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藤井聡太七段、菅井八段の振り飛車を撃破!勝利をたぐり寄せた渾身の端攻め

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
記事中の画像作成:筆者

 10日、第61期王位戦挑戦者決定リーグ白組、菅井竜也八段(27)―藤井聡太七段(17)が行われ、藤井七段が112手で勝利した。

 ずっと互角に近い展開が続く中、藤井七段が強烈な端攻めを決めて終盤に抜け出した一戦だった。

 これで藤井七段は木村一基王位(46)への挑戦権獲得まであと2勝となった。

渾身の端攻め

対局開始前のリーグ表
対局開始前のリーグ表

 この対局は3戦全勝同士の対戦で、リーグ優勝を占う上でも大きな一番といえる。

 先週火曜日にも顔をあわせたこの両者。その一番も棋聖戦決勝トーナメントの準々決勝と大きな一番で、立て続けに大きな勝負を争うことになった。

 菅井八段の三間飛車から、互いに美濃囲いに組んで押し引きのある長い中盤戦が続いた一局。

 せめぎ合いの中、藤井七段が端攻めを開始したところが勝負所だった。

 藤井七段渾身の端攻めに、菅井八段が対応を誤ったようだ。

 ここまで完璧に近い指しまわしで進めてきた菅井八段に出た唯一のミス。

 その一瞬のスキをついて藤井七段は大駒を捨てて端へ勢力を集中させた。

 美濃囲いにおいて端は大きな弱点である。一気呵成の攻めに菅井八段といえども、受ける術はなかった。

 藤井七段の端攻めは、将棋の理として正しかったかどうかは微妙なところもある。

 ただ渾身の端攻めが菅井八段のミスを誘い、結果的に勝因となった。

 

優勝争い

 リーグの優勝争いを改めて整理しておこう。

優勝争いに関係する棋士のみ抜粋
優勝争いに関係する棋士のみ抜粋

 藤井七段は最終戦を勝てば文句なしのリーグ優勝だ。

 もし藤井七段が最終戦で敗れた場合、羽生善治九段(49)ー菅井八段戦の勝者とのプレーオフとなる。

 そしてリーグ優勝を果たすと、もう一つのリーグで優勝した棋士との挑戦者決定戦を行う

 そこで首位を走るのは永瀬拓矢二冠(27)。そしてそれを追うのは豊島将之竜王・名人(29)。

 どちらが来ても最強の相手とタイトル挑戦をかけて戦うことになる。

挑戦まであと2勝

ベスト4が出揃った棋聖戦
ベスト4が出揃った棋聖戦

 棋聖戦でも藤井七段はタイトル挑戦まであと2勝としている。

 昨日の結果により、決勝トーナメント準決勝の相手が佐藤天彦九段(32)に決まった。

 逆の山では永瀬二冠が準決勝までコマを進めている。

 王位戦、棋聖戦、ともに永瀬二冠との挑戦者決定戦となる可能性もありそうだ。

緊急事態宣言を受けての対応(日本将棋連盟HPより)

 将棋連盟の方針により、藤井七段の対局は少なくとも5月6日までは行われない

 王位戦、棋聖戦ともに佳境を迎えたところで小休止となる。

 藤井七段のタイトル初挑戦なるか。

 その結末は5月以降に持ち越される。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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