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「コンサドーレのサポーターの忠誠心はJ1屈指」 胸スポンサーが語る広告の費用対効果

村上アシシプロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント
インタビューにこたえる石屋製菓社長、石水創氏(スタッフ撮影)

北海道コンサドーレ札幌の胸スポンサーを長年続けている石屋製菓株式会社の代表取締役社長、石水創氏のインタビュー連載コラム。前回はユニフォームの胸のロゴを変更した経緯を聞いたが、今回はコンサドーレの胸スポンサー広告の費用対効果や将来のビジョンについて伺った(取材日:2019年2月8日)。

コンサドーレの存在が企業理念そのもの

アシシ:J1クラブの胸スポンサーの掲載料金は相場が億単位だと聞いています。我々庶民からすると目が飛び出るほどの金額ですが、費用対効果的にはぶっちゃけどうなんですか?

石水:まず前提として、弊社がコンサドーレのスポンサーをすることによる広告効果ももちろんありますが、コンサドーレの存在自体が弊社の理念そのものなんです。弊社には「しあわせをつくるお菓子」という企業理念があるんですが、その幸せには三方良しの精神があります。お客様の幸せ、社員の幸せ、地域の幸せ。これら3つの幸せを実現する上で、コンサドーレはまさに「地域の幸せ」にあたります。そういう意味では、広告のためだけに胸スポンサーをやっているわけではありません。

アシシ:広告目的ではなく、企業理念に基づいてコンサドーレをサポートしている点は理解しました。とはいえ、経営者としてはコストに見合ったパフォーマンスがあるかどうか、という視点も重要じゃないですか。

石水:費用対効果の観点で言うと、コンサドーレに協賛する効果はJ1の中でも群を抜いていると思います。何よりコンサドーレのサポーターは、パートナー企業に対する忠誠心というか、顧客ロイヤルティ(※)がものすごく高いです。

※編集部注:顧客ロイヤルティとは、企業が提供する商品やサービスに対して、顧客が感じる「信頼」や「愛着」のことを指す。

アシシ:たしかに札幌サポーターのツイッターなどを見ていると、飲み会でいつもサッポロビールのジョッキの写真をアップしたり、「#遠征はJALで行こう」というハッシュタグを付けて空港での写真をSNSに上げたり、コンサドーレのパートナー企業に貢献しようとする姿勢が顕著ですよね。石屋製菓における、札幌サポーターの顧客ロイヤルティの高さを実感したエピソードなどあれば、教えてください。

石水:サポーターにはよく「石屋製菓はコンサドーレが苦しい時もクラブを支えてくれた」と言っていただけるんですが、私にとっては逆なんです。当社が賞味期限改ざんの不祥事を起こした2007年、販売再開時に「白い恋人はもう大丈夫だ」と真っ先に並んで買ってくれたのがコンサドーレのサポーターの方々だったんですよ。

アシシ:苦しい時こそ支えるのがサポーターのアイデンティティだと自負しているサポーターも多いですからね。

石水:それ以外にも、何年か前の最終節にゴール裏のサポーターがスポンサーに感謝の横断幕を出してくれたじゃないですか。「一生俺達の白い恋人」とか「乾杯はCLASSIC」とか。あれはスポンサーにとっては涙が出るほど嬉しい出来事なんですよ。

アシシ:2013年のJ2最終節ですね。サツドラの社長もあの横断幕を見て感動して、コンサドーレのスポンサーになったと経済誌フォーブスのインタビューで答えてました。

石水:他クラブの協賛企業の方ともよく話すんですが、ここまでパートナー企業に愛着を持ってくれるサポーターは他で聞いたことがありません。定量的に測ったわけではありませんが、北海道に関わりのある企業にとって、広告の費用対効果は非常に高いと思いますよ。

クラブハウス建設時の秘話

アシシ:話は変わりますが先日、サッカーの代理人にインタビューしてきたんですけど、選手が移籍する時に最も重視する点は、クラブハウスや練習場などのハード面だという話を聞きました。札幌の宮の沢にあるコンサドーレのクラブハウスと練習場は、石屋製菓が建てたんですよね?

