫は屋根が低くて雪に埋まりやすいので、こまめに屋根の下の雪をどける(片付け)をしなければなりません。雪の片付けをしているうちに落雪などの原因で埋まり、窒息したものです。自宅の大屋根は大概落雪式なので、落雪に巻き込まれないように注意するのですが、車庫や小屋ではつい気が緩みます。

 池や用水路で溺れた方が2人です。落雪式住宅では、次から次へと落ちてくる雪の片付けをしなければなりません。消雪のためには、自宅の池や近くの水路に雪を投げ入れます。その時に何らかの原因で池や水路に落ちます。水温はほぼゼロ度ですから、落ちたら短時間のうちに容態が悪くなります。意識を失えば溺れます。

 当然、屋根からの転落でケガをする人が除雪作業中の事故では最も多いのですが、転落した下の地面に雪が積もっていれば、何とか命は守ることができます。だから、埋まる、流されるの事故の致死率がどうしても高く出てしまいます。

人手が足りない

 除雪中の事故から生還するためには、事故の早期発見が最も効果的です。そのため、雪国の現場では「ひとりでは作業しない」が合言葉になっています。

 ただそれは、人手が確保できる時のことであって、多くの高齢者世帯では、特に今年は新型コロナウイルス感染防止策のためにうまくいっていません。大概は、正月休みや成人の日を含んだ連休などの最も降雪が激しい時期に休みを使って、東京などに就職のために実家を離れた子供たちが帰ってきて、除雪を手伝い、その後においしい夕飯を囲んで酒を酌み交わすのが多くの家庭の文化です。

 では、今シーズンはどうするのか。この連休は大雪の中どうするのか。まずは町内で何とかします。高齢者の自宅の周辺の人たちで協力しながら、せめても班ごとに見守りながら、除雪作業を行うことでしょうか。

 とは言っても、東京などにいる家族はやはり心配です。そのような場合には、当然家族でしっかりと話しをしながらだということを前提に、次のような対策をして実家を訪れることはあり得ます。

 自家用車に長靴、防寒着、スコップ、食料などを積んで雪国の実家に戻り、玄関先にあるスノーダンプを装備に加えて除雪作業をします。当然複数人は必要です。そして、作業が終わったら、家屋に入らず自家用車でそのまま帰宅します。もちろん、除雪作業を見守るだけでも、命が守れます。

まとめ

 そうこうしているうちに、今も雪がどんどん積もっています。筆者の職場は本日は大雪で休業となっております。車が構内に入ることができません。休業で除雪をしなかったので、50 cmくらいの新雪で道路が埋まっているからです。

 もし、どうしても実家の雪堀りに来られるのであれば、どうか運転には気を付けてください。本日は、大雪が予想されている地域の在来線はすべてストップしています。でも、越後交通の市内線のバスは頑張って運行しています。流石です。

追加情報1(1月8日22時)

JR東日本新潟支社は8日、大雪が見込まれるとして、新潟支社管内の在来線の全区間で9日の運転を始発から終日見合わせると発表した。(新潟日報モア 2021/01/08 17:47

追加情報2(1月9日9時)

 さらに積雪が増し、長岡市内の道路の除雪が遅れ、どこでもカバー写真のようにホワイトアウトして道がよくわからなくなっています。多くの人は外出は控えていますが、どうしても運転するなら、ライト点灯で自分の車の存在をアピールしなければなりません。

水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 jimu@uitemate.jp

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