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【海の温暖化】5月の海面水温は過去最高 台風が活発化するおそれ

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
2023年5月の世界の海面水温の基準値との差:米海洋大気庁ホームページより

 世界気象機関(WMO)は16日、世界の平均気温と海面水温が前例のないレベルで高温になっていると発表しました。

 5月の海面水温は過去最高となり、2か月連続で記録を更新しました。エルニーニョ現象の発生が水温のさらなる上昇を招いていて、冬にかけて異常高温が続くものとみられます。

温暖化の90%を海が吸収している

 年々、気温が高くなっているように、海の水温も少しずつ高くなっています。その割合はこの100年で0.6度とわずかに思える上昇ですが、温暖化によって地球全体に蓄積した莫大な熱エネルギーの約90%を海が吸収しています。海は熱をため込む力が非常に強いため、近年は海洋貯熱量(海洋に蓄積された熱エネルギー)の増加に拍車がかかっています。

海洋貯熱量の1955年からの増加量:気象庁ホームページより
海洋貯熱量の1955年からの増加量:気象庁ホームページより

 温暖化というと猛暑、熱波ばかりに注目しがちですが、世界の7割を占めるのは海洋です。海の温暖化は水産資源だけでなく、海面上昇による海岸の浸食や高潮の頻発など広範囲にわたり、取り返しのつかない深刻な影響を与えます。

エルニーニョ発生で台風活発化も

 そして、台風への影響です。米海洋大気庁(NOAA)によると、5月の熱帯低気圧積算エネルギー(ACE)は過去最高となり、2015年の記録をさらに約10%上回りました。

 熱帯低気圧積算エネルギー(ACE)とは聞きなれない言葉ですが、台風の活動度を示す重要な指標です。各地に記録的な大雨をもたらした台風2号は一時、中心気圧が905hPa(速報値)となり、5月としては異例な強さまで発達しました。

 今年は4年ぶりにエルニーニョ現象が発生し、今後は発達が見込まれています。エルニーニョ現象時は熱帯低気圧積算エネルギー(ACE)が大きくなる傾向にあり、今年は台風が活発化するおそれがあります。

【参考資料】

世界気象機関(WMO):Air and sea surface temperatures hit new records、16 June 2023

気象庁:海洋貯熱量の長期変化傾向(全球)、2023年2月20日

米海洋大気庁(NOAA):Assessing the Global Climate in May 2023、Earth had its third-warmest May; record-low May sea ice extent observed in the Antarctic、JUNE 14, 2023

気象庁:異常気象分析検討会(平成27年度 定例会)の概要について、資料(3−1)熱帯低気圧積算エネルギー(ACE)について

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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