石水:そうですね。

アシシ:新加入の選手は最初にクラブハウスを訪れた際、立派な施設に驚くそうです。

石水:クラブハウス内にサウナ施設まで作りましたからね。クラブハウスから直結するグラウンドには、雪が積もっても練習ができるように、ピッチにヒーティングシステムを設けました。これは今の会長、当時の社長である父が、実際にドイツのサッカークラブを何カ所も見て歩き、導入を決断したんです。

アシシ:たしかに施設全体の雰囲気もヨーロッパさながらですよね。あの施設はいつ完成したんでしたっけ?

石水:2000年に完成しました。

アシシ:もう19年も経つんですね。

石水:最初はカーリング場を作ろうとしていたんですよ。

アシシ:なんと。それは知りませんでした。

石水:白い恋人パークにカーリング場を建設する計画は、コンサドーレができる前からありました。しかし、北海道に初のプロスポーツチームが誕生したものの、当時のコンサドーレには特定の練習場所がなく、札幌から1時間以上かけて練習のためだけに栗山や室蘭に日帰り遠征しているような状況でした。そんな環境ではチームが強くなるはずがありません。そこでカーリング場建設を断念して、コンサドーレの専用練習場を建てたんです。

アシシ:そんな経緯があったんですね。コンサドーレは今やカーリングチームを持つ形になりました。長年の会長の思いが実ったとも言えますね。

石水:会長は昨年のカーリングチーム発足には関わってはいませんが、コンサドーレにカーリングチームができて、「俺は30年前からカーリングをやりたかったんだ」と言って喜んでいましたよ。

日本スポーツ界の歴史的瞬間に立ち会う夢

アシシ:最後になりますが、コンサドーレのスポンサー企業として将来のビジョンなどありましたらお聞かせください。

石水:将来というか今季の話なんですけど、コンサドーレには今年、成し遂げてほしい目標があるんです。それは今年の天皇杯、是非ファイナルの舞台まで勝ち上がってほしいなと。

アシシ:次の天皇杯決勝は1月1日開催に戻るんでしたっけ?

石水:そうなんです。元日決戦かつ、新国立競技場のこけら落としになるんですよ。2020年オリンピックイヤーの幕開けで、日本のスポーツ界における歴史的瞬間に我々が立ち会うことができれば、こんなに幸せなことはないと思ってます。

アシシ:天皇杯は毎年開催されますが、新国立競技場のこけら落としは一度きりの舞台ですもんね。では、コンサドーレには今シーズン、早めにJ1残留を決めてもらって、夏以降は天皇杯に全力で挑んでもらいましょう!

石水:リーグ戦も頑張りつつ、天皇杯もチーム一丸となって獲りにいってほしいなと。

アシシ:夢が膨らみますね。

石水:そうですね。コンサドーレが誕生して今年で23年経ちますが、これからも北海道の皆さんとともに、コンサドーレを色んな形でサポートしていけたらなと思っています。

プロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント

1977年札幌生まれ。2000年アクセンチュア入社。2006年に退社し、ビジネスコンサルタントとして独立して以降、「半年仕事・半年旅人」という独自のライフスタイルを継続。2019年にパパデビューし、「半年仕事・半年育児」のライフスタイルにシフト。南アW杯では出場32カ国を歴訪する「世界一蹴の旅」を完遂し、同名の書籍を出版。2017年にはビジネス書「半年だけ働く。」を上梓。Jリーグでは北海道コンサドーレ札幌のサポーター兼個人スポンサー。2016年以降、サポーターに対するサポート活動で生計を立てているため、「プロサポーター」を自称。カタール現地観戦コミュニティ主宰(詳細は公式サイトURLで)。

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