EUでアディダスの3本線商標登録が無効になったことの影響について(判決文リンクあり)
「アディダスの3本ラインは"普通の図形" EU裁が商標権認めず」というニュース(ロイター)がありました。当該記事に付いている動画を見ると、あたかも有名なアディダスの3本線マークを誰でも使えるようになったかのように思えます。しかし、そんなことはありません。
今回、問題になった商標登録は、EUTM(欧州連合商標)012442166号(タイトル画像参照)です。説明には、”The mark consists of three parallel equidistant stripes of equal width applied to the product in whichever direction.”(本マークは、商品に任意の向きで付された3本の等間隔で等幅のストライプである)と書いてあります。指定商品は、被服、靴、帽子です。これらの商品やその箱に3本線が付いていればどこに付いてようが、どのような向きや大きさであろうが、アディダスが権利を持つということです。かなり範囲が広い商標登録です。
アディダスの他の図形商標登録、特に下画像のような靴やウェアの特定の場所に付ける3本線商標登録が無効になったわけではないので、これらの商標を誰でも使えるようになったということはありません。
問題の3本線商標登録が無効になった理由は識別性の欠如です(ロイターの記事では”独自性”となってますが、原文はdistinctivenessなので正確には識別性(識別力)と訳すべきです)。アディダスの競合企業が、識別性欠如を理由にEUIPO(欧州特許庁)に対して無効審判を請求し、無効にしたのに対して、アディダスが審決取消訴訟を欧州第一審裁判所に提起したが無効が覆らなかったという状況です。なお、アディダスは控訴できますので判決が確定したわけではありません。
アディダスの3本線は市場において広く知られていますし、識別性はありそうに思えますが、同社が裁判で提出した証拠だけでは、3本線のみで十分な識別性があるとまでは、裁判所は認めなかったということになります。判決文のリンクはこちらです。
判決の内容については後ほど追記します。