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Googleロシア子会社が破産申請、社員の大半出国 「銀行口座差し押さえでオフィス機能しない」

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

米グーグルのロシア子会社がモスクワの裁判所に破産を申請したと、ロイター通信やインタファクス通信などが6月17日に報じた

グーグルは声明で、「当局が銀行口座を差し押さえたことでロシアを拠点とする従業員の雇用と給与支払い、取引先への支払い、金融上の義務履行などが不可能になり、ロシアオフィスが機能しなくなった」と述べた。

ロイターは、米国のテクノロジー大手が銀行口座全体を差し押さえられたと明らかにしたのは初めてだと報じている

従業員の大半、ロシア国外に移住

米ウォール・ストリート・ジャーナルは関係者の話として、グーグルは従業員の大部分をロシアから出国させたと報じている。近い将来、同社はロシアの商業拠点を完全に手放すことになるという。

グーグルのロシア従業員の大半は国を離れてロシア国外で働くことを選択した。多くはグーグルが大規模オフィスを構えるアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに移るという。また一部はロシアに残り、会社を辞める選択をした。近いうちにロシアでグーグルの従業員はいなくなるという。

だが、グーグルは破産申請後も同社サービスがロシア国内で利用できるとしている。グーグルはロシアで検索サービスや動画共有サービス「YouTube(ユーチューブ)」、メールサービス「Gメール」、地図サービス「グーグルマップ」などを提供している。

200億円近い罰金支払い命令

ウクライナ侵攻以降、ロシアと欧米テクノロジー企業との関係はますます悪化しており、今回の破産申請と従業員の撤退はそれを浮き彫りにしていると、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。

2014年、グーグルは、ロシア政府がインターネットの自由に対する取り締まりを強化したため、技術オフィスを閉鎖した経緯がある。だが、それ以降もモスクワのオフィスで広告販売やマーケティングなどの業務を続けてきた。

ウクライナ侵攻後、西側諸国がロシアに制裁を課したが、それに応じる形でグーグルはロシアで検索とYouTubeの広告を停止。モバイルOS「Android」向けのアプリストアでは有料アプリやサブスクリプション(定額課金)の提供をやめた。また、ウクライナ侵攻に関してYouTube上で偽情報を拡散したとし、政府系メディア動画の配信を全世界で停止した。

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、グーグルは22年4月、YouTubeでロシア軍に関する不正確な情報を広めたとして、モスクワの裁判所から1100万ルーブル(約2800万円)の罰金の支払いを命じられた。

ロシアの通信監督庁によると、21年末に同社は、禁止コンテンツの削除を怠ったとして72億2000万ルーブル(約182億円)の罰金が科された。

ロシア当局、国民に人気のYouTube遮断せず

ただ、こうした状況でもロシア政府はYouTubeを締め出さない方針だ。デジタル発展・通信・マスコミ相であるマクスト・シャダエフ氏は先ごろ若者向け教育フォーラムに登壇し、「YouTubeへのアクセス遮断は利用者の不利益になり、そのような措置は避けるべき」と語った。

ロイターによると、YouTubeはロシアで約9000万人の利用者を抱える超人気動画投稿サービス。同国に類似サービスはあるものの、YouTubeに取って代わるような規模には至っていない。ロシアが今もYouTubeへのアクセスを許している背景にはこうした事情もあるようだ。

一方で、ロシアは22年2月24日以降、「ツイッター(Twitter)」へのアクセスを制限したり、米メタの「フェイスブック(Facebook)」と「インスタグラム(Instagram)」を遮断したりするなどしてSNS(交流サイト)の情報統制を強めている。

  • (このコラム記事は「JBpress Digital Innovation Review」2022年5月20日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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