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「身から出た錆」の中で宮崎謙介が決めたルール

中西正男芸能記者
初の著書を上梓した宮崎謙介さん

 元衆議院議員で現在はビジネスコンサルタントをメインに、テレビ番組などにも数多く出演する宮崎謙介さん(40)。先月、初の著書「国会議員を経験して学んだ実生活に即活かせる政治利用の件。」も上梓しました。2回のスキャンダルで非難を受けるも今も力強く歩みを進めますが、SNSなどでの“言葉の刃”が問題になる中で何を感じてきたのか。「身から出た錆」ながら矢面に立ってきた者としての思いをストレートに吐露しました。

「北風と太陽」

 昨年、徳間書店さんから「本を書きませんか」というお話をいただいたんです。妻が「許すチカラ」という本を出した流れもあったので、僕なら「許されるチカラ」みたいな本かとも思ったんですけど(笑)、政治家時代の経験をもとに政治の本を出してもらえませんかという打診でした。

 難しい本、本格的な政治の本は別の方に委ねるとして、この本のターゲットは政治に興味がない人、政治に文句がある人にしようと。とにかく分かりやすく読んでもらえるような内容を心がけて書きました。

 妻には推敲の段階から誤字脱字のチェック、そして妻も政治家の経験がありますので誤解を生まない言い回しだとか、多角的にアドバイスをもらっていました。

 この前も土用の丑の日には一緒に鰻を食べに行ってましたし、これがね、仲良くしているんですよ(笑)。あんなことが2回もあって、それでも仲良しっておかしいんじゃないかと思う方もいらっしゃるとは思うんですけど、実際、良い関係でいるんですよね。もちろん、妻の心の大きさあってのことですけど。

 2回やらかした私が言うのは本当にアレなんですけど、ビフォーアフターというかあんなことがあって夫婦関係が変わったり、妻に頭が上がらなくなったりということは特にないんです。むしろというか、何て言うんでしょうね、今でも私のことを立ててくれるんです。

 私みたいな人間ですけど、立ち位置とか見え方を妻は常に意識してくれている。立てすぎると気持ち悪くもなっちゃうし、立てすぎないように立ててくれる。

 例えば、妻がコメンテーターとしてテレビ番組に出していただく時は3回に1回くらい私の話をしてくれるんです。この前はオリンピック絡みでサーフィンの話が出て、そこでは私が1~2年前からサーフィンを始めたという話をしてくれてました。

 正直、世の中の人からしたら、私がサーフィンをやろうが何だろうがどうでもいいことなんですけど(笑)、サッとこちらの存在が出るような話もしてくれる。

 童話の「北風と太陽」でいうと太陽の作戦で来るんですよ。押さえつければ押さえつけるほどストレスがたまって良くないことが起こったりもする。なので、逆に立ててくれたり、自由にさせてくれたり。その方が僕としても、より一層ちゃんとしなきゃなと思いますしね。

 結局、私のことを把握して、うまく転がしてくれてるんだと思います。これまで何かがあった時でも「家に帰りたくない」と思ったことは一度もないですからね。“あんな中”でも、なかったですから。

 もちろん私自身、自分が悪かったと分かっています。でも、家に帰りたくないとは思わないのは妻の大きさ以外の何物でもないと思います。

どっちに行っても

 ただ、家以上にSNSだとかネット上でいろいろな言葉が飛び交います。重ねて言いますけど、悪いのは自分ですし、そこは何の弁解もありません。

 でも、それと同時に叩かれすぎることはやっぱりつらいんです。その結果、メンタルがやられて顔面神経痛になったなんて話をすると、そこにもまた「そもそも、お前が悪さをしたからだろう」という声が来る。

 もちろんそうなんです。そうなんですけど、精神的につらくなって病気になった人間に対しても“悪者認定”を手にまだ追い打ちをかけてくる。

 身から出た錆です。こういうことを言っても一番説得力がないのが自分なのかもしれません。でも、それを経験した人間として感じたのは恐ろしいほどの容赦のなさだったり、何があっても止まらない怖さだったり。そういうものでした。

 弱ってても「お前が悪さをしたからだ」と言われますし、明るく生きようとすると「反省してないのか」と叩かれる。シュンとしてても、前を向いても、どっちに行っても叩かれる。それでも前を向くしかないんですけどね。

