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日本対策は「ショートカウンター」? 日韓戦 韓国パウロ・ベント監督会見全文

韓国代表パウロ・ベント監督。写真は2019年アジアカップ時のもの(写真:ロイター/アフロ)

いよいよ今晩に迫ったサッカー日韓戦。

試合に先立ち、韓国代表のパウロ・ベント監督が前日会見に臨んだ。リモート形式で進行した場で、今回のメンバー構成や日本に関する質問に答えている。

日本メディアには一部が紹介されたが、KFA公式サイトには協会側が準備した質問も含めた「フルバージョン」が掲載された。

日本の一部メディアには「負けの言い訳をした」とも書かれたが、欧州出身の監督は自らを正当化するために伏線を引いておくのはよくあること。そういった印象だ。確かに答えをはぐらかす面も多く見られたが、最後に日本対策のとんでもないヒントが。翻訳して紹介する。

――明日はソン・フンミン、ファン・ヒチャンが出場しない。

ソン・フンミンは負傷のため今回来られなかった。ファン・ヒチャンは、別の理由だ。ドイツザクセン州のコロナ隔離規定によるもの。この二人の選手だけでなく、招集できなかった選手が多い。攻撃陣だけでなく、すべてのポジションで選出が不可能だった選手がいる。今回の韓日戦は、準備時間が短く困難はあるが、それでも可能な限り準備し、良い試合で良い結果を得られるようにする。

韓国代表でのソン・フンミンは2017年のロシアW杯アジア最終予選以降「1トップ時の2列め左サイド」かもしくは「2トップの一角」かという問題に直面してきた。ロシアW杯予選時には左サイドに入ったが、最終予選を通じてわずか1ゴールに終わるなど、振るわず。いっぽう最終予選後からは当時のシン・テヨン監督が2トップの一角に起用し、機能し始めた。いっぽう、ベント監督下ではMF登録され、3トップの左や2列目の左サイドで活用されることが多い。配置転換の背景には(いずれも日本戦は欠場するが)ロシアW杯後のファン・ウィジョの台頭、さらにはファン・ヒチャンの成長などがある。当然のごとく、25日の日本戦では「左サイドを誰が埋めるか」が韓国にとっての大きなポイントとなる。

――多くの選手が負傷により招集できなかったいっぽう、招集された選手たちに期待するものは?

どの招集でも代表に抜擢されたのなら、常にベストを尽くさなければならない。日本に来る前に、24名の選手リストを発表したが、複数の問題によりリストが変更された。試合への準備の時間が不足しているが、すべての点を克服し、良い試合をできるように全力を尽くす。選手たちには自分の役割をしっかりやってくれることを期待する。

――イ・ガンイン(バレンシア)、チョン・ウヨン(フライブルク)の活用法は?

二人とも若く、ヨーロッパのトップリーグで活躍している。イ・ガンインは、過去の幾度かの招集で時間を共にした。チョン・ウヨンは今回が初めてだ。今回は招集期間が短く、共に過ごせる時間が足りないが、それでもトレーニングの様子を見守ることができたのはよいこと。(ふたりを)明日の試合でもどのように活用できるか研究してみたい。

イ・ガンインは言わずと知れた2019年5月末から行われたU-20W杯のMVP。その前の同年3月の国際Aマッチデーでフル代表に初招集されたが、出場機会はなし。大会後、9月に行われたジョージア戦でA代表デビューを果たした。その後、W杯2次予選のスリランカ戦(ホーム/先発フル出場)、北朝鮮戦(アウェー)に出場。2020年は11月のオーストリア遠征2試合でいずれも75分前後から投入されている。韓国代表では「まだまだテストされている」という段階だ。

――日本戦は、韓国国民の期待が大きいが。 

韓日戦とはいっても、毎回同じような状況、条件であることはない。今回は、特殊な状況だ。すでに話した複数の問題点もあり、準備期間も短い。多くの状況が過去の韓日戦とは異なるものだ。それでも、我々は短い期間内に出来ることに最善を尽くし、目的の結果をもたらすだろう。これまでやってきたスタイルを維持し、自分たちのサッカーをやりながら良い内容で結果をもたらせるよう最善を尽くしたい。

――ライバルという存在についてどう考えるか?

代表レベルでもクラブチーム間にもライバルというものがたくさん存在する。しかし、(私は)そのような点より、私たちのチームができることに集中する。相手がどのように出るか予測し、それにあわせて、私たちが望むゲームを戦術的にも展開していくことが優先だ。ライバルという存在については、常にその存在の意味をよく知り、理解し、尊重する。いっぽうでこの試合が関係者の努力により開催される意味を誰もが共有している。複数の困難のなか最大限によい準備をし、よい内容と結果をもたらせるよう努力する。

――韓国サッカー発展のためにどのような役割を果たしていくのか。

韓国に赴任して以降、このチームの戦術的、技術的な部分を持続的に発展させようと努力してきた。KFAと協力しながら、私たち(自分自身と欧州から連れてきたコーチングスタッフ陣)がやってきた経験をもとに、韓国代表チームの運営面でも緊密にコミュニケーションする。改善すべき部分に対して、我々が多くの助言も行いつつ、良い方向に向かっていると思う。

――新型コロナ感染対策への考えは?

誰もが困難な状況では、当然のことながら、感染防止の対策・指針を徹底し、従わなければならない。私たちは、まずこれを遵守しながら、そのうえでやるべきことを見つける必要があります。

――日本代表はどんなチームだと思うか?

日本代表の長所は、いくつかのポイントがある。しかし、チームというのはメリットだけで試合はできない。どの点をしっかり攻略するかを把握し、明日の試合の準備をする。強いプレスで(ボールを)奪って、逆襲を仕掛けていかなくてはならない。繰り返しになるが、韓国の能力を発揮し、いい試合展開を見せ、よい結果を得られるよう準備を進めていく。

自チーム選手への期待、日本のコロナ対策への印象などは答えをはぐらかしたが…最後に大きなヒントを喋った。「強いプレスでボールを奪う」「逆襲」というのは、「ショートカウンター」に他ならない。直近のメキシコ戦、カタール戦(2020年11月)には4-3-3のシステムで戦っている。日本がポゼッションをし、韓国はこれに対して引くことはせず、果敢に奪いに行きながら、少ない手数でゴールに迫る。そんな試合展開も予想できる。

(了)

参考記事:【日韓戦・超ナナメ視点プレビュー】韓国のポルトガル人監督が“日本の未来像”になりうる理由って?

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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