甘木鉄道が新型車両を導入へ 今乗っておきたい「LE-DC」AR300形・AR400形
8月16日、福岡県朝倉市に本社を置く第三セクター鉄道・甘木鉄道が新型車両の導入と運賃改定を発表した。新型車両導入については車両老朽化と旅客サービスの向上、運賃改定については新型コロナウイルスの影響や物価高、施設整備費の増大や人件費高騰を理由として挙げている。新型車両導入は平成18(2006)年以来9年ぶりで、来年度より実施を予定している。運賃改定は10月1日実施予定で、平成7(1995)年12月以来29年ぶりとなる。
甘木鉄道甘木線は鹿児島本線の基山駅(佐賀県三養基郡みやき町)を起点に、福岡県小郡市、三井郡大刀洗町、朝倉郡筑前町を経て朝倉市の甘木駅に至る全長13.7キロの路線だ。陸軍大刀洗飛行場への輸送を目的として昭和14(1939)年4月28日に開業した。国鉄末期に第一次特定地方交通線となるも、三セク転換後の積極的な施策により利用者が急増、福岡都市圏外縁部の重要な足として今なお多くの利用がある。厳しい経営を強いられる三セク転換路線の中では「優等生」とも言うべき存在だ。
そんな甘木鉄道で現在活躍するのはAR300形7両、AR400形1両の計8両だ。AR300形は、昭和61(1986)年4月1日の転換時から用いられてきたAR100形の置き換えを目的に、平成13(2001)年12月から平成18(2006)年12月にかけて導入された。AR301~AR303は富士重工業で製造されたが、同社の鉄道車両製造からの撤退により、AR304~AR307は新潟トランシスで製造されている。車齢はもっとも古いAR301で23年、最も新しいAR306・AR307で18年だ。
たった1両の少数派であるAR400形は、日本宝くじ協会の助成を受けて平成13(2001)年12月に導入された車両だ。見た目はAR300形とよく似ているが、側面窓が両端を除いて固定式である点、内装が転換クロスシート(現在は固定されている)点がAR300形(内装はセミクロスシート)とは異なる。
AR300形・AR400形ともに三セク鉄道で多く導入されている軽快気動車「LE-DC」シリーズに属するもので、全国各地で同じ顔の兄弟が活躍している。通常の鉄道車両と比べると廉価な分、寿命は短く、近年は引退する車両も増えてきているが、一方で信楽高原鉄道SKR300形(→紀州鉄道KR301形)などのように第二の職場を見出すものもある。
7両あるAR300形は7両すべてが別の塗装で、カラーバリエーションを列挙すると以下のようになる。このうち、AR306は朝倉高校の生徒によるデザイン、AR307は社内公募によるデザインだ。
AR301 平成13(2001)年12月導入 甘木鉄道オリジナルカラー
AR302 平成14(2002)年9月導入 水源地と柿をイメージした塗装
AR303 平成15(2003)年6月導入 国鉄一般気動車標準色風塗装
AR304 平成16(2004)年12月導入 沿線の山や農地をイメージした塗装
AR305 平成18(2006)年3月導入 国鉄急行色風塗装
AR306 平成18(2006)年12月導入 桜をイメージした塗装
AR307 平成18(2006)年12月導入 ディープブルーのメタリック塗装
来年度から始まる新型車両導入により、AR300形・AR400形のうちどの車両が最初に引退するのかは不明だ。前回同様、1年に1両か2両ずつの導入であれば、5年ほどかけての置き換えとなるだろう。まだまだ使えそうなので、できれば他の路線に次の職場を見出してもらいたいところだ。
20年以上に渡って甘木鉄道の主力として活躍してきたAR300形・AR400形、そのカラバリを記録しておくなら早めの方がよいだろう。