Java API著作権裁判でグーグルがオラクルに勝利
「グーグル、Java API使用が"フェアユース"と認められる--対オラクル訴訟」というニュースがありました。これは結構ビッグニュースです。この件、前から書こう書こうと思っていましたが、影響度が大きい話なので時間をかけて書こうと思っていた間に評決が出てしまいました。
全体的な論考はまた後で書かせていただくとして本記事では手短に事件を紹介したいと思います。
この裁判は、オラクルがサンマイクロシステムズを買収した直後の2010年8月に始まったのですが、当初は、特許、実装コードの著作権侵害、APIの著作物性等も争点になっていました(裁判の全貌に関するWikipediaエントリー(英文))。これらの争点は二転三転した後に既に一応クリアーになっており、現在の争点は、AndroidにおいてJavaのAPI(宣言コード等)を複製することが米著作権法上のフェアユースに相当するかです(グーグルがJavaの実装コードをコピーしたという話ではないのでご注意ください)。この争点について米連邦裁判所(の陪審員)がフェアユース(ゆえに著作権侵害には当たらない)との評決を下したというのが今回のニュースです。オラクルは上訴するようです。
ソフトウェアのコードが著作権で保護されるのは大前提として、APIそのものを著作権法で保護すべきかどうかは重要な論点です。仮にAPIが保護されるとしたら、他社のプラットフォームと互換プラットフォームを完全に独自で開発したい場合でも、その他社の許諾が必要ということになってしまいます。その他社が許諾しない、あるいは、法外なライセンス料を要求したとするならば、同じ機能であるにもかかわらずちょっとずつ違ったAPIを設計せざるを得なくなってしまいます。こうなると互換性のないプラットフォームが乱立することになり、ソフトウェア産業全体で見れば大きなデメリットをもたらします。今回の一連の裁判ではAPIは著作権の対象となるとされました(これは個人的には賛成しかねますが)、しかし、互換プラットフォームの開発に既存APIを使うことはフェアユースであって著作権侵害ではないとされたので、上記の懸念は一応回避されたことになります(控訴審でどうなるかまだわかりませんが)。
ソフトウェアの世界では実装をコピーすることなくAPIのみを共通にした互換ソフトウェアの開発は今までも行なわれてきました(たとえば、IBM PCの互換BIOSやUNIX上でWindowsアプリケーションを稼働するためのWine等)。個人的見解としては、APIの仕様は社会の共有財産とし、各メーカーはその共有財産に基づいた実装の品質や性能で勝負するというのが正しい姿であると思います。