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今日は「我が道を行きすぎた２ストレプリカ。」をテーマにお話ししようと思います。

1980年代に一大旋風を巻き起こした、２ストレーサーレプリカモデル。

シンボリックなのはやはり、スズキのガンマ、ヤマハのTZR、そしてホンダのNSRでしょう。

一方カワサキも、今挙げたような他社モデルを脅かすほどの勢いを持たせることはできなかったものの、２ストレプリカカテゴリーに属するマシンを作っていました。

『KR250』です。

KR250がデビューしたのは1984年(昭和59年)のこと。

1978年から81年まで、WGP(世界グランプリ)において４年連続チャンピオンに輝いたカワサキのレーシングマシン『KR250』を模した市販車として発売されました。

(レーシングマシンと全くの同名なのでややこしいですね…)

KR250のイチバンの見どころは、エンジン。

レーサーKRと同じ、タンデムツインエンジンを搭載しています。

タンデムツインとは、まさしくオートバイのタンデム(二人乗り)のように、２つのシリンダーが車体の前後方向に並ぶレイアウトのこと。

２気筒でありながら１気筒分の幅で済み、車幅を抑えられる(＝空気抵抗を低減できる)ことが強みでした。

加えて、吸気工程にカワサキ独自の『RRIS』(ロータリー＆リードバルブインテークシステム)が組み込まれたこともポイント。

２ストエンジンの吸気方法の一つであるロータリーディスクバルブ式の弱点を補う工夫が凝らされたシステムで、これによってKR250のエンジンはピーキーさが緩和され扱いやすい特性となっていました。

また、メインフレーム・シートレール(車体後方を担うフレーム)・メインとシートレールをつなぐセンターパネルという３つのピースで構成される分割式フレームも特徴だったと言えます。

そしてやはり、KR250といえばそのルックス。

他社の２ストレプリカとは明らかに一線を画する、というより、レーサーKRとすらも一線を画してしまった唯一無二のスタイリングが、独特の雰囲気を放っていました。

レーサーのKRは流麗でスリムなシルエットをしていた一方、カワサキは市販版KR250にはなぜか『GPZ900R』にも似た鋭角的デザインを採用。

KR250単体で見れば決して悪いデザインではなかったのでしょうが、当時の「レーサーに似ているほどエラい」という風潮のなか、KR250の「レーサーから乖離した」姿はあまり良く思われず、結果的にKR250はその見た目がアダとなり他社の各レプリカマシンを打ち負かすだけの人気を得ることは叶いませんでした。

とはいえ、カワサキはそもそも当時のレプリカブームに対して他の３社ほど乗り気ではありませんでしたから、カワサキがその姿勢をさり気なく示す手段としてこのデザインを取り入れたというのであれば、あながち間違った選択だったとも言い切れません。

最初から、

「いちおうレプリカだけれど、他メーカーとはひと味違うぜ！」

ということをアピールするためのデザインということなら、見事な戦略だったという見方もできるでしょう。

現役当時はあまり歓迎されなかったKR250ですが、現在ではその存在はとてもユニークに感じられ、ある意味NSRやガンマよりもインパクトが強く感じられます。

カワサキのオートバイは生産終了してからよりいっそう人気が出るモデルも少なくないですが、このKR250もそんな１台にカウントしていいかもしれませんね。

画像引用元：カワサキモータースジャパン