虫食い野菜は安心安全?巷に広がる野菜の誤解について①健康な野菜とメタボな野菜
『虫食い野菜の方が安心して食べられる』
『虫が食べてる野菜の方が自然で美味しい』
『曲がったキュウリの方が自然』
…と、これらはとある有名グルメ漫画の影響が大きいと思いますし、それを読んだ人が話したりネットに書いたりして広まっていったのかなぁと思っています。
私も以前はそう思ってました。
でも、実際に自然農で野菜を育てて観察と勉強を続けていた、どうやらこれは誤解のようだと今は思うようになりました。
ということで今回は上記2つのことについて、実際に無農薬有機栽培に3年関わり、その後無農薬・無肥料の自然農を7年やってきた経験と観察結果から本当のところはどうなのかを書いていきます。
『虫食い野菜が安心安全』というのは誤解
現代のスーパーでは虫食いのある野菜はまず並んでいません。
見た目が悪いと売れ残ったり、購入した野菜から虫が出てこようものならクレームになるので販売業者も流通業者も規格を設けて、そこで虫食い野菜が入ってこないようにしていますし、農家さんもその規格に合わせて作る努力をされているからです。
でもその一方で、有機野菜や無農薬野菜、健康や食に興味関心の高い方なら
『虫食いのある野菜』
と聞くとむしろ農薬が使われていなくて安心という好印象を抱く方も少なくないんじゃないかと思います(実際に虫食い野菜を購入するかは別として)
確かに虫食いがあれば、その虫が付く前の一定期間は農薬が使われなかったかもしれません。
(農薬の多くは複数回使用します。弱めの物を何回も使うか、強めの物を少数使うかは野菜と農家さん次第)
虫食いがあることがイコールで無農薬栽培だとは限らない可能性もありますが、
私がお伝えしたいのは、そもそもなぜ野菜が虫に食われるのかということです。
健康な野菜は虫に食われにくい
人間や動物に例えるとイメージしやすいのですが、
睡眠、運動、食事がバランス良くとれている健康な人と
生活リズム不規則、睡眠も運動も不足、栄養状態も偏っている不健康な人では
どちらがケガや病気をしやすいでしょうか?また治りが早いのは?
私たち人間や動物に免疫力や治癒力があるように、植物にもそれがあります。
その抵抗力のおかげで健康に育っている野菜は虫に食われにくく、無農薬でもきれいに育ちます。
私の畑でそのことがよくわかるのが、カボチャの葉っぱを食べるウリハムシの行動です。
彼らは葉っぱをまず丸く切り取ってから食べる習性があり、たくさん食われると葉っぱが穴だらけになって枯れてしまいます。
この行動は、葉っぱがかじられるとカボチャがストレスを感じて抵抗物質を合成するのでそれが来る前に食べる分を切り取って遮断してからゆっくり食べる為と言われています。
私の畑でも、寒さや水不足で弱ったカボチャの苗は食われて枯れたりしますが、順調に育ったカボチャでは面白いことに、一カ所だけかじられてそれ以降は食われないんです。
おそらく諦めるんでしょうね。
『この葉っぱ食えねぇや…』って(笑)
実際の写真お見せします。
↓2020年6月頃の西洋カボチャです。よーく見ると何枚かは縁の方が食われてますが、生長には全く支障が出ないレベルです。もちろん完全無農薬です。
ちなみに日本カボチャの方がもっと虫に食われにくいです。葉っぱの特徴が違います。
↓同じ日、隣の畝の日本カボチャです。よく見ても虫食い一つ見つからないほどキレイ。(もちろん無農薬)
このように、健康な野菜は虫に食われても、ほんの少しで止まり生長には全く支障が出ません。
虫に食われやすいアブラナ科の葉野菜はもう少し食われますが、それでも旬の時期に健康に育ったものは、古い外葉は多少食われていても中心の方は殆ど食われずきれいにそだったりします。
※この外葉が食われるというのはむしろ野菜に取ってはメリットだったりします。
キャベツが分り易いのですが、アオムシに食われるのは外側の固い葉です。アオムシは葉っぱの上に糞をして、それが雨で流されてキャベツの根元に落ちます。そう、虫の糞が肥料になるんです。この事から、植物はむしろ虫を利用しているんじゃないか?とすら感じます。
では次に、どういった野菜が虫に食われやすくなるのかを考えてみます。
不健康な野菜ってどんな野菜?