 …とこんなことを言っても、また「どの口が言ってるんだ」みたいな話が出てくると思います。もはや気にしてはいけないとも思いますし、気にしないようにもしているんですけど、どこかで気にしちゃうんですよね。それが私の現実です。

どうやったら赦されるのか

 だから、極めてストレートに言うと「どうしたら赦してもらえるのか」。それをものすごく考えてきた時間だったというのがリアルな話です。

 議員時代のことについては、離党ではなく議員自体を辞めると決めたのも、その一つです。離党をするだけでも非常に大きなことですし、ほぼ次がなくなるわけですからとてつもなく重いことなんですけど、それでは多くの方に直感的にご納得いただけないだろうと。そう思って、議員辞職を決めたんです。

 私が議員を辞めてから、妻も2年ほど議員をしてましたのでその間は私も表には出にくい状況になっていました。でも、いつまでも表に出ないわけにはいきません。子どもも大きくなってきて、いろいろなことを理解する中で、このままのイメージで固定されてしまうのも本意ではないですし、動かないとずっとそのイメージのままになってしまう。

 でも、表に出ると言っても、きれいごとを言うようなコメンテーター的なお仕事なんてやれるはずがないですし、せめて自分の素を出して、それで嫌われたらしょうがない。自然体で、いただけるお仕事を全うしようと思ったんです。

 その中で、読売テレビ・中京テレビの「クギズケ!」に呼んでいただき、司会の上沼恵美子さんに叱っていただく、斬っていただくという機会に恵まれました。

 国会議員の時は今から考えたらよく分からないプライドもありましたし、いわゆるいじられるキャラクターでもなかったですし、正直、最初は抵抗もありました。

 でも、実際にスタジオで上沼さんにお叱りをいただく。その時の空気。そして、後日それが放送されて記事になったりする流れ。そういうものを目の当たりにする中で、叱るなんてことは上沼さんにも幾重にもご負担をかけることだし、こちらはどこまでいっても身から出た錆です。

 妙な言い方になりますが、上沼さんには叱らないといけない義務なんてないし、結果、前に進んでメリットを得るのはこちら。なんとありがたいことをしてもらっているのか。それを心底感じました。

 番組にたびたび呼んでいただき、3回目くらいでしたかね、上沼さんが「よく3回も来てくれましたね。本当はイヤでしょ?でもね、こういう積み重ねが人の見方を変えることにつながるから」とおっしゃってくださって。まさに、そのお言葉通り、上沼さんが私を斬っていただくごとに世間からの圧が減っていきました。

逃げない

 最初の謝罪会見の時から考えていたことだったんですけど、これまでの中で決めたことが一つあるんです。それが「逃げない」ということでした。この先、人生で何があっても逃げない。スキャンダルとかそんなことだけではなく、何が起ころうが逃げない。逃げても解決にならないし、どこまでも追いかけてこられる。必ず真正面から受ける。それが人生においての自分のルールにもなりました。

 何回も同じこと恐縮ですけど、自分でも分かってるんです。何を言ったって、全ては身から出た錆。しかも、2回もあったじゃないかと。そう言われたら返す言葉はありません。

 ただ、その中でも生きていくしかないし、生きていく以上は逃げない。だから、万が一ですよ、3回目があったとしても、絶対に逃げないです。もちろん、そもそも3回目があっちゃいけないんですけど(笑)。

 スキャンダル云々ではなく、全てにおいて、何があるか分からないのが人生です。でも、何があっても逃げない。それは身から出た錆の中で学んだことですし、それだけは今から決めています。

(撮影・中西正男)

■宮崎謙介(みやざき・けんすけ

1981年1月17日生まれ、東京都出身。早稲田大学高等学院、早稲田大学商学部卒。会社経営者・コンサルタント・テレビコメンテーター。 2012年、第46回衆議院議員総選挙で自由民主党から出馬し、京都3区で初当選。衆議院議員2期を経て議員辞職。現在はビジネスコンサルタントをメインに、テレビコメンテーター、講師などで活躍。現在も多くのテレビ番組に出演。2021年現在、21社の企業顧問をしている。先月、初の著書「国会議員を経験して学んだ実生活に即活かせる政治利用の件。」も上梓した。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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