コロナ禍で各国とも急激な増加…一般政府歳出の国際比較をさぐる(2024年時点最新版)
日本は対GDP比において国民負担率が低く、結果として一般政府(中央政府だけでなく地方政府や公的な社会保障基金を合わせた公的機関の総体)の金銭的な規模が小さなものとなっている、いわゆる「小さな政府」との指摘がある。今回は一般政府の支出、つまり歳出側からその実情をOECD(経済協力開発機構)のデータベースOECD.Statの公開値を用いて確認する。
次に示すのはOECD加盟国などにおける一般政府歳出の対GDP比。収録されている実データの年次最新値は2022年なので、2022年分の値を用いる。
OECD平均値は42.7%。つまり平均として国内で新たに生み出された商品やサービスの付加価値の総額の4割強が、国の維持発展のために一般政府から供出されていることになる。
値がもっとも高いのはフランスの58.3%、次いでイタリアの56.1%、フィンランドの53.3%と続く。一般政府歳出の対GDP比が高い国は欧州圏に集中している感はある。他方、アメリカ合衆国やオーストラリアのような非欧州圏では低め。欧州圏では文化的性質の上で「大きな政府」に一般政府の施策のかじ取りが行われやすいのかもしれない。
日本は44.1%でアメリカ合衆国より高く、OECD平均よりも高い。またG7平均(47.7%)よりは低い。日本がG7の中では比較的「小さな政府」であることが確認できる。
G7該当国であるカナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、イギリス、アメリカ合衆国、そして国民負担率の上で租税負担率と社会保障負担率の関係が特異な国としてオーストラリアとデンマーク、さらに日本の近隣国である韓国、OECDの平均値とG7の平均値について、取得可能な値をグラフに描き起こしたのが次の図。
比較できる限りでは日本は昔も今も、G7などの国の中では一般政府歳出の対GDP比は低い、「小さな政府」状態が続いていることが分かる。1970年代と1990年代の2度にわたり大きな上昇があったものの(もっとも1990年代の上昇はその後20年近くの間の下落で帳消しとなり、2010年前後で再び上昇に転じている)水準としては低いまま。
2020年にはどの国も押しなべて、イレギュラーな増加ぶりを示している(韓国ではすでに2019年から増加が生じているが、これは同国の不景気が原因)。これは新型コロナウイルスの流行によって一般政府における歳出の大幅増加を余儀なくされたのに加え、経済が大きく後退してGDPが落ち込んだことによるものに他ならない。直近の2022年はそこからいくぶん持ち直して下落する国が多いが、それでもどの国もまだ高い水準には違いない。日本はフランスやイタリア同様に持ち直し度合いが低めで、結果として2022年の時点では一般政府歳出の対GDP比が高めなものとなってしまっている。
日本の「小さな政府」状態は昨日今日に始まった話ではなく、昔から継続しているまでのお話に違いない。もっともアメリカ合衆国やニュージーランドも似たようなものなので、国の特性によるところが大きいのだろう(カナダは例外で、1990年代に大きく下落するまでは上昇の一途にあり、欧州圏と似たような「大きな政府」状態だったが)。
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