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J・フェリックスの不調、決定力不足…アトレティコとシメオネを襲う負の連鎖。

森田泰史スポーツライター
今季開幕前にアトレティコに加入したJ・フェリックス(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

ある種の変化は時に「劇薬」になり得る。アトレティコ・マドリーを率いるディエゴ・シメオネ監督は岐路に立たされているのかもしれない。

冬の移籍市場で、待望のストライカーは到着しなかった。シメオネ監督は、エディンソン・カバーニ(パリ・サンジェルマン)の獲得を要望していた。アトレティコがPSGに提示した額は1000万ユーロ(約12億円)で、対してPSG側は3000万ユーロ(約36億円)の移籍金を要求していたようだ。

差額は最後まで埋まらず、カバーニはアトレティコの選手にならなかった。昨年11月にジエゴ・コスタが負傷離脱したアトレティコは、それ以降、FW補強を視野に入れていた。その間、コパ・デル・レイでは2部B(実質3部)のクルトゥラル・レオネサに不覚を取りベスト32敗退が決まり、リーガエスパニョーラにおいてはチャンピオンズリーグ出場圏外に弾き出されるという厳しい状況に置かれている。

■アタッカー陣の数字

カバーニを確保できなかったアトレティコは、ヤニック・カラスコを再獲得した。

ただ、アトレティコの課題は決定力不足である。アルバロ・モラタ(リーガで7得点)、アンヘル・コレア(3得点)、ジョアン・フェリックス(2得点)...。現アトレティコ・アタッカー陣の数字は心許ない。

今季、アトレティコは公式戦31試合で34得点(1試合平均1.09得点)を記録している。これはシメオネ監督就任後、2009-10シーズン(62試合92得点/1試合平均1.48得点)、2018-19シーズン(51試合79得点/1試合平均1.55得点)、2015-16シーズン(57試合89得点/1試合平均1.56得点)とワーストランキングにおいてトップの数字だ。

今季のアトレティコはリーガの9試合でノーゴールに終わっている。2018-19シーズンは、38試合中6試合でノーゴールだった。すでに、無得点試合数は昨季のものを上回っている。

■J・フェリックスの不調

懸念材料のひとつは、ジョアン・フェリックスの不調だ。この夏、クラブレコードの移籍金1億2700万ユーロ(約152億円)で加入したJ・フェリックスだが、チャンピオンズリーグ・グループステージ最終節のロコモティフ・モスクワ戦以降、ゴールがない。先のマドリード・ダービーは負傷欠場している。

J・フェリックスはリーガ17試合出場(出場時間1262分)で2得点1アシストを記録している。ジエゴ・コスタの離脱、システムチェンジ、ポジション変更...。不調に関しては複数の要因が考えられる。

プレシーズンから息の合ったコンビネーションを見せていたジエゴ・コスタが不在となり、J・フェリックスが前線で孤立する機会が増えた。加えて、4-3-1-2、可変式3-5-2、4-4-2とシメオネ監督が布陣変更を度々行い、J・フェリックス自身、2トップの一角とサイドハーフで起用され、多くのタスクを求められた。

J・フェリックスには、「爆発」のきっかけが欲しいところだ。アントワーヌ・グリーズマンは、アトレティコ移籍一年目の2014-15シーズン、リーガ第16節のアスレティック・ビルバオ戦でハットトリックを達成した。その試合まで、リーガ15試合で3得点だった。それは現在のJ・フェリックスの状況に似ている。

グリーズマンは最終的にアトレティコのエースになり、プリンシペ(王子)というニックネームで呼ばれるようになった。王子の代わりを務めるのは簡単ではない。

だが、J・フェリックスにはその可能性がある。アトレティコが決定力不足を克服するために、J・フェリックスのブレイクスルーが必要になるはずだ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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