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例年とは違う春は、記録的な暑さだけでなく冬の厳しい寒さが影響

饒村曜気象予報士
満開の桜(ペイレスイメージズ/アフロ)

早い春の訪れ

 今年は各地で春の訪れが早く、まれにみる暖かさとなっています。

 北海道旭川では3月28日に最高気温が16.5度と、明治38年(1905年)3月31日の18.8度に次ぐ3月の記録です。3月に15度を超すのは113年ぶりです。

 また、札幌では、3月28日に最高気温が16.4度と、明治24年(1891年)3月28日の16.8度に次ぐ3月の記録です。3月にここまで上がるのは127年ぶりです。

 さらに名古屋で3月28日に最高気温が25.1度、29日に25.3度と夏日(最高気温が25度以上の日)が3月に2日連続したのは、明治23年(1890年)7月の観測開始以来の128年間で初めてのできごとです。さらにさらに、京都で3月28日に最高気温が25.5度となって夏日になったのは、明治13年(1880年)11月の観測開始以来、138年間で最も早い夏日となっています。

 このように暑い日があったために、3月の平均気温は鹿児島で14.5度など、全国21の県庁所在地で観測史上1位を記録しました。

 3月下旬からゴールデンウィークの頃の気温が現れていますので、1ヶ月ほど早く季節が進んでいます。

 4月に入ってからも高温傾向は続き、4月3日(火)も、日本付近は、高気圧に覆われ、南から暖気が流入しやすい気圧配置ですので、各地で夏日となりそうです(図1)。

図1 予想天気図(4月3日9時の予想)
図1 予想天気図(4月3日9時の予想)

 北日本は日本海北部にある寒冷前線が南下してきますので、雨が降って気温は少し下がりますが、西日本を中心に、しばらくは高気圧に覆われて晴れ、気温が高い日が続く見込みです。

体にこたえる寒暖差

 春は一般的に寒暖差が大きいのですが、今年は寒さが続いた冬から一気に寒暖差の大きい春になったため、体感的には、温度差がきつく感じる春になりました。

 春先は体が暑さに慣れていないので、夏場では熱中症にならない気温でも、熱中症になる可能性があります。例年、ゴールデンウィークの頃から熱中症の患者がでるのですが、今年は、4月初旬から注意する必要があります。

 暖かい日中から寒い夜間への寒暖差が大きいと寒暖差アレルギーがでることがあります。くしゃみや鼻づまりなどの症状が出ますので、暖かいからといって薄着で外出するのではなく、寒暖差が大きいということを念頭に、服装を選んで下さい。

今年の春の異変

 今年の春は、単に記録的な暖かさというわけではありません。

 冬の厳しい寒さのあとに記録的な暖かさがきたということで、各地に春の異変が起きています。

 北海道の天塩川では川を覆っていた氷が解けて流れるという「解氷(かいひょう)」という現象が顕著でしたが、これは冬の寒さで川面の氷が分厚く発達し、それが暖かさで一気に溶けたため、大きな氷の塊が流れています。

 また、北海道の豊富町では雪解け洪水で川が氾濫していますが、冬に積もった大量の雪が暖かさで一気に解けたことによる大量の雪解け水によって生じています。

 さらに、福岡県の直方市(のおがたし)では、桜とチューリップが同時に咲いています。桜が散ったあとに咲くチューリップが2週間ほど早く咲いたためです。まるで北国の春のようです。

 北国の春は、いろいろな花が一斉に咲くというのが特徴です。暖かい地方では、桜が咲く頃は、ほかの花は咲いていません。桜が散ったあとに、いろいろな花が順々に咲いてゆくという春になります。

 桜の花を見に行って、意外と今年は色々な花が咲いていると感じた人も多かったと思います。今年の春は、全国的に北国の春状態になっています。

異常に早かった桜の開花と満開

 桜の開花や満開は、地球温暖化や都市化の影響で年々早まっていますが、今年は3月からの暑さで開花や満開が異常に早まって、各地の桜祭りが混乱しています。花見用の屋台やボランティアの手配が間に合わなかったり、予定した期間の後半は桜が散った後でキャンセルが相次いでいるからです。

 桜は、花芽が秋にできると休眠に入り春を待ちますが、冬のあいだに極端な低温にあうと休眠打破と呼ばれる現象がおきます。休眠打破がおきると、その後の暖かさによって開花が一気に進みます。

 私たちも、眠りが浅いと目覚めが良くないのですが、ぐっすり眠るとその後の目覚めが良いということを経験していますが、似たようなことが桜でもおきるのです。暖冬で寒い時がない場合は、暖かさの割には開花は早くなりません。

 今年の桜は、冬の寒さでしっかりと眠ったために、その後の暖かさで桜の開花や満開が一気に進んだと考えられます。

春の暖かさの要因

 春の暖かさの要因は、ラニーニャ現象と偏西風です。

 昨年秋からラニーニャ現象がおきており、日本のはるか南海上の熱帯域には活発な上昇気流があり、この上昇した空気が温帯域で下降して高気圧を発達させています。

 今年の2月は、中国大陸上で高気圧が発達し、西高東低の冬型の気圧配置が強まりました。

 また、偏西風が大きく蛇行して日本付近に北極からの寒気を南下させたことから寒くなりました。

 3月から4月にかけては、同じラニーニャ現象の影響でも、高気圧が日本付近でも発達しています。このため、偏西風は蛇行しなくなって北に押し上げられ、寒気が南下することがなくなり暖かい日が続いています。

 温かいまま夏になるとは考えづらいのですが、今年の夏はどうなるかということが世間の関心を集めるようになりました。

今年の夏は

 気象庁は、ラニーニャ現象は春のあいだに終わり、夏は平常な状態になる可能性が高いとしていますが、同時に発表している誤差幅を見ると、夏まで続く可能性も残っているとしています(図2)。

図2 エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5ヶ月移動平均値
図2 エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5ヶ月移動平均値

 気象庁の暖候期予報によると、今年の夏は上空のチベット高気圧が日本付近に張り出してきますので、日本付近は下層が太平洋高気圧、上層がチベット高気圧と、ふとんの2枚重ね状態になりますので、暑くなるという予想です(図3)。

図3 夏の海洋と大気の状況(平成30年(2018年)6~8月)
図3 夏の海洋と大気の状況(平成30年(2018年)6~8月)

 もし、ラニーニャ現象が夏まで続く場合は、さらに猛暑となります。早い梅雨明けで、水不足の懸念もありますので、毎月25日頃に気象庁が発表する3ヶ月予報に注目する必要があります。

図1、図2、図3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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