『野菜は無農薬だと虫に食われてしまう、肥料を使わないと育たない』
という刷り込みが一般消費者さんだけでなく、生産農家さんの間にも広がっているのが現代です。
でも実際は、農薬も肥料も使わなくても十分に野菜は育ちます。
但し、以下の条件のいずれかをすると虫に食われやすくなります。
雑草や他の植物を生やさずその野菜だけで栽培(単一栽培)
肥料を使って早く大きく育てる(促成栽培)
旬以外の季節に栽培・その土地の気候風土に合わない栽培(ハウス栽培)
これらは人間の都合を優先して生産効率や付加価値を上げる為に行われることで、一言で言えば野菜にとって不自然な状態になります。
自然界には物質循環や自浄作用といった大きなエネルギーと物質の流れがあります。
その流れは不自然なものを浄化して自然の循環に戻そうとする力です。
自然に生えている植物を観察すると、色んなものが生えていたり、場所によっては1種類しか生えていなかったりします。自然界ではその土地の気候風土、土の肥沃土に合った植物が生えてきますが、人間は労力と資材を使うことで自分の都合を優先した栽培をします。
その栽培が土地や季節に合っていれば農薬も肥料も使わずに育ちますが、合っていないと上手く育ちません。この育たないということ自体が自然なことで、それを無理に育てようとすればするほど、自然の循環・浄化作用が敵となって現れます。その浄化作用を一般的な農業では病気や害虫と呼びます。
栄養過多も不健康…メタボな野菜
自然農をやる人たちの間では知られるようになってきた話ですが、まだあまり知られていないのが、
栄養過多の野菜も虫に食われやすくなるということ。もう少し正確に言うと窒素過多(窒素分が多すぎる)の野菜です。これは人間で言えば不必要な脂肪を付けすぎてしまった状態、あるいは血液がドロドロになってる状態みたいなものです。
窒素は植物が生長して体を作る上でとても重要な栄養で、人間で言えば肉や魚といったタンパク質のようなもので、実際タンパク質の合成には窒素が必要です。しかし、土の中に窒素分が多すぎると吸収しすぎてしまい、早く大きくなるものの、細胞が膨らんだ水ぶくれのような状態になっていて、食べてみてもなんだか味の薄い野菜になったり、イヤな苦みやエグみ、青臭さの原因になったりします。
また土に窒素分が多いと、土のミネラルを吸収しにくくなる拮抗作用が起きてミネラルの不足した野菜になるとも言われています。
虫はメタボな野菜が大好き!?
窒素分が多いと細胞がが膨らみ、植物の骨の役割をしている細胞の周りを囲んでいる箱のような細胞壁が薄くなります。そうなるといわば防御力が落ちた状態になり虫に食われやすくなります。柔らかい食べ物の方が食べやすいのは虫も一緒なんですね。しかも、窒素過多の野菜は人間にとっては不味さの原因だったり体にも良く有りませんが、虫にとっては栄養価が高いようで願ったり叶ったりのご飯。
こういった窒素過多でメタボ状態になった葉っぱは、色がやたら濃い緑色をしています。もちろん、野菜の種類によって色合いは違うのですが、同じ種類の野菜で比べるとその違いがわかります。
健康な野菜は、自然に生えている雑草と同じくらいの色合いです。(先ほどのカボチャの葉っぱを見てみて下さい。大きく生長しているけど色は淡い緑色をしてて、雑草と同じ色合いです)
逆に窒素分が不足した状態だと葉っぱは黄色くなって枯れます。老化で自然に枯れる葉も黄色くなりますが、見極め方としては下の方にある先に生えた葉っぱから少しずつ黄色くなって枯れるのは自然な老化です。それに対し、窒素不足の場合は生長が止まり、全体が黄色っぽく生っていきます。完全に枯れる前なら吸収しやすい肥料を適度に与えることで症状を改善して再び生長させることができます。
これも人間や動物と似ていますね。お腹を空かせているならご飯を上げなきゃいけませんが、太りすぎてしまった所にスナック菓子やファストフードのような高カロリーなものを与えたら病気になるのと似てます。
あるいは最初から高カロリーなものだけを与え続けても体が弱くなります。
長くなってきたので、一旦区切りますがまだ続きます!
続きは次のことについて書く予定です。
・野菜が自ら虫を呼んで食べさせている?
・虫が好きな野菜は不味い!?
たぶんこの2つでも長くなるので↓これは3つめの記事にすると思います。
・自然農のキュウリはまっすぐ育つし曲がる場合もある
ということでまた次の記事で。
※後で間違いに気づいたり、追加情報書きたくなって加筆修正したりするので、よかったら時々見直しに来てみてください^^